概要
巨大児とは、出生時の体重が4,000g以上ある赤ちゃんのことを指します。日本における成熟児の平均体重が3,200~3,300gとされているため、4,000g以上ある赤ちゃんは大きいといえます。
巨大児になる原因には、お母さんが糖尿病にかかっている場合(糖尿病合併妊娠)や、妊娠してから妊娠糖尿病を発症した場合(妊娠糖尿病)、肥満、妊娠中の体重増加、体格の大きさなどが挙げられます。
巨大児を経腟分娩する場合は、難産になりやすく、お母さんや赤ちゃんに合併症が起こるリスクが高くなります。そのため、妊娠中には食生活や血糖値に気をつけるなどの健康管理により巨大児となるリスクを減らすことが大切になります。妊娠中に巨大児が疑われ、リスクが高いと判断された場合は分娩誘発や帝王切開が検討されます。
原因
巨大児になる原因には、糖尿病合併妊娠、妊娠糖尿病、肥満、妊娠中の体重増加、体格の大きさなどが挙げられますが、原因が特定できない場合もあります。
糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病の場合でも、血糖コントロールが適切に行われていれば巨大児になることは少なく、血糖コントロールが不十分な場合に巨大児になりやすくなります。
血糖コントロールが不十分な状態では、胎盤を通って赤ちゃんにたくさんのブドウ糖が移行し、赤ちゃんは常に高血糖にさらされることになります。成人でも甘いお菓子などを過剰に摂取すると体重が増加するのと同様に、赤ちゃんも子宮内で糖を過剰に摂取すると体重が増加し巨大児となります。そして血糖コントロールが不十分であるほど、赤ちゃんの体が大きくなる傾向にあります。
症状
妊娠中は、胎児の推定体重が通常よりも大きいことが超音波検査などで確認されますが、特に自覚症状はありません。しかし、巨大児を経腟分娩する場合、お母さんと赤ちゃんの両方に、さまざまな合併症が生じるリスクが高くなることが知られています。
お母さんの場合、分娩時に頸管(子宮の出口)や会陰の裂傷(大きく裂けること)が生じやすくなります。これに伴って分娩時の出血量が増加したり、分娩後に子宮収縮が不良となって弛緩出血を起こしたりすることがあります。また正常体重の新生児と比較して、緊急帝王切開となる可能性も高くなります。
赤ちゃんについては、肩甲難産などの合併症が起こる可能性があります。通常の分娩では、児の頭が娩出された後は軽い牽引(引っぱること)のみで赤ちゃんの肩や体幹もスムーズに娩出されます。しかし、赤ちゃんが大きい場合は肩甲難産を生じ、赤ちゃんの肩がお母さんの恥骨に引っかかり娩出が困難となることがあります。肩甲難産では、赤ちゃんの頭の無理な牽引により赤ちゃんに麻痺や骨折が生じる可能性があります。また、分娩にかかる時間が長くなる傾向があり(遷延分娩)、胎児機能不全や新生児仮死、脳性麻痺につながる場合もあります。
糖尿病や妊娠糖尿病のお母さんから生まれた巨大児の場合、出生後に新生児低血糖となる危険性があります。新生児低血糖は、胎児期に高血糖状態が続き、出生時に胎盤からのブドウ糖の供給が突然止まることで血糖値が急激に低下することにより起こります。新生児低血糖は、治療が遅れると赤ちゃんに中枢神経障害を引き起こす可能性があるため、迅速な診断と治療が必要です。
検査・診断
巨大児の診断は、主に妊娠中の定期健診と出生後の評価によって行われます。妊娠中は、子宮底長の測定や超音波検査によって胎児の発育状態を定期的に確認します。超音波検査では、胎児の頭囲、腹囲、大腿骨長などの計測を行い、胎児の体重を推定します。妊娠後期には、胎児が標準的な成長曲線から外れて大きくなっていないかを確認します。なお、検査では±10%の誤差が生じるため、実際の体重とは異なることがあります。
お母さんの糖尿病や妊娠糖尿病の有無を調べるため、妊娠中期には75g経口糖負荷試験(OGTT)と呼ばれる検査を実施することがあります。
出生後は、赤ちゃんの体重測定を行います。日本では出生体重が4,000g以上の場合を巨大児と診断します。特に糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病の場合は、赤ちゃんの血糖値を定期的に測定し、新生児低血糖の有無を確認します。
治療
巨大児の場合、出産時の合併症リスクを考慮し、慎重な管理が必要です。特に糖尿病合併妊娠や妊娠中に妊娠糖尿病を発症した場合は、妊娠期間中の食事療法や定期的な血糖値の自己測定により、適切な血糖コントロールを行います。
また、超音波検査を定期的に実施して赤ちゃんの成長を確認し、その結果に基づいて最適な出産方法を検討します。巨大児が疑われる場合、分娩が遅れるとお母さんや赤ちゃんへのリスクが高まるため、状況に応じて分娩誘発や帝王切開を選択することがあります。
分娩時に肩甲難産が発生した場合は、お母さんの体勢を変更したり、恥骨の上を適切に圧迫したりすることで、赤ちゃんの娩出をサポートします。
分娩後の管理も重要です。赤ちゃんに低血糖がみられた場合は、ブドウ糖を含む点滴治療を行います。
予防
巨大児の予防で重要なのは、妊娠中の適切な血糖値管理と体重管理です。お母さんは定期的な健診を受けながら、医師や助産師の指導の下で適切な健康管理を行うことが大切です。血糖値の管理では、医師の指示に従って食事療法を実施し、定期的な自己血糖測定を行います。食事は急激な血糖値の上昇を避けるため、バランスのよい食事を心がけ、甘い菓子類や糖質の過剰摂取を控えめにすることが推奨されます。
体重管理については、妊娠前のBMIに応じた適切な体重増加を目指します。過度な体重増加は巨大児のリスクを高めるため、栄養バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが重要です。
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