たたいにんしん

多胎妊娠

最終更新日:
2024年11月25日
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2024/11/25
更新しました
2017/04/25
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概要

多胎妊娠とは、一度に2人以上の赤ちゃんを妊娠することです。いわゆる“双子(双胎)”“三つ子(三胎)”などのことを指します。一度に1人の赤ちゃんを妊娠することは “単胎妊娠”と呼ばれます。

2004年の日本の統計によれば、双子(双胎妊娠)は80~90組に1組、三つ子(三胎妊娠)は3,000組に1組の割合でみられます。多胎妊娠は排卵誘発薬の使用や体外受精などの生殖医療の進歩に伴って増加する傾向にありましたが、現在は排卵方法の工夫や体外受精での移植胚数の制限によって減少傾向にあります。ここでは、特に頻度の高い双子を中心に解説をします。

種類

双子といっても、その成り立ちや子宮内での様子によっていくつかのタイプに分けられます。

卵性の違い

双子には2つの受精卵がそれぞれ胎児へと変化していく“二卵性双胎”と、1つの受精卵が何らかの理由で2つに分かれてそれぞれ胎児になっていく“一卵性双胎”が存在します。

膜性の違い

双子には卵性のほかに、膜性という分類があります。母体の中の赤ちゃんは卵膜に包まれており、子宮に付いた胎盤と臍帯(さいたい)(へその緒)で母体とつながっています。卵膜は羊膜、絨毛膜(じゅうもうまく)、脱落膜の3枚からなり、羊膜、絨毛膜は赤ちゃんに由来する膜です。双子の赤ちゃんの場合に、それぞれの赤ちゃんを卵膜のどの成分が覆っているかによって膜性が決定します。

双胎妊娠の膜性は二絨毛膜二羊膜双胎、一絨毛膜二羊膜、一絨毛膜一羊膜に分類されます。もともとの受精卵が1つの一卵性双胎の場合、その受精卵が2つに分かれる時期によって膜性が変わってきます。分かれる時期が早ければ二絨毛膜二羊膜双胎になることがあり、遅い場合には一絨毛膜一羊膜双胎になることがあります。実際、一卵性双胎の場合は一絨毛膜二羊膜双胎になるケースが多くみられます。二卵性双胎のほとんどは二絨毛膜二羊膜双胎になります。

このような膜性の違いは妊娠初期の超音波検査で診断されます。膜性の違いによって妊娠中に起こりやすい合併症の発症頻度が異なることが知られており、双胎妊娠においては膜性診断を確実に受けておくことが重要です。

二絨毛膜二羊膜

二卵性双胎と同様、2人の胎児が別の胎盤を持っており、異なった羊膜に包まれている状態です。一卵性双胎の約25%を占めるといわれています。

一絨毛膜二羊膜

2人の胎児が1つの胎盤を共有していますが、異なった羊膜に包まれています。一卵性双胎の約75%を占めるといわれています。

一絨毛膜一羊膜

2人の胎児が同じ胎盤、同じ羊膜を共有している状態をいいます。まれな事例で、一卵性双胎の約1%といわれています。

原因

多胎妊娠が生じる原因としては、不妊治療による排卵誘発薬の使用や体外受精などの影響、遺伝的要因が関与すると考えられています。

症状

多胎妊娠では、単胎妊娠と比較してつわりが強く現れやすいほか、子宮が大きくなっていく速度が早いことなど、さまざまな症状が現れやすい傾向があります。また、骨盤に負担がかかるために腰が痛くなったり、血流の悪化によるこむら返りや足に静脈瘤(じょうみゃくりゅう)が発生したりすることもあります。そのほかにも便秘や頻尿、出産後の妊娠線に悩まされる方も多くみられます。

注意すべき合併症

単胎妊娠と比較して、合併症が起こりやすいことにも注意が必要です。もっとも頻度の高い合併症として早産が挙げられます。多胎妊娠では単胎妊娠のおよそ9倍早産が起こりやすいといわれています。早産は母体だけでなく胎児の予後にも大きく影響するため、出産前からしっかりと管理する必要があります。

そのほか、妊娠糖尿病妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、胎児発育不全、胎児形態異常、子宮内胎児死亡、血栓症などのリスクも高くなります。

一絨毛膜一羊膜双胎は特に注意

2人の胎児が1つの胎盤と羊膜を共有している一絨毛膜一羊膜双胎では、胎児への栄養供給バランスが乱れてしまうことにより、胎児の予後に大きな影響が生じる恐れがあります。胎児一人ひとりが羊膜に包まれていないため、互いのへその緒が巻きつきやすく(臍帯相互巻絡(さいたいそうごかんらく))、胎児の命に関わるリスクとなり得ます。

これらの観点から、一絨毛膜一羊膜双胎の場合にはより慎重な管理や治療、計画的な帝王切開での出産などが検討されることが一般的です。

検査・診断

多胎妊娠は、妊娠判明後すぐに超音波検査を行えば早期に検知することができます。しかし、妊娠14週以降に初めて医療機関を受診した場合などには、超音波検査での膜性診断は難しくなるため、できるだけ早い段階で医療機関を受診しましょう。

治療

多胎妊娠が分かった場合は、早産妊娠高血圧症候群などの合併症の頻度が高いため、高次医療機関と連携した母体の管理が重要となります。特に切迫早産での入院が必要になることはそれなりの頻度で発生します。また、早い段階から子宮頸管(しきゅうけいかん)が短縮する場合には子宮頸部を縫い縮める“頸管縫縮術(けいかんほうしゅくじゅつ)”の手術などが検討されることもあります。さらに、一絨毛膜双胎の場合は、両児間の体重差や羊水量の差の拡大を起こすこともあり、その兆候がみられる場合には厳重な管理が必要になります。

出産の際は、新生児集中治療室(NICU)や母体胎児集中治療室(M-FICU)のある医療機関や、小児科と産婦人科が両方ある医療機関で出産することが望ましいといわれています。胎児の位置や大きさ、母体の状態によっては経腟分娩が可能な場合もありますが、帝王切開が検討されることも少なくありません。特に三つ子以上の多胎妊娠の場合には帝王切開となることが一般的です。

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