きょだいじ

巨大児

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概要

巨大児とは、奇形などの肉眼的な異常がなく出生体重が4,000g以上の赤ちゃんのことをいい、生まれたときの週数は問わないとされています。日本での巨大児の頻度は、1970年代に8%に達したこともありましたが、近年の出生時体重の低下に伴い、2000年代に入ってからは1%と減少傾向にあります。

原因

巨大児となる危険因子は以下のようなものがあります。

(1) 耐糖能異常合併妊娠(妊娠糖尿病など)

日本では糖代謝異常合併妊娠の方が巨大児を出産する頻度は約7.1%であり、これは糖代謝異常のない妊婦さんの約8倍です。

(2) 過期妊娠

(3) 肥満、巨大児の分娩既往がある妊婦、片親または両親の体格が大きい、頻産婦など

症状

巨大児を経腟分娩した場合、お母さんにも赤ちゃん自身にもさまざまな合併症の生じるリスクを高めることが知られています。

まずお母さんには、分娩時の頸管裂傷(子宮の出口が大きく裂けてしまう)や会陰裂傷(会陰部が大きく裂けてしまう)がより高頻度に生じます。それにともなって分娩時の出血量が多くなったり、分娩後に子宮収縮が不良となり弛緩出血を起こすリスクも高くなるといわれています。

また緊急帝王切開となる頻度は、正常体重新生児に比べて約1.9倍と高くなります。 赤ちゃんには「肩甲難産」という合併症が起こりやすくなります。通常の分娩では、児頭が娩出された後は軽い牽引のみで赤ちゃんの肩や体幹もすんなり娩出されます。

しかし赤ちゃんが大きいと、赤ちゃんの肩がお母さんの恥骨結合に引っかかり娩出が困難となる場合があり、これが肩甲難産です。肩甲難産では、児頭の無理な牽引により赤ちゃんに腕神経叢麻痺(Erb麻痺)が生じたり上腕・鎖骨骨折のリスクが高まります。

腕神経叢損傷のほとんどは後遺症なく回復しますが、出生時体重4,500g以上の場合には後遺症の残る頻度が高くなります。 また、分娩にかかる時間が長くなる傾向があり(遷延分娩)、これにともなって胎児機能不全や新生児仮死、脳性麻痺の頻度も上昇します。

基礎疾患として妊娠糖尿病などの耐糖能異常のあるお母さんから生まれた巨大児の場合には、出生後に新生児低血糖となる危険性が高まります。血糖値の高いお母さんのお腹にいる赤ちゃんは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が亢進した状態にあります。

従って、出生後お母さんからの糖供給が止まってもインスリン分泌亢進は継続するため、赤ちゃんが低血糖になりやすいのです。新生児低血糖は、治療が遅れると赤ちゃんに不可逆的な中枢神経障害を起こすこともあるため、迅速な診断と治療が必要です。

検査・診断

検査は超音波胎児計測で行います。しかし、分娩前に巨大児かどうかの診断をすることは極めて難しいとされています。赤ちゃんの正産期は妊娠37週0日~41週6日であり約5週間の幅があります。この間、いつ分娩となるかはわかりません。妊婦健診で大きめと予想されていても、早い週数で分娩となれば4,000gを超えない場合もあるからです。

治療

まずは予防、巨大児とならないように妊娠中気を付けることが最も大切です。妊娠中に耐糖能異常と診断された妊婦さんは、巨大児となる頻度が高いため、できる限り高血糖が継続しないよう食事療法や自己血糖測定で血糖値をきちんと管理します。また、耐糖能異常はなくても、妊娠中に体重が増えすぎないよう健康的な食生活を心がけることが重要です。

検査の項目でも述べたように、巨大児の正確な診断はとても難しいものであり、肩甲難産などの異常分娩を予測することはさらに難しく、分娩方針については一定の決まりはありません。妊娠中に巨大児が疑われた場合は、妊婦さんご本人・ご家族と医師が十分に話し合い、自然に陣痛が来るのを待つのか、分娩誘発をするのか、予定帝王切開とするのか、それぞれの方針のメリットとデメリットをよく御理解いただいた上で決定していくことになります。

巨大児が疑われている妊婦さんが分娩遷延、分娩停止となったときは、肩甲難産を想定して帝王切開術を考慮するとされています。しかし帝王切開の方が明らかに有益であるとの報告はまだないのが現状です。

肩甲難産が発生した場合は、まずは「1. 会陰切開」を行い、妊婦さんに「2. McRoberts(マックロバーツ)体位」という体位をとってもらいます。これは、助手2人が妊婦さんの両脚を持って膝を腹部に近づけるように太腿を強く曲げる体位です。助手がいなければ妊婦さん自身にこの体位をとってもらうこともあります。この体位をとると骨盤の傾斜角が小さくなるため、赤ちゃんの肩が外れて娩出しやすくなるのです。

さらに、「3. 恥骨結合上縁部圧迫法」を行います。これは、恥骨結合上縁に触れる赤ちゃんの肩を斜め45度下方かつ胸部に向けて押し上げる処置です。これらの3つの基本手技により、肩甲難産の50%以上が娩出可能であるとの報告もあります。

ただし、これらの手技を行っても、腕神経叢損傷の頻度は減らないというデータもあります。なお過度の児頭の牽引はしないようにし、子宮底圧迫法は肩甲難産を悪化させる可能性があるので、肩甲難産時には行わないことが重要です。

以上の基本手技でも娩出できない場合は、いきむのをやめて赤ちゃんの下側の上肢から娩出させる方法や、四つん這いになって娩出させる方法、赤ちゃんを回転させる方法、子宮を薬剤で弛緩させた上で赤ちゃんの頭を腟内に押し上げ緊急帝王切開を行う方法などがあります。しかしいずれも新生児骨折などの頻度が高いことが知られています。

最後に、妊娠中の血糖検査が正常あるいは行われていなかった妊婦さんが、今回巨大児を出産したり肩甲難産となったりした場合は、再発予防の意味も含めて、分娩の6~12週後に血糖負荷検査を受けることが推奨されています。

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