たいがいじゅせい

体外受精

最終更新日:
2025年01月24日
Icon close
2025/01/24
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

体外受精とは、体外へ取り出した卵子と精子を受精させ、良好に発育した胚(受精卵)を子宮に戻す(胚移植)治療のことです。体外受精は不妊治療の1つであり、2022年時点において日本では1年間に約77,000人の新生児が体外受精によって誕生しています。体外受精は卵管の閉塞(へいそく)、精子数の減少や運動率低下などによって自然な妊娠が難しい場合に行われます。また、排卵日に合わせて性交渉を行うタイミング法や、精子を直接子宮に注入する人工授精などを行っても妊娠に至らない場合に、次のステップとして体外受精を検討します。

効果

体外受精は自然な妊娠が難しい場合に行われる不妊治療の一種です。体外受精の効果は年齢などの条件によって異なりますが、一般的には一度の胚移植で妊娠できる確率は30歳代前半までで40~50%程度、30歳代後半で30~40%程度、40~42歳で20~30%程度、43歳以上になると、数%~10%程度となります。妊娠あたりの流産率は、30歳代前半までで10~20%前後、30歳代後半で25~30%前後、40~42歳で30~40%程度、43歳以上になると50%前後~60%以上となります。結果的に、1回の胚移植で出産できる確率は、年齢の上昇に伴い大きく低下していくことになります。

適応

体外受精を行う以外に妊娠できる可能性が低いと考えられるケースで適応となるのが一般的です。

体外受精は、卵管が閉塞して卵子と精子が出会うことができない場合、精子の数が少なく運動率が低下して正常な受精が難しい場合、子宮内膜症で妊娠が難しい場合、高年齢などで卵巣機能が著しく低下している場合、女性が精子に対する抗体を持つ場合などに適応されます。

一方で、これらの原因が明らかでなくても、タイミング法や人工授精などの不妊治療を行っても妊娠しない場合に体外受精が選択される場合があります。

治療の流れ

体外受精の具体的な治療の流れは、以下のとおりです。

卵巣刺激

卵胞を多数発育させるために排卵誘発薬を使用し卵巣を刺激します。具体的には、通常月経開始3日目あたりから、排卵誘発薬の内服や注射によって卵巣を刺激し、卵胞*の成長を促します。

*卵胞:卵巣の中にある卵子が入っている袋のこと。通常、発育した卵胞から卵子が1個排卵される。

採卵

卵胞が十分に成長したら、経腟超音波で卵胞を観察しながら細い針を刺して卵子を採取します。この際、局所麻酔や静脈麻酔を使用するのが一般的です。

精子の採取(採精)

精子の採取は、病院の採精室または自宅で行うことができます。

体外受精

卵子の入っているディッシュ(培養皿)に精子を振りかけて受精させます。

卵子の培養と胚(受精卵)の移植

受精の確認後、受精卵を専用の培養液で培養します。培養が完了したら、妊娠に適した受精卵を選び子宮に移植(胚移植)します。また、受精卵の着床を促進するため、胚移植前から黄体ホルモンを投与します胚移植後約10日間前後で妊娠が成立しているか検査します。

1回の体外受精で多数の受精卵が得られた場合には、余剰胚を凍結して、妊娠しなかった場合や次の児を希望する場合に胚移植する方法(凍結胚移植)があります。

リスク

体外受精には次のようなリスクがあることが分かっています。

体外受精では、卵巣に針を刺して排卵直前の卵子を採取します。卵子の採取は超音波を使用して慎重に行われますが、卵巣からの出血や骨盤内の感染症が生じる可能性があります。また、まれに針を刺す際に周囲の腸や膀胱を損傷してしまう場合があります。

加えて、体外受精では一般的には排卵誘発薬を使用して多くの卵胞を成熟させた状態で卵子の採取を行います。そのため、まれに卵巣過剰刺激症候群という副作用を引き起こすことが知られています。卵巣過剰刺激症候群とは、排卵誘発薬により過度に刺激されたことで卵巣が大きく腫れ、お腹に水がたまって痛みが生じたり、重症化すると呼吸困難などを引き起こしたりする病気です。さらに、腫れた卵巣の根元がねじれると卵巣への血流が低下するため、極めてまれに手術が必要になるケースもあります。このような卵巣過剰刺激症候群は多嚢胞性卵巣症候群の人や35歳以下の人などで生じやすいことが分かっています。

現在のところ、体外受精による出生児における先天異常の頻度は、自然妊娠による出生児と比較して「変わらない」という報告もあれば「やや増える」という報告もあります。

治療後の経過

妊娠の成立が確認された場合は、妊娠初期は必要に応じてホルモン薬を補充しつつ、妊婦健診をしていきます。体外受精では高年齢の人も多く、また妊娠中や分娩時の合併症の頻度も自然妊娠より高いため、妊娠後もより慎重に経過を見ていくのが一般的です。

一方で、妊娠の成立が確認できない場合は妊娠に向けて次の治療をどのように行っていくか決めていくこととなります。

費用

2022年4月から体外受精は健康保険適用となったため、原則的に3割の医療費負担で受けることができるようになりました。

一度の体外受精にかかる費用は行う治療や使用する薬剤、採卵数や培養する受精卵の数などによって異なりますが、健康保険適用の場合の自己負担は10万~20万円ほどです。凍結胚の移植では、自己負担が5万~10万円前後となります。

自費の場合の費用は病院や患者によって異なりますが、おおよその目安として、上記費用の3倍前後の治療費となります。医療機関によって費用が大きく異なるため、具体的な費用については事前に医療機関で確認することをおすすめします。

治療費が高額となる場合に、1か月(暦月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」があります。この上限額は、所得に応じて定められています。

ただし、健康保険により体外受精を受けるには条件があり、43歳未満の女性が対象となります。また、治療開始時の女性の年齢が40歳未満の場合は1子につき最大6回まで、40歳以上43歳未満の場合には1子につき最大3回までが適用となります。これらの回数は胚移植でカウントされます。

治療開始時に女性が43歳以上の場合や、上記の回数を超えた場合は健康保険が適用されないため注意が必要です。

「体外受精」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

体外受精

Icon unfold more