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子宮や卵巣の“良性”の病気とは? 婦人科良性疾患について

子宮や卵巣の“良性”の病気とは? 婦人科良性疾患について
松本 貴 先生

医療法人伯鳳会 大阪中央病院 副院長・婦人科部長

松本 貴 先生

目次
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女性特有の病気の中でも、子宮筋腫子宮内膜症卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)など、がん(悪性の腫瘍(しゅよう))以外の病気を“婦人科良性疾患”といいます。命に関わる病気ではありませんが、腹部の強い痛みなどの原因となることがあります。気になる症状があれば、我慢せずに婦人科を受診し、医師に相談することが大切です。

今回は、婦人科良性疾患のメカニズムや症状について述べるとともに、治療する際のポイントについて、大阪中央病院副院長・婦人科部長の松本(まつもと) ( たかし)先生に伺いました。

子宮筋腫とはどんな病気?

子宮は、筋肉でできていて伸びたり縮んだりする臓器です。子宮の中にある筋肉は、伸縮しにくいこぶ(腫瘍)になることがあり、卵巣から分泌される女性ホルモンによって増殖して大きくなります。このこぶを、子宮筋腫といいます。

30歳以上の女性の2~3割には1cm程度の筋腫が見られることが一般的で、珍しいものではありません。複数個できることが多く、10個以上の多くの筋腫が見つかる患者さんもいます。なぜ筋腫ができてしまうのか、はっきりとした原因は分かっていません。人によって筋腫ができる場所や数、大きさはさまざまで、それによって症状は異なります。

子宮筋腫があると、月経(生理)のときの出血量が多くなること(過多月経)、月経量が多いことによる貧血、強い月経痛、膀胱が圧迫されて尿が近くなる(頻尿)といった症状をきたすことがあります。また、不妊症の原因となることがあります。

特に症状が出ておらず困っていなければ、急いで手術をする必要はありません。ただし、大きな筋腫は骨盤内を圧迫して問題となることが多いため、ある程度の大きさになったら手術を考えることになります。

筋腫のできる場所は次の3つに分けられます。

子宮の内側(粘膜下筋腫)

子宮の内側(内腔(ないくう))に筋腫ができた場合、粘膜下筋腫と呼ばれます。筋腫ができることで内腔が伸ばされたり、内腔に筋腫が飛び出したりすると、不正出血、過多月経、貧血、不妊症などの原因になります。

子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)

子宮の筋肉の中にできる筋層内筋腫は、大きくなると過多月経を引き起こすため、貧血で困っているという患者さんが多くいらっしゃいます。さらに筋腫が大きくなると、お腹を触ったときに塊があると感じられるようになります。

子宮の外側(漿膜下筋腫)

子宮の外側にできる漿膜化筋腫(しょうまくかきんしゅ)は、非常に大きくなることがあります。10cmほどの筋腫ができている患者さんも珍しくありません。また、10個や20個など、多くの筋腫ができる方もいらっしゃいます。

子宮内膜症とはどんな病気?

女性の月経では、子宮の内腔にある内膜(子宮内膜)が剥がれて体外に排出され、月経が終わるときに内膜は薄くなっています。女性ホルモンが分泌されて月経周期が始まると、内膜はまた増殖していきます。妊娠に向けて内膜を厚くし、妊娠しなければ剥がれて落ちるというのが月経のメカニズムです。

子宮内膜のほとんどは出血とともに(ちつ)から出ていきますが、実は、月経血は卵管を通ってお腹の中に逆流するものがあります。月経中の方のお腹の中を腹腔鏡ふくくうきょうで覗くと、血液が溜まっていることは珍しくありません。子宮内膜症の原因は明らかになっていませんが、このように月経血の逆流と一緒に子宮内膜の細胞も逆流し、お腹の中でくっついて大きくなってしまうためではないかと考えられています。子宮内膜症ができると、腹部の痛みや不妊症をきたすことがあります。

月経がある女性の約10%が子宮内膜症といわれていますが、症状が軽くて病院を受診せず診断がついていない方も含めると、もっと多くいると考えられます。

子宮内膜症は、子宮以外のところにくっついて大きくなると、子宮の中と同じように月経のたび出血を起こします。人間の体は、けがをすると修復しようとしてケロイド(いったん治った傷が赤く盛り上がった状態になること)になることがありますが、お腹の中でもそれと同じような現象が起こり、傷のひきつれを起こすことになります。このように、子宮内膜症は月経のたび炎症を引き起こしながら悪化していくため、妊娠しておらず月経を繰り返している方は子宮内膜症になりやすいといえます。

妊娠すると月経は約10か月止まり、授乳をしている間も月経が起こりにくくなります。若いうちに出産したり子どもを何人も産んだりすることは、生涯で起こる月経の回数を減らすことにつながります。昔の女性はそのような妊娠出産をする方が多く、子宮内膜症を自然に予防しているようなものでした。現代では30歳などでの出産を考える女性が多いですが、実はこれが子宮内膜症になりやすいライフスタイルなのです。

子宮内膜症ができやすい場所として卵巣が挙げられます。卵巣は、排卵時に穴が開いては修復することを繰り返している臓器です。女性ホルモンが多く分泌されているところのため、そこへ発症した子宮内膜症は増殖しやすく、徐々に卵巣を覆って袋状になり、中に血液が溜まっていきます。このようにしてできた嚢胞(のうほう)を、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)といいます。

そのほか、子宮と直腸の間にある子宮ダグラス窩、子宮を後ろから支える仙骨子宮靱帯なども子宮内膜症ができやすい場所です。ダグラス窩や仙骨子宮靱帯の近くには、子宮に入っていく神経が通っているため、その辺りで引きつれが起こったり炎症が起こったりすると強い痛みが生じます。

子宮内膜症が出血を起こして体が傷を修復しようとするとき、体を守る免疫システムがはたらきます。免疫システムにより子宮内膜症が異物とみなされると、白血球などの細胞が集まって子宮内膜症を排除しようとして炎症が起こります。そこへ入ってきた精子は異物とみなされて白血球に食べられたり、免疫細胞から放出されるサイトカインというたんぱく質などにより動きが制御されてしまったりするのです。精子と卵子が出会って受精卵ができたとしても、受精卵も異物とみなされて拒絶されるメカニズムがはたらく可能性があります。

また、チョコレート嚢胞がある場合には、卵巣が慢性的な炎症をきたして固くなっているため排卵が起こりにくく、ほかの臓器とくっついてしまい(癒着)、精子が卵巣に到達できないことで不妊症につながることもあります。

子宮内膜症は、がん化にも注意が必要です。卵巣がんの頻度はおよそ1,000人に1人ですが、チョコレート嚢胞がある患者さんの約100人に1人は卵巣がんがあるといわれており、健康な方の10倍ほどのリスクとなります。卵巣がんが発生しやすくなる40歳を過ぎたら検診などを受けるようにしましょう。

卵巣嚢腫とはどんな病気?

卵巣嚢腫は、卵巣の中に液体や油などが溜まってできる腫瘍です。10歳代から60歳代など幅広い年齢で見られます。卵巣の中に溜まっているものによって、大きく分けて次の3種類があります。

血液が溜まってできる嚢腫

卵巣の中に血液が溜まってできる卵巣嚢腫はチョコレート嚢胞と呼ばれています。卵巣に子宮内膜症ができることが原因となります。

水が溜まってできる嚢腫

卵巣嚢腫の多くは、卵巣に水が溜まってできるタイプです。さらさらとした液体が溜まったタイプや、ムチンというゼリー状の粘液が溜まったタイプの卵巣嚢腫もあります。

また、排卵の影響でも生じることがあります。排卵時には、卵巣の中にある卵胞(らんぽう)という2cmくらいの袋が破れて中に溜まった水(卵胞液)が出てきますが、排卵がうまくできなかったり水が出なかったりすると、卵胞が3~4cm程度などに大きくなる場合があります。これを機能性の卵巣嚢胞といいます。

脂が溜まってできる嚢腫

卵巣はさまざまな組織をつくる臓器で、皮膚をつくってしまうことがあります。皮膚からは毛が生え、毛根からは脂が分泌されるため、子宮に皮膚がつくられると脂が溜まることになります。人によっては歯や骨がつくられることもあります。皮膚に似た組織が溜まってできる卵巣嚢腫を、類皮嚢胞といいます。

卵巣嚢腫の主な症状は、お腹が張って苦しさを感じる腹部膨満感、下腹部痛、頻尿などです。そのほか、卵巣嚢腫がねじれる茎捻転(けいねんてん)や破裂が起こることもあります。茎捻転は類皮嚢胞で多く見られます。類皮嚢胞が5~6cmくらいの大きさになると、ねじれて急激に痛みが起こることがあります。破裂することが多いのは大きくなったチョコレート嚢胞で、破裂すると激しい月経痛が生じ、救急車で搬送されてくる患者さんもいます。

婦人科良性疾患は、進行すると手術が必要になることがあります。手術の方法には、お腹を切って行う開腹手術と、お腹に小さな穴を開けて行う腹腔鏡下手術の2種類があります。当院では、傷あとが小さく、出血量も少なくて済む腹腔鏡下手術の実践に力を注いでいます。

腹腔鏡下手術は術者の手元を撮影して病巣を拡大しながら行う方法のため、細かい手術操作が可能であり、卵巣やほかの臓器を傷つけにくいことが特徴です。手術操作が難しく高度な技術が求められますが、当院では技術の向上に日々努め、“腹腔鏡下手術で開腹手術を上回るパフォーマンス”の実現を目指しています。当院における腹腔鏡下手術の合併症の発生率は1%以下です*

子宮筋腫子宮内膜症の手術について、詳しくは『子宮筋腫の治療——体への負担を軽減する腹腔鏡下手術とは?』『子宮内膜症の治療——妊娠出産を考慮して治療選択する重要性』をご覧ください。

*合併症発生数(3例)/手術総数(1170件)≒0.2% 調査期間:2019年1月1日~2020年12月31日

大阪中央病院婦人科の資料より 術中・術後合併症の症例数

月経痛などの症状があっても婦人科を受診することをためらい、我慢してしまっている方も少なくないと思います。しかし、低用量ピルなどを利用して月経をコントロールしてもよいということをぜひ知っておいてください。長期的な薬の使用に抵抗があるかもしれませんが、むしろ子宮内膜症卵巣がんは、低用量ピルを使用しているほうが発症のリスクを抑えることが期待できる病気です。

また、女性の方にお願いしたいのは、かかりつけの婦人科を持つようにしてほしいということです。月経痛が強い場合は子宮内膜症の可能性があるため、重症化を防ぐためにもまずは婦人科を受診しましょう。かかりつけ医がいれば病気の早期発見につながりますし、重症化したときは当院のような手術に対応している病院に相談してもらうこともできます。

私たちは、妊娠出産をはじめ、患者さんが希望する人生を歩めるようなお手伝いをしたいと考えています。気になることがあれば、遠慮なくご相談ください。

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