しきゅうないまくしょう

子宮内膜症

最終更新日:
2021年09月09日
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2021/09/09
更新しました
2017/04/25
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概要

子宮内膜症とは、本来なら子宮の内側の壁を覆っている子宮内膜が、子宮の内腔以外の部位(卵巣や腹膜、子宮の壁の中など)に発生し、発育を続ける病気です。20~30歳代の若い世代の女性に発症することが多いとされています。

子宮内膜は本来、受精卵が着床する場所です。女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)のはたらきによって妊娠に向けて増殖・成熟が促されますが、排卵後2週間ほど経っても着床がない場合は、子宮内膜が子宮の壁から剥がれ落ちて出血と共に体外へ排出されます。

このような現象を“月経(生理)”と呼び、月経が終了すると次の妊娠の機会に備えて再び子宮内膜の増殖が開始されます。

この約1か月の性周期(月経)は、子宮内膜症で形成される異常な部位に生じた子宮内膜様組織にも影響を与え、月経前後に出血を生じて腹痛などを引き起こします。

また、この異常な子宮内膜様組織は体外へ排出されずに体の中に留まり、炎症を起こし周囲の組織と癒着して慢性的な腹痛を引き起こしたり、不妊症の原因になったりすることも少なくありません。

治療では薬物療法や手術などを行うものの、再発するリスクが高く将来的にがんになることもあるため、慎重な経過観察が必要となります。

原因

子宮内膜症は、本来なら子宮の内腔にしか存在しないはずの“子宮内膜組織”が子宮内腔以外の場所に発生し、増殖することによって発症します。

どのようなメカニズムで子宮内膜症が発症するのか明確に分かっていない部分が多いものの、20~30歳代の若い女性に発症しやすいことなどから女性ホルモンの作用によって引き起こされると考えられています。

また、経血がお腹の中に逆流する現象が発症に関わっている説もあり、初潮が早い・妊娠回数が少ない・性周期が短いなど、月経を経験する回数が多い人ほど子宮内膜症の発症率が高くなることが分かっています。

症状

子宮内膜症は子宮内腔以外の部位に子宮内膜が発生する病気で、特に卵巣や子宮、腸や膀胱(ぼうこう)の隙間、子宮を支える靱帯(じんたい)、卵管などに発症しやすいとされています。一方で、肝臓の周囲や肺など子宮と遠く離れた部位に発症するケースも珍しくありません。

子宮内膜症を発症すると、早期の段階では月経中を中心に下腹部の痛みが強くなります。また、進行すると周囲の組織と癒着を引き起こし月経痛が悪化するだけでなく、慢性的な腰痛や下腹部痛、排便時や性交時の痛みなどが現れるようになります。まれではありますが、尿管や腸管の閉塞(へいそく)が起こることもあります。また、肺に発症した場合は、月経時に肺の一部に穴が開いて息苦しさや胸痛などを引き起こす“気胸”を伴うことが知られています。

さらに、子宮内膜症は卵巣や卵管などに癒着を引き起こすため不妊症の原因となるケースも多く、子宮内膜症患者の約3割は不妊症であるとのデータもあります。

検査・診断

子宮内膜症が疑われるときは次のような検査が必要となります。

画像検査

子宮の大きさや位置、周辺組織との癒着の有無などを調べるために画像検査が必要になります。第一に簡便に行える超音波検査を実施しますが、状態をさらに詳しく調べ、がんなど別の病気との鑑別を行うためにCTやMRIによる精密検査が行われることも少なくありません。

血液検査

子宮内膜症が子宮の筋層内に起こると経血量が増えるため、慢性的に貧血となることがあります。そのため、貧血の有無など全身の状態を確認するために血液検査を行うのが一般的です。また、子宮内膜が卵巣内で増殖することによって生じる“チョコレート嚢胞(のうほう)”などの場合は、がんとの鑑別をするために腫瘍(しゅよう)マーカー(がんを発症すると体内での産生が盛んになる物質)の数値を調べることがあります。ただし、これは子宮内膜症でも上がることも多く、“高値だからがん”と即断はできません。骨盤MRIとの結果も考慮し、総合的に判断することになります。

腹腔鏡検査

画像検査や血液検査などでも子宮内膜症の診断を下すことは可能ですが、子宮から離れた部位に発生している子宮内膜症が疑われるときは、腹腔(ふくくう)の中に内視鏡を挿入して病変の状態などを詳しく調べる検査が行われることがあります。体に負担がかかる検査ですが、正確な診断が可能です。そのまま手術に移行することも多くあります。

治療

子宮内膜症と診断された場合は、重症度や発症部位、将来的な妊娠・出産の希望などによって次のような治療が行われます。

薬物療法

軽度な子宮内膜症であれば、子宮内膜の増殖を抑制するために低用量ピルや黄体ホルモンが用いられます。また、痛みに対しては一般的な鎮痛剤で対処します。

手術

チョコレート嚢胞など悪性が疑われる場合、また大きい場合、不妊症の原因と考えられる場合などでは病変部を切除する手術が行われます。また、将来的な妊娠の希望がない場合は、再発を予防するためにも病変部だけでなく子宮・卵巣・卵管なども同時に摘出することがあります。低侵襲(ていしんしゅう)な腹腔鏡下手術で行うことが可能です。

予防

子宮内膜症は明確な発症メカニズムが解明されていないため、現状では確立した予防法がありません。

しかし、発症した場合は放置すると周辺組織との癒着が生じ、月経痛などがひどくなるだけでなく、不妊の原因になる可能性もあります。月経痛の悪化、経血量の増加などの症状がある場合は、できるだけ早く婦人科で検査を受けるようにしましょう。

また、症状のない方も一度は検診を受けられることをおすすめします。

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