日本では、晩婚・晩産化に伴い、不妊に悩まれる方が増えています。記事1『不妊(不妊症)とは?その定義や主な原因について』では、不妊症の定義や原因などをご説明しました。不妊症を疑うとき、病院ではどのような検査を行うのでしょうか。病院を受診すべきタイミング、一般的な不妊症の検査について、国際医療福祉大学医学部産婦人科 教授の河村和弘先生にお伺いしました。
「不妊は女性のみの問題である」と誤解されている方はいまだに多く見受けられますが、不妊治療とは男女2人で行うものです。不妊カップルの約半数に男性に原因があるというデータもあります。
始めに行うべき検査は、精液検査です。精液量や精子数、運動率や正常形態率を調べる精液検査は、不妊の一般検査のひとつとして婦人科で受けることができます。
泌尿器科でも精液検査を受けることは可能ですが、男性不妊の多くは原因不明であり、泌尿器科で治療を行うことができる原因は精索静脈瘤など一部の疾患に限られます。
そのため、初めからご夫婦そろって不妊治療を専門に行うクリニックを受診し、検査を進めたほうが、不妊治療を円滑に行えるでしょう。そのうえで、必要に応じて泌尿器科で専門的な診察・治療を受けることをおすすめします。
女性を対象とした検査は、原則として侵襲性が低い(身体的な負担が少ない)ものから行います。また、それ以外に「月経周期」や「排卵のタイミング」なども考慮せねばならない検査が多々あります。
月経開始日を起点とし、3日目頃を目安にホルモンの数値を調べる検査を行います。(血液検査)
ホルモン検査は、排卵の前後にも行います。排卵前には排卵を起こすためのホルモン値の変動がみられるか、排卵後にはきちんとプロゲステロンが増えているかどうか(逆にいうと、不妊の原因となる黄体機能不全ではないかどうか)をみます。
このように、一般的には1回の月経周期中に3回程度のホルモン検査を行うことになります。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは卵胞から分泌されるホルモンのことを指し、この値を調べることにより卵巣内に残っている卵胞の数の目安がわかります。
AMH検査は、近年実用化された新しい検査です。自費診療で受けていただくことになりますが、月経周期による変動がなく、採血でわかる便利な検査であり、特に一定の年齢以上の方にとっては非常に有用です。
経腟超音波検査は、膣から行う超音波検査で、月経周期に左右されず行うことができます。
経膣超音波検査でわかるもっとも重要な情報は、卵胞の発育過程において「どのくらいの大きさの卵胞が何個育っているか」ということです。具体的には、「生理から何日目にどのくらいの卵胞が育っているのか」「排卵直前の状態」「(排卵後と仮定されるときに)本当に排卵が起こったか」などを確認します。
子宮や卵管にクラミジアや淋菌の感染による炎症が起こると不妊の原因となるため、これらの菌を持っていないか、採血もしくは子宮頚管粘膜の培養検査によって調べます。
ただし、子宮頚管粘膜の培養検査では、菌の有無はわかるものの、感染時期を推測することはできません。なぜなら、過去の感染でも子宮内などに癒着が発生することがあるからです。
感染時期を特定するには血液中の抗体の有無を調べるほかないため、当院では血液検査を主として行い、そのほかの情報から現在の感染が疑われる場合は、プラスアルファとして子宮頚管粘膜の採取も行います。
内診台に上がることに抵抗を感じる方もおられますので、まず血液検査のみ行うことは患者さんの心身の負担軽減にもなると考えます。
卵子と精子が出会う場所である卵管が通っているかを調べる「子宮卵管造影検査」は、非常に重要な検査のひとつです。ただし、この検査は必ず排卵前に行わなければなりません。これは子宮卵管造影検査による卵子の被ばくを避けるためです。
“10 days rule”という言葉もあるように、月経の初日から10日間(※出血がないとき)など、排卵の可能性が極めて低い時期に実施します。
性交渉後に子宮頚管粘膜内で精子が正常に動いているかどうかを調べる検査です。この検査は、排卵日に合わせて行うことが重要です。というのも、排卵日になると子宮口は精子が入っていきやすいよう柔らかくなりますが、それ以外の日はそもそも精子が子宮頚管へと入っていくことができないため、検査を行ったとしてもその目的を果たすことができないからです。
もう1点重要なことは、性交渉を持ってから受診(検査)するまでの時間をなるべく空けないよう心掛けていただくことです。
精子は時間が経過すると死んでしまうため、たとえば検査前日の夜(例:検査時の半日前)に性交渉を行った場合、精子の運動性が悪い原因が時間の経過によるものなのか、はたまた生殖機能の問題によるものなのかが判別できなくなってしまいます。ですから、午前に受診される場合は検査当日の朝に性交渉を持つなど、タイミングを合わせていただく必要があります。
このように、不妊の検査には月経周期を基準にして実施日を決めるものが多いため、月経開始日などに受診していただくと検査計画を立てやすくなります。
もちろん、月経周期が乱れている方やなかなか生理が来ないという方でも、人工的に月経を誘発させて検査や治療を行うことは可能ですから、安心して随時受診してください。
順天堂大学医学部附属順天堂医院 産科・婦人科 教授、ローズレディースクリニック 医師、国際医療福祉大学 医学部 産婦人科 教授、 国際医療福祉大学 高度生殖医療リサーチセンター センター長
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