いじょうぶんべん

異常分娩

最終更新日:
2018年09月25日
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2018/09/25
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概要

異常分娩とは、以下に記す正常分娩には該当しないさまざまな分娩(出産)の総称です。帝王切開による分娩、吸引分娩や鉗子(かんし)分娩などの器械分娩、早産分娩、骨盤位分娩などが異常分娩に含まれます。

正常分娩とは、自然に陣痛が始まり、妊娠満37週以降~満42週未満の正期に、順調に経膣分娩(膣からの分娩)が進行して、正常な回旋(前方後頭位)の頭位で赤ちゃんが生まれてくることを指します。また、正常分娩の定義には、母児ともに障害や合併症などが残らないということも含まれます。

なお、分娩中に通常の範囲内で会陰切開を行ったり、子宮収縮薬(陣痛促進剤)を使用したりした場合でも、その後の経過に異常がみられなければ正常分娩に分類されます。

一方、分娩の経過中に会陰切開術以外の手術的な処置を加える必要があったり、子宮収縮剤の使用後も、分娩が一定の所要時間内に進まなかったりした場合などには、異常分娩と捉えられます。

*分娩にかかる時間は、初産婦で30時間未満、経産婦では15時間未満が正常とされます。

異常分娩の考え方に関する注意

分娩後、母児に何らかの合併症や障害が残った場合は異常分娩と考えます。しかし、順調な経膣分娩には該当しない異常分娩(帝王切開など)の場合に、必ずしも何らかの障害が残るというわけではありません。このように、異常分娩は非常に広い意味や状態を包んだ医学用語として用いられています。

原因

異常分娩の原因は、(1)娩出物(胎児や胎盤)に起こっている問題、(2)娩出力(べんしゅつりょく)の問題、(3)産道の問題の3つに大別できます。娩出物、娩出力、産道の3つの要素がすべて健常で、調和が取れていることが、正常な経腟分娩の進行につながるともいわれています。

娩出物に起こっている問題

胎児が正常な範囲を超えて大きい巨大児である、形態異常がある、低体重である、水頭症や無脳症などの病気がみられるといった場合を指します。

通常、胎児は少しずつ姿勢を変えながら産道を通って出生しますが、上記のような問題がみられる場合には、姿勢をうまく変えることができず、分娩がスムーズに進まないことがあります。これを胎児の回旋異常といいます。

このほか、お腹の中の胎児が骨盤位(逆子)や斜位、横位であるなど、頭位ではない場合も異常分娩に分類されます。頭位ではない場合、予定帝王切開が選択されることも多くなります。

頭位で児頭が娩出された後に肩が恥骨に引っかかる肩甲難産といった状態も異常分娩として分類されます。

また、胎児の娩出後に胎盤が出てこない癒着胎盤も娩出物の問題です。このような胎盤を無理に出そうとすると、子宮が裏返しになる子宮内反という重篤な状態になるので注意が必要といわれています。

娩出力の問題

娩出力とは、分娩時に胎児を押し出そうとする力のことです。娩出力は、陣痛、子宮の収縮、怒責(いきみ、意識的な腹圧)により成り立ちます。

異常分娩の原因となる娩出力の問題としては、子宮の収縮が不十分な微弱陣痛などが挙げられます。

産道の問題

産道とは胎児の通り道のことで、軟産道(子宮頸部や膣など)と骨産道(骨盤など、骨で構成されている部分)により成り立ちます。軟産道が硬く、胎児がスムーズに通過できないほど抵抗力が強い場合や、骨盤が小さく胎児が骨盤内へと進んでいけない場合には、帝王切開が検討されることがあります。

症状

異常分娩では、妊娠37週0日~41週6日に自然に陣痛が始まらない、胎位(胎児の向き)が頭部を下向きにした頭位ではない、陣痛が始まったあと、順調に経膣分娩が進まない、といった症状がみられます。異常分娩の原因ごとに、お母さんや赤ちゃんには次のような症状・影響が生じることがあります。

母体への影響

たとえば、微弱陣痛が原因で分娩が長時間にわたる場合には、母体の全身疲労や子宮筋の疲労が生じることがあります。

また、子宮の収縮が非常に強く起こり、なおかつ産道の抵抗力が強い場合には、母体の痛みや不安などが引き起こされることがあります。

このほか、産道が傷つく産道裂傷や、赤ちゃんの出生後、子宮筋が収縮しないことによる弛緩出血(しかんしゅっけつ)が起こることもあります。

胎児への影響

胎児への影響が大きい例としては、分娩が長引くことで胎児の状態が悪化し、胎児機能不全と呼ばれる危険な状態に陥るケースが挙げられます。胎児機能不全は、お腹の中の赤ちゃんが低酸素状態になることで起こります。異常分娩が胎児機能不全の原因になることもあれば、胎児機能不全が異常分娩の原因になることもあります。

異常分娩では、生まれた後の赤ちゃんに呼吸や循環の障害が生じるケースもあるため、状況に応じて正常経膣分娩を断念し、器械分娩や帝王切開などを選択します。

検査・診断

異常分娩の中には、あらかじめ正常分娩は難しいと予測し、安全なお産に向けて準備を進められるケースも多くあります。たとえば、胎児の体が大きく、母体の骨盤が小さい児頭骨盤不均衡(じとうこつふきんこう)と診断できる場合などが、予測可能な異常分娩に該当します。

異常分娩となる可能性があるかどうかを見極めるための検査には、妊婦さんに対する身体診察やレントゲン検査、超音波検査などがあります。検査では、主に以下の項目を確認します。

  • 妊婦さんの体格や骨盤の大きさ
  • 胎児の大きさ、予想される体重
  • 胎児の向き(胎位)
  • 双子や三つ子などの多胎妊娠ではないか
  • 羊水の量
  • 胎児の健康状態、障害や合併症の有無
  • 胎児心拍数陣痛図による胎児機能不全の有無

以上はあくまで一例であり、実際には妊婦さんや胎児の状態に応じた検査が選択されます。

また、妊娠中の検査では問題がみられない異常分娩も多くあります。このような場合は、分娩の進行や母児の状態に応じて、たとえば緊急帝王切開など、適切な治療・処置への移行を検討します。

治療

帝王切開

妊娠中の検査で安全な分娩が難しいと判断できる場合、予定帝王切開となることがあります。また、経膣分娩がスムーズに進行せず、母体や胎児に影響が及ぶおそれがある場合には、緊急帝王切開に移行することもあります。

器械分娩

胎児が子宮口付近へと降りてきているものの、微弱陣痛などによって分娩が滞っている場合や胎児機能不全に陥った場合に器械分娩が選択されることがあります。器械分娩には、頭部に吸引カップを装着して出産を手助けする吸引分娩と、鉗子と呼ばれる大きなスプーンのような医療器具で両側頬部を把持し児を娩出させる鉗子分娩があります。

吸引分娩を行うときには、母体のお腹(子宮底部)を圧迫する胎児圧出法(たいじあっしゅつほう)をあわせて行うこともあります。

子宮収縮薬の使用

分娩に時間がかかり、疲労によって陣痛が弱くなっている場合などには、子宮収縮薬(陣痛促進剤)を点滴投与して陣痛を強めることがあります。子宮収縮薬を使用するときには、子宮の収縮が強くなりすぎないよう少量の投与から始めます。また、点滴中は胎児が健康な状態を保っているかどうか、陣痛の間隔や強さは順調かどうか、常にモニタリングが行われます。

その他

このほか、異常分娩に伴う激しい痛みや苦痛を軽減するため、硬膜外麻酔や鎮痛薬を点滴投与することもあります。

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