概要
過多月経とは、月経量(生理の量)が異常に多い状態のことです。
一般的には一回の生理周期での出血量が150ml以上のケースを指します。しかし、月経量を正確に把握することは難しいため、「経血が多い」「血の塊が出る」などの患者の訴えに基づいて診断されることが多いでしょう。過多月経の結果、日常生活に影響を及ぼすだけでなく、貧血がみられることも多くあります。
ホルモンバランスの乱れによって引き起こされることがあるほか、子宮筋腫や子宮腺筋症などの子宮の良性疾患や、まれに悪性腫瘍などの命に関わる病気と関連していることもあります。
過多月経は月経が始まる10歳代から閉経が近くなる40歳代以降まで、あらゆる世代にみられる病気です。全国で600万人程度の患者がいるといわれていますが、月経量の多さに慣れてしまい、異常を見逃してしまっている女性も多いと考えられています。
原因
過多月経の原因となる主な病気には、婦人科系の機能性疾患と器質的疾患があります。
機能性疾患は黄体機能不全などのホルモン分泌の異常によるもので、10~20歳代の若年層や閉経前の40歳代など、ホルモンバランスが乱れやすい年代に多くみられます。
器質的疾患は子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの良性疾患や子宮体がん、子宮頸がんなどの悪性疾患があり、30歳代以降の女性に多くみられます。
まれに、血液疾患などの内科的疾患が過多月経を引き起こすことがあります。
月経過多を引き起こす血液疾患にはフォン・ヴィレブランド病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板機能異常症、凝固XI因子欠乏症、血管性紫斑病(IgA血管炎)、メイ・へグリン異常症、後天性血友病などが挙げられます。
過多月経はさまざまな原因が考えられ、原因の特定が難しいことも少なくありません。しかし、がんなどの悪性疾患やまれな血液疾患が原因になっていることもあるため、月経量が多いと感じているときは病院を受診してみるようにしましょう。
症状
過多月経の症状は経血が異常に多いことです。一般的には、一回の生理周期の経血量は20~140mLといわれています。これ以上は過多月経であることの目安となります。ナプキンが1時間もたないほど経血量が多い、経血の中にレバーのような血の塊が混じることもあります。また、過多月経の結果、鉄欠乏性貧血を伴うことも多く、 めまいや立ちくらみ、疲れやすいなどの症状が現れます。
検査・診断
患者個々の経血量を正確に把握することは難しいため、通常は問診内容に基づいて判断されることが多く、経血量の基準は厳密ではありません。
診断の際には、「月経血に血の塊が混じる」「昼でも夜用のナプキンが必要になる」など、日常的な症状が助けとなります。また、貧血を合併することも多いため、貧血の有無が診断に役立つことも多いです。
過多月経がみられる場合、その原因となる病気を特定するための検査が行われることがあります。子宮筋腫やがんなどの器質性疾患が疑われる場合は内診、超音波、MRI、子宮鏡検査などが、黄体機能不全などの婦人科機能性疾患が疑われる場合はホルモン検査などが行われることがあります。過多月経以外にも粘膜からの出血やあざなど、血が止まりにくくなる症状がみられる場合は血液疾患が疑われ、止血凝固機能に関する検査などを行うことがあります。
治療
過多月経の主な治療には薬物療法と外科治療があります。また、新しい治療法としてマイクロ波子宮内膜アブレーションと呼ばれる低侵襲手術もあります。
どのような治療を行うかは、原因や患者さんの希望に応じて決定されます。
薬物療法
過多月経の治療に用いられる薬には、ホルモン剤(エストロゲン、プロゲステロンなど)、トラネキサム酸などがあります。経口剤が多いですが、子宮内プロゲステロン放出システム(LNG-IUS)と呼ばれる、子宮内に留置することで持続的に女性ホルモンを分泌する装置を使用することもあります。がんや血液疾患などそのほかの病気が誘引となっている場合には、それぞれの原因に合わせた薬物療法が行われます。
外科治療
子宮筋腫や子宮腺筋症などの器質性疾患がある場合は、外科治療が行われることがあります。子宮筋腫のような良性腫瘍の場合は筋腫のみを取り除く筋腫核手術が行われることが多いですが、子宮ごと摘出する子宮全摘術が必要になることもあります。いずれの場合も、内視鏡手術(腹腔鏡下手術ないし子宮鏡手術)を適用することができます。
マイクロ波子宮内膜アブレーション
薬物療法が無効で子宮摘出術が必要になる場合に選択できる治療です。腟からアプリケーターを挿入し、マイクロ波によって子宮内膜を破壊することで過多月経を改善することができます。子宮を温存できるため体の負担が少ない治療として注目されていますが、妊孕性(妊娠のしやすさ)が損なわれるデメリットやいくつかの適応条件があります。
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