インタビュー

胎児超音波検査で何がわかる? 検査の基礎知識

胎児超音波検査で何がわかる? 検査の基礎知識
深田 幸仁 先生

山王バースセンター 産婦人科 部長

深田 幸仁 先生

この記事の最終更新は2015年08月20日です。

おなかの中で元気に動く赤ちゃんを見る瞬間は、お母さんにとってはとても幸せな瞬間だと思います。あくびをしているところが見られたり、性別がわかったりと胎児超音波検査は数少ない「見ていて幸せになれる医療検査」ともいえるでしょう。その一方で、超音波検査を行っている時間の大半は「なにを見ているかわからない」ところを見ているのも事実です。

そこでこの記事では、一般の方にも知っていただきたい胎児超音波検査の基礎知識について、山王バースセンター産婦人科部長の深田幸仁先生にうかがいました。近年は妊娠検査薬のガイドラインの変更により、妊娠の診断には必ず超音波診断が必要になりました。ぜひ正しい知識を身につけてください。

医療者(医師、助産師、超音波検査技師)は胎児超音波で、以下の項目を必要に応じて評価しています。

  1. 胎児の数
  2. 胎児の向き
  3. 胎児の大きさ(体重)と羊水量
  4. 胎児の元気さ(胎盤機能)
  5. 胎児の形態異常の評価(顔、性別や体の中に異常がないか、など)

それぞれの項目を評価して今後の方針を決めるわけです。
各項目でどんなことを見ているかは、妊娠時期によってことなります。

赤ちゃんがひとり(単胎)か、ふたご(双胎)かを判定します。まれにみつご(品胎)以上の多胎妊娠もあります。ふたごやみつごの場合は、胎盤の様子や赤ちゃん同士を隔てる膜の様子などを観察します。

逆子(骨盤位)だと性別がわからなくてがっかりするご両親もいるかもしれません。ただ、単胎の場合、胎児の向きは30週を過ぎるころまではあまり重要ではありません。施設にもよりますが、32から36週頃に逆子であると、分娩方針についての説明を受けることになります。現在では逆子は帝王切開による分娩が一般的で、自然分娩は多くありません。

胎児の大きさを測定して、なにを考えるかは妊娠時期によって違います。
妊娠10週未満の初期の段階では、胎児の大きさは予定日を決めるために使います。通常分娩予定日は最終月経日で決定しますが、月経が不規則な方や忘れてしまった方などもいるため、胎児の大きさを測定してから最終的に予定日を確定します。

妊娠10週以降は、胎児の大きさが週数基準に入っているかを考えます。赤ちゃんの大きさは「ちょうどよい範囲に入っている」ことが大切で、大きすぎても小さすぎても問題がある可能性があります。

・赤ちゃんが週数基準より小さいとき(子宮内胎児発育不全)に考えなければならないこと
胎盤機能が低下している
赤ちゃんに病気があるため、大きくなることができない
・赤ちゃんが週数基準より大きいときに考えなければならないこと
妊娠糖尿病により、赤ちゃんが大きくなってしまっている
赤ちゃんが大きくなってしまう病気(稀です)

羊水量も同じで、基準内にあることがとても大切です。多すぎても少なすぎても問題がある可能性があります。

・羊水量が少ないとき(羊水過少)に考えなければならないこと
胎盤機能が低下している
破水している
羊水量が少なくなってしまう胎児疾患がある
・羊水量が多いとき(羊水過多)に考えなければならないこと
妊娠糖尿病
羊水量が多くなってしまう胎児疾患がある

※羊水量が多い場合は病的意義がないこともあります。ただ、その場合も常に上記の可能性を考える必要はあります。

お母さんが胎動をよく感じているときは、赤ちゃんはまず元気であると考えて問題ありません。その一方で「胎動が少ない」と感じるときや週数平均よりも小さな赤ちゃんに対しては超音波を使って、赤ちゃんの元気さを評価する必要があります。
赤ちゃんの元気さは次の項目に胎児心拍モニター検査などを加えて総合的に判断します。

  • 超音波で見て胎動があるか
  • 胎児の脳への血流や臍帯(へその緒)の血流は問題ないか
  • 羊水量は正常か

 ※胎児の状況によってはより詳細な測定項目が追加されることもあります。

赤ちゃんの体や臓器の形を見ることで、病気がないかの診断をします。病気があると診断された場合には妊娠中にどのように管理していくか、生まれた後に治療が必要かどうかの検討を行います。
この「形態異常」は、誤解を生みやすい表現です。一般的にあまり知られていませんが、超音波検査を理解していただくうえで大切なことを3つ挙げます。

  1. 形態異常があるから必ず病気とは限りません。
  2. 形態異常がないからといって必ず病気がないとも限りません。
  3. すべての形態異常を超音波で見つけられるわけではありません。

それぞれについて、以下に例を挙げます。

  1. 形態異常はあるが、病気とはいえない例
  • 脳室の軽度拡大:ほとんどが問題ありません。
  • 耳介の形成異常(耳のかたちの異常)や鼻骨欠損(鼻が低い):美容的な問題はあるかもしれませんが、少なくとも生活するにあたっては影響はありません。
  • 大きな血管の走行異常(左上大静脈遺残、右側大動脈弓など):生活には影響しません。
  • 腎臓の形態異常(軽度の水腎症、馬蹄腎など):実生活で影響することはあまりなく、症状が出てからはじめて気づかれる方もいます。

 

  1. 形態異常を伴わない病気の例

ダウン症候群やターナー女性で形態異常がない赤ちゃんは、超音波だけで生まれる前に診断することは難しいです。

  1. すべての形態異常を超音波で見つけられるわけではありません。

 超音波はその特性上、見えやすいところと見えにくいところができてしまいます。
 

  • 超音波では「色」はまったくわからない

色については全くわからないため、母斑症(あざ)など皮膚の病気は生まれる前にはわかりません。

  • 構造異常があっても診断できないものがある

よく知られている例としては鎖肛(肛門の穴が開いていない)が挙げられます。出生直後に手術が必要な病気ですが、超音波では見えない部分であり胎児超音波では診断できません。

  • 見つけにくい構造異常がある

超音波はその性質上「体の中は見えやすい一方で、外側は見にくい」検査です。そのため、見つけにくい構造異常があります。具体亭には、手指の構造異常:指がくっついている(合指)、指が多い(多指)などです。耳や鼻の細かい形の評価も難しいといえます。

以上を言い換えると、「生まれてすぐにご両親の目に止まるところ」は超音波では見にくいことが多いといえます。

一般的に、胎児超音波を細かく見る時期は出産予定日を決めた後に3回あります。

1回目:初期超音波検査(11~13週くらい)
2回目:中期超音波検査(18~20週くらい)
3回目:後期超音波検査(27~29週くらい)
※週数はあくまでも目安で、施設によって若干のばらつきがあります。

上記の細かい検査に加えて適宜赤ちゃんの成長を見るための超音波検査が追加されます。10か月に入るころに成長チェックをすることが多いので、最低でも4回程度は見ているところが多いかと思われます。もちろん、施設によってはより超音波の頻度が高いところもあります。

超音波検査は一般に自費診療になり、回数や費用はそれぞれの病院によって異なります。また、経腟超音波検査(プローブを腟内に挿入する方法)と経腹超音波検査(プローブをおなかの表面に当てる方法)があり、前者は妊娠初期段階の赤ちゃんが小さい時期に、後者はある程度赤ちゃんが大きくなってから行います。

出生前診断はあくまでもご本人の意向により行いますが、以下のような方は出生前診断という選択肢が医師から提示されることが多いでしょう。

  • 35歳以上の方
  • 流産歴がある方(一般的に3回以上が目安)
  • ダウン症など、染色体異常疾患の家族歴がある方
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