インタビュー

前置胎盤と診断された時ー安静な過ごし方とは?

前置胎盤と診断された時ー安静な過ごし方とは?
種元 智洋 先生

央優会レディースクリニック 院長

種元 智洋 先生

この記事の最終更新は2015年11月21日です。

予防法も治療法も存在しない前置胎盤。前置胎盤と診断された場合は、出血を防ぐために、できるだけ安静に過ごすことが大切です。では、ここで言う安静とは一体どの程度のものを指すのでしょうか。仕事や家事は積極的に行っても良いのか、また、してはいけないことはあるのか、央優会レディースクリニックの院長、種元智洋先生に質問させていただきました。

前置胎盤の診断を受けた場合や疑いがあると言われた時は、過度な運動や性交渉は避け、出血やおなかの張り、痛みに十分な注意を払う必要があります。たとえば、マタニティスイミングやマタニティヨガなどは控えた方が良いでしょう。この理由は、運動により子宮が収縮することが、出血の引き金になり得るからです。

とはいえ、「過度な運動」がどのような運動を指し示すのかを自己判断するのは難しいものです。マタニティヨガを「適度な運動」の範疇であると思われる方もいらっしゃいます。ですから、前置胎盤と診断された場合は、どのような運動でも主治医と相談した方が良いでしょう。ウォーキングも主治医と相談してください。これらは「絶対にしてはいけないのか?」というと、そこまで強く制限はできませんが、やはりおすすめできるものではありません。

旅行についても、週数が浅い方で行きたいという方には、無理をしないよう伝えたうえで、自己責任で行っていただいています。中には出先で早産になってしまう方もいますが、ほとんどの方は問題なく過ごされています。ただし、前置胎盤の場合は大出血を伴う早産になってしまうので、やはり積極的におすすめはできません。

仕事に関しては、その人の業務内容や妊娠週数に応じて、無理をせず、また、あまり怯えすぎずに考えるのが良いでしょう。妊娠20週前後であれば出血はほとんどしませんし、デスクワークなどであまり体を使わないようであれば、それなりに続けられるのではないかと思います。体を酷使することは避ける必要がありますが、多くの方が日常生活を最低限「普通に」暮らしていらっしゃいます。

ただし、前置胎盤の場合は急な出血や入院の可能性があるので、周りの方にあらかじめ事情を伝えておく必要は出てきます。また、入院した場合は長くなる可能性もあるので、そのことも合わせて周知してください。たとえば、妊娠28週で出血し、そのままお産まで入院となる方もいらっしゃいます。

自宅安静の必要性や程度は一人ひとり異なるため、一概には言えません。

前置胎盤とは少し離れて、「切迫早産の可能性があり、お腹が張っているので自宅で安静にしましょう」と指示をする場合についてお話ししたいと思います。このようなとき、お子さんがいる方もいれば、自営業で働く必要があるという方もいますので、私たちは基本的には皆さんにお任せとしています。それぞれのご事情があるので、「これはだめ、あれもだめ」とは言えません。旦那さんや、ご実家のご家族などに理解してもらい、家事などもお願いできるならば任せるのが望ましいとは思いますが、そこは皆さまそれぞれの家庭事情があります。ですから、私は「できるだけ横になれるよう努力してください」という伝え方をしています。また、安静にも段階があり、最低限の日常生活を送りながら横になれるよう心掛けてもらう場合も、寝たきりに近い状態を目指す場合もあります。

ただ、前置胎盤の場合は上記した切迫早産のケースとは異なり、出血したらその時点で必ず入院し、医師の管理下のもとでの絶対安静となります。ですから、自宅で安静にするようにと指示された時点では、入院するほどの絶対安静を要求されているわけではありません。「自宅安静=予防的な安静」と捉えていただいて良いでしょう。

妊娠20週台の場合の入院期間は、状況に応じて様々に変わります。短期で帰る方もいれば、先に述べたように、28週で出血してそのままお産まで入院される方もいます。

30週を超えて出血した場合は、ご本人も不安でしょうし、多くの場合お産まで入院となります。お子さんがいるので自宅に帰らねばならないなどの事情があれば、また変わってきますが、一度大出血を起こすと再度出血する可能性は上昇しますので、これらも考慮して決めていきます。

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  • 央優会レディースクリニック 院長

    日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医日本周産期・新生児医学会 指導医日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医日本超音波医学会 超音波専門医日本臨床細胞学会 細胞診専門医

    種元 智洋 先生

    東京慈恵会医科大学を卒業後、町田市立病院、国立成育研究医療センター 周産期診療部産科医員、東京慈恵会医科大学附属病院 総合母子健康医療センターの産科病棟医長を経て、現在は央優会レディースクリニック 院長および千葉大学大学院医学研究院総合医科学講座 特任准教授を務めている。出生前の超音波診断などを専門とする周産期医療のエキスパートであり、正常分娩から合併症妊娠まで、日々あらゆる症例に対応している。

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