ていおうせっかい

帝王切開

最終更新日:
2025年01月24日
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2025/01/24
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概要

帝王切開は分娩方法の1つで、母親の腹部を切って赤ちゃんを取り出す方法のことです。なんらかの理由により腟を通って生まれてくる経腟分娩(自然分娩)が難しい場合や、妊娠期間中や出産の進行中に母体や赤ちゃんに危険があると判断された場合に行われます。

帝王切開では、麻酔をかけて腹部を縦または横に切開し、赤ちゃんを取り出します。麻酔は下半身だけに効果がある腰椎麻酔(ようついますい)や硬膜外麻酔で行われることが多く、赤ちゃんが取り出される様子を見ることができます。緊急の場合には全身麻酔で眠った状態で行われます。

日本では約20%が帝王切開による出産であるといわれており、その割合は年々増加傾向にあります。母親と赤ちゃんの安全をより重視するようになったこと、合併症妊娠*や高齢妊娠などで帝王切開が適応となる妊婦が増えたことなどから、帝王切開による出産の頻度が増えています。

*合併症妊娠:病気を持ちながら妊娠した場合や妊娠によって病気が引き起こされた場合のこと。

種類

帝王切開には、予定帝王切開と緊急帝王切開の2種類があります。

予定帝王切開

予定帝王切開とは、事前の検査などで経腟分娩に危険が伴うことが分かっている場合に、あらかじめ日時を決めて行うことです。出産予定日から1~2週間前を目安に設定し、陣痛が来る前に行われます。

多くは38週前後で行われますが、39週の方が出生後に赤ちゃんが呼吸障害を起こすリスクが低いことが報告されています。

予定帝王切開が計画される理由の代表的なものとしては、帝王切開や子宮の手術の経験、逆子、多胎妊娠(2人以上を同時に妊娠すること)、前置胎盤(胎盤が子宮の出口をふさいでいること)、母親の合併症などがあります。

緊急帝王切開

緊急帝王切開は、妊娠中や経腟分娩の進行中に母体や赤ちゃんに何らかの問題が起こり、急遽行われる帝王切開のことです。

具体的な場面としては、分娩中に胎児の心拍が低下した場合や、分娩がなかなか進まない場合、母児に危険が迫っていると判断された場合に行われます。また、予定帝王切開を計画していた方で、手術予定日よりも前に陣痛が来た場合も緊急帝王切開を行います。

合併症

帝王切開では合併症が起こることもあります。分娩時の大量出血のほか、主に以下の合併症が挙げられます。

血栓塞栓症

血管内で小さな血の塊(血栓)ができる病気です。血栓がはがれて肺に到達し、肺塞栓症(はいそくせんしょう)と呼ばれる重篤な状態に陥ることがあります。妊娠中は普段よりも血流が滞りやすいことに加え、血を止める働きを持つ血液凝固因子が増加しているため血栓ができやすくなります。また、先天的に血液が固まりやすい特徴がある方は、さらにリスクが高くなります。

血栓塞栓症の治療としては抗凝固薬が使用されます。術後は血栓塞栓症を予防するため、弾性ストッキングや加圧ポンプの使用のほか、理学療法士による介入が行われます。術後はなるべく早くベッドから立ち上がって積極的に動くことを心がけましょう。

術後腹腔内癒着(じゅつごふくくうないゆちゃく)

帝王切開を含め、手術を行った後は組織同士がくっつき、癒着と呼ばれる症状がみられることがあります。癒着がみられた場合、下腹部の痛みや違和感、腸閉塞(ちょうへいそく)不妊症などの症状がみられることがあります。帝王切開後の癒着の場合は、次回の帝王切開時に手術操作が難しくなるリスクもあります。これらを予防するために、術中に癒着防止剤を用いて癒着を起こさないような処置がされます。

帝王切開瘢痕症候群(ていおうせっかいはんこんしょうこうぐん)

帝王切開によって子宮に傷(瘢痕)が残り、過多月経不正性器出血などの症状を引き起こし、不妊症の原因になることもあります。

帝王切開瘢痕症候群の治療としては、子宮鏡や超音波検査、MRIで子宮の状態を確認し、状態に応じて手術を行うほか、ホルモン治療を行うこともあります。

適応

帝王切開が必要になる主なケースには、逆子、多胎妊娠、帝王切開での出産歴、児頭骨盤不均衡*前置胎盤胎児機能不全、遷延分娩、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)妊娠高血圧症候群などがあります。

ただし、帝王切開が必要になるかどうかは実際の妊娠の状態や治療を受ける病院によっても異なります。

*児頭骨盤不均衡:赤ちゃんの頭の大きさと母親の骨盤の大きさとのつりあいが取れず、赤ちゃんの頭が骨盤を通り抜けられないことが予想される状態。

治療の経過

一般的な入院期間

入院期間は手術を受ける医療機関にもよりますが、一般的には7~10日間程度です。術後の経過に問題がある場合は入院期間が延びることもあります。

治療~退院までの流れ

予定帝王切開の場合は、手術の前日に入院して赤ちゃんと母親の健康状態を確認し、手術の説明などを受けます。手術当日は絶飲絶食で、サチュレーションモニター、血圧計、心電図の装着などの準備を行います。

手術は麻酔をかけたうえで行われ、腰椎麻酔や硬膜外麻酔と呼ばれる腹部から下半身にかけて痛みを感じなくする麻酔が用いられることが多く、手術台の上で体を丸めた状態になり、腰に麻酔薬を注射します。麻酔が効いたら、下腹部を横か縦に切開して赤ちゃんと胎盤を取り出します。傷あとが目立ちにくい横切開が行われることが多いですが、前置胎盤などで視野の確保が必要な場合は縦切開が選ばれることがあります。産後は子宮と腹部の傷を縫い合わせて手術終了です。手術開始から終了までは30分から1時間程度です。

帝王切開終了後は数時間程度で麻酔が切れ、傷の痛みと後陣痛と呼ばれる産後に子宮が収縮する痛みが発生します。手術後は血栓塞栓症や腸閉塞、筋力低下を予防するために、経過を観察しながらベッドから立ち上がってなるべく体を動かすようにします。退院までに授乳指導や沐浴指導などを受けながら、退院後の生活の準備を行います。

日常生活での注意点

基本的な出産後の経過は経腟分娩と変わりません。大きくなった子宮が元に戻るため、産後1か月程度は悪露(おろ)と呼ばれる分泌物や後陣痛がみられることがあります。帝王切開の場合は経腟分娩に比べると体の回復に時間がかかる傾向があります。

1か月健診で問題がなければ性生活も再開できることが多いですが、担当医に相談し、次の妊娠を早めに希望される場合には授乳を含めて担当医、助産師と相談することをすすめます。

費用の目安

医療機関や実際の医療内容によって費用は異なります。帝王切開による分娩は異常分娩として扱われ保険適用となり、自己負担限度額を超えた場合は高額療養費制度の対象となります。室料や食事料は自己負担です。

また、帝王切開、経腟分娩、いずれの場合にも出産時に受けられる経済的支援として出産育児一時金があります。健康保険や国民健康保険の加入者に出産費用が支給される制度です。そのほか、出産に伴う一般的な費用は医療費控除(年間を通して医療費が高額になった場合に、所得から控除できる制度)の対象となるため、さまざまな制度を利用して自己負担金を抑えることができます。

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