日本では、晩婚・晩産化に伴い、不妊に悩まれる方が増えています。そもそも「不妊(症)」とはどのような状態を指すのでしょうか。多岐にわたる不妊の原因について、国際医療福祉大学医学部産婦人科 教授の河村和弘先生にお伺いしました。
日本産科婦人科学会は、不妊の定義を、「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、避妊をすることなく1年間、通常の性交を継続的に行っているにも関わらず妊娠が成立しない場合」としています。過去、日本ではこの期間を2年間と定義していましたが、WHOなどの諸機関が期間を1年としていたことから、国際基準と合わせるべく2015年8月に定義に変更が加えられました。
日本では、女性の晩婚化やキャリア形成指向などさまざまな理由によって、高齢妊娠・出産が増えています。しかし、日本産科婦人科学会の体外受精の成績データから、女性は34~36歳頃になると妊孕性(妊娠する力)が下がりはじめることが明らかになっています。そのため、2015年に行われた不妊の定義変更により、女性が以前よりも早期かつ適切な不妊治療を受けることにつながることが期待されています。
「不妊の原因」と聞くと、婦人科疾患などを思い浮かべる方も少なくはないでしょう。しかし、実際には不妊の原因には「年齢(加齢)」が大きくかかわっているのです。前項でも触れたように、女性の妊孕性は34歳頃を境に下がり、36歳頃には明確な低下がみられます。ですから、まずは加齢や老化といったものが妊娠に大きな影響を及ぼすことを、一般の方に広く知っていただきたいと考えています。
続いて、不妊の原因となりやすい婦人科疾患について解説します。
頻度として多いものは「子宮内膜症」や「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」が挙げられます。
子宮内膜症とは、子宮内膜の組織が子宮以外の場所で増殖・発育してしまう病気で、近年増加傾向にあります。卵巣や卵管周辺で生じた癒着が排卵障害を引き起こしたり、卵管が卵子を取り込む(ピックアップといいます)ことを障害して、妊娠を阻んだりすることがあります。
自覚症状には、月経困難症(PMS)や性交痛、排便痛などが挙げられます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、卵胞の発育に時間がかかり、排卵が起こりにくくなる病気です。若い女性に多くみられる排卵障害で、以下のような自覚症状が現れます。
欧米人は多嚢胞性卵巣症候群により肥満になりやすく、耐糖能異常や高血糖に陥りやすい環境が作られてしまう傾向があります。しかし、日本人の場合は多嚢胞性卵巣症候群であっても太らないケースが多くなっています。このように、同じ病気にかかった場合でも、人種差や体質の違いにより肥満のリスクは異なります。
このほか、子宮筋腫なども、筋腫のできた場所によっては妊娠に影響を与えることもあります。たとえば、粘膜下筋腫の一部は不妊と関係があると考えられますが、筋層内筋腫であればよほど大きくならない限り問題にはなりません。子宮の外側に飛び出した形の漿膜下筋腫であれば、妊娠にはあまり影響を及ぼさないといわれています。
コーヒーなどに含まれるカフェインが不妊の原因となると断言できる科学的根拠(エビデンス)は現時点ではみつかっていません。
しかし、我々のチームではカフェインについて研究を進めており、現時点では妊娠に影響を及ぼす可能性がゼロであるとはいえない状況ですので、積極的には摂取しないほうがよいでしょう。
喫煙も同様に現在研究中ですので、なんらかの結論が得られるまでは避けたほうが無難といえます。
やせは不妊のリスク因子になるということは、すでに科学的に証明されています。
排卵とは、脳の視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され、これにより下垂体から性腺刺激ホルモンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)が分泌されることで起こります。
ところが、正常範囲を超えて痩せてしまうと視床下部のはたらきが低下し、GnRHが正常に分泌されなくなります。これに伴い卵胞を刺激するFSHの分泌も障害されるため、卵胞が育たず排卵障害となってしまうのです。
一方、肥満についてはさまざまな意見があります。たとえば血糖値が上昇して高血糖になると、卵巣にも影響を及ぼします。また、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカイン(脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質の総称)も女性の健康に害を及ぼし、卵胞の発育障害や排卵障害などを引き起こすことがあります。
順天堂大学医学部附属順天堂医院 産科・婦人科 教授、ローズレディースクリニック 医師、国際医療福祉大学 医学部 産婦人科 教授、 国際医療福祉大学 高度生殖医療リサーチセンター センター長
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FT(卵管鏡下卵管形成術)の適応について
妻と不妊症治療に取り組んでいます。 造影検査の結果、片側(左側)卵管狭窄が認められました。右側は問題なく通っています。 この度、画像で見えない内膜症を取り除く事、狭窄が本当に認められるのか確認のために担当医より腹腔鏡手術を提案され、実施しました。 結果、問題は左側の卵管狭窄だけになりました。 FTもして欲しかったのですが、取り扱っていないのか、この閉塞では、部位が根本(近位部なのでしょうか??)なので開通させるのは難しいと言われ取り合ってもらえませんでした。 調べてみたところ、NCCNからは近位部では推奨しないようなコメントがありますが、その他の論文を見ると卵管采の方が難しく適応外となる事も書かれています。また、卵管穿孔の不安もあります。 セカンドオピニオンでFTをした方がいいのか、もしくは今の主治医が言うように、開通できない場所のため諦めた方がいいのか。教えて頂けませんでしょうか。よろしくお願いします。 ちなみに、田舎のため、セカンドオピニオンに行くにも新幹線で2時間が基本です。 精子関連、フーナーテストや抗体検査は問題ありませんでした
卵胞について
多嚢胞性卵巣もあり、卵胞が7mmから3週間育たず、内服治療でも育たず、注射を2回し、やっと20mm近くに成長したところで、無排卵で月経がきてしまいました。毎日排卵日検査をしていたので、排卵がなかった事は分かっています。今回の月経の間に、育った卵胞はどうなるのですか?また小さくなってしまうのか、成長したまま残っているのか、教えて下さい。育ったまま残っているのなら、今回の月経後に排卵する可能性はありますか?
妊娠の可能性は?
本日D30、排卵日翌日から高温期が持続しています。排卵日2日前にタイミングをとりました。最近は、月経前に乳房が張ることはなかったのですが、今回は乳房が張っています。それ以外の変化はないのですが、フライングで妊娠検査薬を使用してみましたが、陰性でした。この時期のフライング検査で陰性だと、妊娠の可能性は低いでしょうか?もちろん、フライング検査の信頼性は低いことは、承知しています。
妊娠について
3/19、排卵検査薬陽性、基礎体温も35.1℃と、ぐっと下がり、婦人科で昼頃卵胞チェックをしてもらい、排卵間近とのことでした。翌日には排卵検査薬は陰性になっていたので、婦人科で卵胞チェックをしてもらって、結構すぐに排卵したと思われます。 その2日前の午前中に、偶然にもタイミングをとっておりました。精子が射精されて、数時間後から活動を始める事を考えると、もしかしたら受精の可能性はあるとの事で、3/22から、デュファストンを服用しています(10日分処方)。排卵日翌日から高温期に入り、3/20(36.1℃)、3/21(36.1℃)、3/22(36.2℃)、3/23(36.1℃)、3/24(36.4℃)、3/25(36.3℃)、3/26(36.5℃)、と高温期を保っています。本日3/27にぐっと下がり、36.2℃でした。考えすぎかもしれませんが、もしかしたら、インプランテーションディップなのではないかと、つい思えてしまいます。ひどい便秘症なのですが、2日前から下痢や軟便も続いています。もちろん、検査をしないと答えが出ない事は分かっていますが、フライング検査は本当は良くないと思いつつ、試したいとも思ってしまいます。着床すると、何日程でhcGが検出できるようになるのでしょうか?
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