概要
多趾症とは、趾(あしゆび)が通常の本数より多くなる先天奇形です。多趾症にはさまざまなタイプがあり、過剰に形成された趾が完全な形状をしている場合もあれば、過剰な趾が小さくグラグラと不安定で痕跡のような形態をしている場合もあります。
これらの奇形は、胎児期に趾が分離形成される段階で、通常1本に分かれるところが2本以上に分かれてしまうことで生じます。第5趾(小指)が一本多いものが最多であり、多趾症全体の9割以上を占めます。多趾症は男児にやや多く、2,000人に1~2人の発症率です。また、多趾症は多指と呼称される場合もあります。
原因
多趾症は胎生期の分化異常が原因となって生じます。足は妊娠のごく初期に原型が形成され、指となる部分に徐々に細胞が集まって太く長くなり、趾と趾の間に水かきとなる裂け目が入って足の形が作られていきます。
この分化の段階で、裂け目が多くなって通常よりも指の本数が多くなったり、裂け目が正常でもそこから伸びる趾が2本以上できてしまったりすると多趾症となります。
このような分化の異常がなぜ引き起こされるのかは明確には解明されていませんが、家族性に発生することがあるとの報告もあり、遺伝的な要因が関与している可能性も考えられています。
症状
日本では、多趾症の多くは1歳前後に手術が行われ、正常な趾の形態に整えられます。このため、多趾症でもっとも問題となる症状は「見た目」です。趾が多くてもそこに付着する筋肉や腱の数は変わらないため、手術ではこれらをうまく再建することになりますが、成長とともに爪や趾が変形して歩行障害や痛みなどを引き起こすことも多々あります。
検査・診断
多趾症は外見から診断されます。しかし、手術を行う際には、余剰な趾が出ている位置や、筋肉や神経、血管などの走行を評価するために、レントゲン検査やCT検査、MRI検査といった画像検査が行われます。
また、術後も成長期を過ぎる頃までは経過観察が必要であり、年に一度はレントゲン検査を受け、骨の変形がないかを確認します。
治療
余剰な趾を手術によって切除します。多趾症の場合は人目に付きづらく、運動機能上もさほど大きなはたらきのない足の第5趾(小指)が多いため、手術の難易度は手の指の手術よりも低いとされています。
しかし、余剰な指を取り除いただけでは趾の運動機能が低下することが考えられるため、趾の運動を司る神経や筋肉の再建が行われます。成長期には残った趾の湾曲や爪の変形が生じることがあり、これらの変形を改善するために追加で手術を行うこともあります。
初回の手術時期は歩行が開始される前の1歳前後が一般的です。筋肉や神経、血管などの細かい再建が必要となるため、ある程度成長を待ってから手術が行われます。しかし、余剰な指が痕跡的な突起物のみである場合には、これらの再建は必要ないため、早めに手術が行われる場合もあります。
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