不妊症は子宮筋腫以外にも、卵管や卵巣などの子宮附属器の異常や子宮内膜症が原因で起こることも少なくないため、妊娠を妨げる要因についてしっかりと検査することが必要です。福岡山王病院 産婦人科部長の渡邊良嗣先生に、不妊症に対する腹腔鏡下検査と治療についてお話を伺いました。
子宮筋腫をはじめ、卵管や卵巣といった子宮附属器の異常・子宮内膜症など、不妊症となる原因にはさまざまなものがあります。
子宮は、子宮の内腔いわゆる子宮内膜に受精卵を着床させて発育させるという役割があります。そのため子宮筋腫ができると、子宮内腔が変形する等の理由で着床障害などを起こし、不妊の原因となります。また、卵管や卵巣の周囲に癒着が生じると卵子の移動に問題が起こるため、子宮内膜症があると受精障害等が起こります。子宮内膜症も妊娠しにくくなる原因といえます。
妊娠が成立するためには、以下の5つのステップが必要です。
卵巣から放出された卵子は、卵管の先端にある卵管采という器官によってピックアップされて卵管の内に導かれ、精子と出会い受精卵となって子宮に着床します。筋腫や癒着、子宮内膜症のため、この一連の流れの中のどこかで異常が起きると不妊症となります。
医学の進歩によって、最近は多くの方が 体外受精(IVF)や 顕微授精(ICSI)といった高度生殖医療(ART)を受けるようになりました。最新のデータによると、赤ちゃんの約25人にひとりが高度生殖医療の治療によって生まれています。
しかし、妊娠というのは、できるだけ夫婦の自然な営みによって成立することが望ましいと思います。
できるだけ自然に妊娠するために、一般的な不妊症治療で妊娠しない場合には、妊娠を妨げている原因がないか、一度お腹の中の状態を詳しく検査して治療することもひとつの選択肢です。外来で行う超音波検査や子宮卵管造影などの検査だけでは、お腹の中の癒着などといった妊娠しにくくなる微妙な異常はわかりません。すなわち、タイミング法(排卵の時期を正確に知ってそれに合わせて夫婦生活を持つ方法)などを試みたあとすぐに高度生殖医療を行うというのではなく、さらに詳しい検査を行った方が良いという考え方です。
以前はお腹の中を観察するために10センチほど腹部を切開する必要がありましたが、今は腹腔鏡を使って小さな創のみで確認することが可能です。福岡山王病院では、おへそに1.5センチと、両脇にそれぞれ5ミリの穴をあけてお腹の中を観察しています。卵管や卵巣周辺に癒着等があれば、お腹の中を確認すると同時に癒着剥離術を行うことができます。また子宮内膜症があれば電気凝固治療により内膜症病変を改善することも可能です。この治療によって自然妊娠される方も少なくありません。
卵巣から放出された卵子を拾い上げる卵管采が感染症などの原因で閉じている卵管閉塞の場合には、すぐに体外受精を行う考え方もありますが、手術により卵管を形成して自然に妊娠することを目指す方法もあります。
卵管形成術とは閉じている卵管采を切り広げて卵管の通過性を回復させる手術です。自然に妊娠できる可能性がでてきますが、100%の効果ではありません。卵管の中にある卵子を子宮に移送する繊毛の状態が悪ければ自然妊娠は難しい場合もあります。
手術による治療でどのくらいの確率で妊娠できるかは、なかなか分かりません。それぞれの状況が異なるからです。しかし手術を行うことにより、妊娠に向けてのお腹のなかの環境が改善されることは間違いありません。
ただし、子宮の内腔が変形を来している粘膜下筋腫の場合は、筋腫核出術を行うことによりかなりの高率で妊娠しやすくなることは予測できます。
妊娠は、各段階のステップがうまく進んで成立するものです。不具合のある段階が一つなのか複数あるのか、はっきりと分からない場合もしばしばあります。そのため、不妊症の治療では、妊娠の障害となる要素をひとつひとつ取り除くことが必要となります。薬による治療に加えて、手術による治療を行うことで、さらに自然に妊娠する可能性を上げていくことができるのです。
福岡山王病院 産婦人科部長
福岡山王病院 産婦人科部長
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医日本生殖医学会 生殖医療専門医・代議員日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医・指導医日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(産科婦人科領域)
福岡山王病院副院長。産婦人科部長として子宮筋腫や卵巣腫瘍など良性の婦人科疾患、不妊症の治療にあたっている。傷の小さな腹腔鏡下手術や、開腹しない膣式手術および子宮鏡下手術など低侵襲な手術を中心とした治療に長年取り組んでいる。挙児を希望する方には自然に近い形で妊娠できるよう、一般的不妊治療と腹腔鏡手術などの治療を組み合わせながら治療を行っている。更年期障害や月経不順などに対する女性のヘルスケアにも取り組んでいる。
渡邊 良嗣 先生の所属医療機関
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FT(卵管鏡下卵管形成術)の適応について
妻と不妊症治療に取り組んでいます。 造影検査の結果、片側(左側)卵管狭窄が認められました。右側は問題なく通っています。 この度、画像で見えない内膜症を取り除く事、狭窄が本当に認められるのか確認のために担当医より腹腔鏡手術を提案され、実施しました。 結果、問題は左側の卵管狭窄だけになりました。 FTもして欲しかったのですが、取り扱っていないのか、この閉塞では、部位が根本(近位部なのでしょうか??)なので開通させるのは難しいと言われ取り合ってもらえませんでした。 調べてみたところ、NCCNからは近位部では推奨しないようなコメントがありますが、その他の論文を見ると卵管采の方が難しく適応外となる事も書かれています。また、卵管穿孔の不安もあります。 セカンドオピニオンでFTをした方がいいのか、もしくは今の主治医が言うように、開通できない場所のため諦めた方がいいのか。教えて頂けませんでしょうか。よろしくお願いします。 ちなみに、田舎のため、セカンドオピニオンに行くにも新幹線で2時間が基本です。 精子関連、フーナーテストや抗体検査は問題ありませんでした
卵胞について
多嚢胞性卵巣もあり、卵胞が7mmから3週間育たず、内服治療でも育たず、注射を2回し、やっと20mm近くに成長したところで、無排卵で月経がきてしまいました。毎日排卵日検査をしていたので、排卵がなかった事は分かっています。今回の月経の間に、育った卵胞はどうなるのですか?また小さくなってしまうのか、成長したまま残っているのか、教えて下さい。育ったまま残っているのなら、今回の月経後に排卵する可能性はありますか?
妊娠の可能性は?
本日D30、排卵日翌日から高温期が持続しています。排卵日2日前にタイミングをとりました。最近は、月経前に乳房が張ることはなかったのですが、今回は乳房が張っています。それ以外の変化はないのですが、フライングで妊娠検査薬を使用してみましたが、陰性でした。この時期のフライング検査で陰性だと、妊娠の可能性は低いでしょうか?もちろん、フライング検査の信頼性は低いことは、承知しています。
妊娠について
3/19、排卵検査薬陽性、基礎体温も35.1℃と、ぐっと下がり、婦人科で昼頃卵胞チェックをしてもらい、排卵間近とのことでした。翌日には排卵検査薬は陰性になっていたので、婦人科で卵胞チェックをしてもらって、結構すぐに排卵したと思われます。 その2日前の午前中に、偶然にもタイミングをとっておりました。精子が射精されて、数時間後から活動を始める事を考えると、もしかしたら受精の可能性はあるとの事で、3/22から、デュファストンを服用しています(10日分処方)。排卵日翌日から高温期に入り、3/20(36.1℃)、3/21(36.1℃)、3/22(36.2℃)、3/23(36.1℃)、3/24(36.4℃)、3/25(36.3℃)、3/26(36.5℃)、と高温期を保っています。本日3/27にぐっと下がり、36.2℃でした。考えすぎかもしれませんが、もしかしたら、インプランテーションディップなのではないかと、つい思えてしまいます。ひどい便秘症なのですが、2日前から下痢や軟便も続いています。もちろん、検査をしないと答えが出ない事は分かっていますが、フライング検査は本当は良くないと思いつつ、試したいとも思ってしまいます。着床すると、何日程でhcGが検出できるようになるのでしょうか?
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