かいせんいじょう

回旋異常

最終更新日:
2024年04月05日
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2024/04/05
更新しました
2017/04/25
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概要

回旋異常(かいせんいじょう)とは、頭位分娩(頭から生まれる分娩のこと)の進行中に胎児が頭部の向きをうまく変えられない状態です。

胎児が通る母体の骨盤の入口部は横に幅広く、出口部は縦に幅広い形状をしています。一方、胎児の頭は縦長(前後に長い)の形状をしており、児頭が母体の狭い骨盤内を通り抜ける際に、骨盤の形状に合わせて回旋しながら下降して産道を通過します。回旋異常があると胎児が産道を通過しづらくなるため、分娩経過に時間がかかったり、分娩進行が止まったりして、帝王切開術が必要となる場合があります。

妊娠期の胎児の向きや姿勢は、“胎位(たいい)”、“胎向(たいこう)”、“胎勢(たいせい)”で表現されます。

胎位とは、生まれてくる際の先頭となる部位で、つまり最初に産道を通る部位を指します。一般的に、分娩前の胎児は頭が先頭になる“頭位”で生まれてきます。一方、おしりから生まれてくることを“骨盤位”(逆子)といいます。

胎向とは、赤ちゃんの背中が母体の左右どちら側にあるかを表し、右側にある場合を第1胎向、左側にある場合を第2胎向といいます。

胎勢は胎児の姿勢を表すものです。胎児は分娩が近づくと顎を引き、もっとも小さな直径で骨盤を通過できる“屈位”となって、後頭部から母体の骨盤に入ります。一方で、顎が上がっている“反屈位”では、額(額位)や顔(顔位)から生まれてくることがあります。このような回旋異常の場合には分娩進行が緩やかになったり、進行が停止したりすることもあります。

種類

回旋異常には、回旋の段階に応じてさまざまな種類があります。

胎勢の異常(前頭位、額位、顔位)

通常の分娩であれば、母体の骨盤入口部には胎児の後頭部が最初に入りますが、胎児が顎を引いていないために前頭部(大泉門)や額などが先に入った状態で分娩が進む場合があります。このような状態を胎勢異常といいます。先進部*が前頭部(大泉門)の場合を前頭位、額の場合を額位、顔の場合を顔位といいます。

*胎児の体の中で最初に産道を通る部分。通常は後頭部が通る。

顔の向きの異常(後方後頭位)

分娩直前の胎児の顔の向き(胎向)が通常と異なり、胎児の顔が母体の腹部側を向くように回旋して下降し、出生することを後方後頭位といいます。娩出時まで後方後頭位である確率は頭位分娩の1%以下で、分娩進行が長引くことが多くあります。産道に対して胎児の頭が相対的に小さい場合に起こりやすいといわれています。

児頭の骨盤への進入の異常

児頭の骨盤への進入の異常として、“高在縦定位(こうざいじゅうていい)”や“低在横定位(ていざいおうていい)”のような異常が発生する場合があります。

高在縦定位

母体の骨盤入口の縦径と、児頭の矢状縫合*の向きが一致した状況で分娩が停止した状態をいいます。

骨盤入口部は横に長く胎児の頭は縦に長いため、胎児はスムーズに骨盤に進入できるよう骨盤入口部の横径と矢状縫合の向きが一致するように横向きになります。しかし、胎児が縦向きに進入すると分娩が停止することがあり、これを高在縦定位といいます。陣痛はきているものの、胎児の頭がうまく骨盤内に入っていかない場合は、高在縦定位が疑われます。

*人の頭蓋骨は複数の骨から構成されているが、胎児や乳幼児はつながっておらず、頭蓋骨の随所に隙間がある。このうち、左右の頭蓋骨が合う頭頂部直線状の隙間を矢状縫合という。

低在横定位

骨盤入口部が横に長いのに対して骨盤出口部は縦に長いため、分娩が進むにつれて通常胎児は回転して頭(矢状縫合)の向きを横から縦に変えます。しかし、児頭が骨盤出口部に達したにもかかわらず、児頭の矢状縫合が横を向いたままだと分娩が進まず停止します。この状態を低在横定位といい、吸引などによる分娩介入を行う必要があります。

原因

回旋異常の原因としては、以下が挙げられます。

胎児の異常

胎勢の異常のほか、巨大児(出生体重が4,000g以上の赤ちゃん)や低出生体重児(出生体重が2,500g未満の赤ちゃん)、水頭症、無脳症などの場合に回旋異常が起こる可能性が高まります。また胎児の頸部(けいぶ)腫瘍(しゅよう)がある場合に回旋異常となることもあります。

母体の異常

低置胎盤前置胎盤のように胎盤の位置に異常がある場合や、骨盤が狭い(狭骨盤)場合などは回旋異常の原因となることがあります。加えて、子宮筋腫や骨盤内の腫瘍などの病気をはじめ、羊水過多症、出産時における直腸・膀胱の充満が原因となることもあります。

症状

回旋異常が生じると分娩経過が長引くことがあります。分娩時間が長引いたり、途中で停止したりすることで、母体の疲労蓄積や胎児が低酸素状態になるなどのリスクが高まります。

検査・診断

回旋異常が疑われる場合は、内診や画像検査を行って胎児の下降度(児頭の先進部の高さ)や児頭の回旋状態を確認します。

内診

内診では、主に児頭がどれくらい下降しているかをはじめ、先進部が後頭部(小泉門)かどうかや、児頭の回旋の状態を確認します。

画像検査

必要に応じて骨盤X線検査を行い、骨盤が狭すぎないかを確認します。また、経会陰超音波検査では、児頭の下降度や児頭の回旋の状況も把握できます。

治療

回旋異常が生じていても、分娩の進行に伴って正常な状態へ戻る場合があります。そのような場合は特別な処置は不要です。しかし、分娩がなかなか進まない場合や母子いずれかのリスクが高まることが予想される場合には、以下のような介入が必要になります。

会陰切開術

胎児の頭が娩出する前に、局所麻酔をしたうえで母体の腟入口から肛門(こうもん)にかけて会陰(えいん)部を切開します。会陰切開術によって児頭の娩出を促し、胎児にかかる負担を軽減できる可能性があるほか、母体の腟壁などが不規則に裂けることを防ぐ効果も期待できます。

帝王切開術

腹部を切開して胎児を取り出す分娩方法です。骨盤位や横位(胎児が横になっている状態)のほか、回旋異常で分娩停止と判断され、児頭が骨盤出口部まで十分に下がっていない場合に帝王切開術が選択されます。

吸引分娩

児頭が骨盤内を十分に通過して骨盤出口部まで下降している場合に選択されます。腟入口から吸引カップを挿入して児頭に装着し、いきみに合わせて優しく吸引カップを牽引(けんいん)することで分娩を促す方法です。

鉗子分娩

児頭が骨盤内を十分に通過して骨盤出口部まで下降している場合に選択されます。腟入口から鉗子(かんし)と呼ばれる器具を挿入して児頭をつかみ、妊婦のいきみに合わせて優しく引っ張り出すようにすることで分娩を促す方法です。

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