インタビュー

子宮内膜症の治療方法―ライフプランに合わせた治療を

子宮内膜症の治療方法―ライフプランに合わせた治療を
堤 治 先生

山王病院(東京都) 名誉病院長

堤 治 先生

この記事の最終更新は2015年05月18日です。

子宮内膜症は、子宮内膜が子宮の中以外の場所で増殖してしまう疾患です。「少ない妊娠・出産回数」がリスクのひとつになる疾患であり、近年若い女性の間で増えています。ひどい月経痛や不妊を引き起こしたり、また長期的には悪性化する可能性があるため、しっかりと治療計画を立てることが大切です。

一方で治療方法は子宮内膜症の状態や症状、そして妊娠希望を含む個人のライフスタイルを反映して決定されるため、とてもわかりづらいのが特徴です。そんなわかりづらい子宮内膜症の治療法について、婦人科の腹腔鏡手術の第一人者・堤 治先生にうかがいました。

子宮内膜症が発生しやすい部位
子宮内膜症が発生しやすい部位

子宮内膜症の検査には、問診のほか、内診や直腸診が必要になります。超音波検査やMRI検査などの画像診断が有効な場合もあります。

血液中の腫瘍マーカーであるCA125が高値になることもあり、これも参考にします。腫瘍マーカーにはいろいろな種類があり、通常悪性腫瘍の発見や治療後の状況をみるために用いられます。CA125は通常は卵巣がんの状態をみるために使われる腫瘍マーカーですが、子宮内膜症では高値になることが知られています。

症状やこれらの検査から診断がつく場合が多いのですが、確定診断のためには腹腔鏡検査でおなかの中を調べなければなりません。

 

CA125について詳しくはこちら

腫瘍マーカーについて詳しくはこちら

子宮内膜症は治療の進め方の難しい病気であり、診断後も治療法の選択には慎重さが要求されます。というのは、年齢、現在と将来の妊娠の希望の有無、症状の程度、過去の治療の有無と方法によって、何を優先するかが変わってくるからです。

不妊治療目的なのか、それとも痛みの緩和が目的なのかという患者さんの希望をベースにしながら、将来を見越した長期的な計画のもとに治療のメリット・デメリットを考慮することが大切です。

子宮内膜症の治療法には大きく分けて薬物療法と手術療法があります。

通常は、薬物療法をまず行います。最初は鎮痛剤から用い、それでも有効でない場合にはピル(主に低用量)を使用することがあります。ピルは排卵を抑えるので避妊用にも用いられ、月経痛を和らげる効果もあります。以前、ピルは保険適用ではありませんでしたが、今では子宮内膜症の治療として保険適用になっているものもあります。

ピルを使っても効果がない場合には、ホルモン剤(GnRHアゴニスト)で月経を止める方法があります。
GnRHアゴニストというホルモン療法は卵巣機能を一時的に停止させる治療です。結果として閉経と似た状況になるため偽閉経療法ともいわれます。ただし無視できない副作用として更年期症状が起こることがあります。

また、長期的な使用は骨粗鬆症を引き起こすため、長くても半年程度が目安とされています。治療を終了すると月経が再開し、症状も戻ってきてしまいます。このため、この治療を行う方は「症状があり、あと少しで閉経しそうな」40代後半の方に選択されやすい傾向があります。若い人に繰り返し用いることは避けた方がよいと考えます。

外科的療法には、病巣のみを除去する保存療法と、子宮、卵巣などを切除する根治療法があります。

最近では腹腔鏡を使う腹腔鏡手術により、ごく小さな切開で手術をすることができるようになってきました。特に保存療法の場合、腹腔鏡の利点を生かして子宮の後ろのダグラス窩や子宮の前の膀胱子宮窩の微小な病変も拡大した画面で探し出し、病巣を除去することができます。

記事1:生理痛がひどかったら子宮内膜症かも?―その原因と症状
記事2:子宮内膜症の治療方法―ライフプランに合わせた治療を

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