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夫婦で行う不妊治療−不妊症の原因と検査方法について

夫婦で行う不妊治療−不妊症の原因と検査方法について
湯村  寧 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディ...

湯村 寧 先生

村瀬 真理子 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター担当部長・准教授

村瀬 真理子 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年11月30日です。

妊娠を望む男女が、1年以上避妊をせずに夫婦生活を行っているにもかかわらず妊娠しない状態を「不妊症」といいます。不妊症というと、女性のものというイメージを抱いている方は多いのではないでしょうか。しかし、不妊症は女性側だけの問題ではなく、原因の半数近くは男性側にあることからも、不妊治療は夫婦で協力しながら行うことがとても大切です。

今回は、横浜市立大学附属市民総合医療センター生殖医療センターの部長である湯村寧先生(男性不妊担当)と担当部長である村瀬真理子先生(女性不妊担当)に、不妊治療についてお話を伺いました。

女性に原因があって妊娠ができない場合には、以下のような原因があると考えられます。ただし、あらゆる検査を行っても原因がわからない場合もあります。

  • 排卵障害
  • 卵管に問題がある
  • 子宮に問題がある
  • 頸管(けいかん)に問題がある
  • 抗精子抗体を持っている

などが挙げられます。

精子と結びつき受精卵となる卵子は、もともと卵胞とよばれる袋の中に入っています。その卵子は、毎周期ごとに1個だけが成熟して、卵胞から排出されます。これを「排卵」と呼びます。

排卵がうまくおこらないと無月経月経不順となり妊娠しにくくなります。

精子と卵子は、卵管の端で出会い受精卵になったあと、卵管内で成長しながら子宮に移動し着床します。このとき、受精卵の通り道である卵管が詰まっていたり、狭くなっていたりすると、受精卵が子宮へ移ることができず、妊娠が成立しません。

子宮筋腫子宮内膜ポリープがある方で、それが内側に突出したような形状になっていると妊娠を妨げてしまうことがあります。

排卵時には、子宮の出口にある頸管(けいかん)から頸管粘液が産生され、精子が通りやすい状態になります。しかし、頸管粘液が十分に産生されなかったり、精子との相性がよくなかったりすると、精子が通過できなかったり、動きが悪くなってしまったりすることがあります。

精子を攻撃してしまう抗精子抗体を持っている方の場合、妊娠が難しい場合があります。

一方、男性側に何らかの問題がある不妊症では、以下のような原因が考えられます。

  • 造精機能障害
  • 性機能障害
  • 精路通過障害

などがあります。

造精機能障害とは、精巣で精子を造る機能が低下しているために、精液中の精子の数が少なかったり、精子の動きが低下したりしている状態を指します。男性不妊症の約82.4%は造精機能障害が原因であるといわれています。

造精機能障害の発症原因は、約半数が不明です。また、造精機能障害の約30%を占めている原因としては、精索静脈瘤(精巣から出てくる静脈の一部がこぶ状に膨らむ病気)があります。精索静脈瘤があると、精巣の血流が滞ったり、精巣の温度が上昇したりすることで、精子の量や動きが悪くなる原因となります。

ED(勃起不全)や射精障害などの性機能障害も男性不妊症の原因です。男性不妊症の約13.5%の方が性機能障害であるといわれています。

精巣から通じている精巣上体(副睾丸(ふくこうがん))や精管が閉塞している状態を指す通過障害が原因の場合もあります。通過障害は全体のおよそ3.9%です。

検査

女性の不妊症検査は、月経周期に応じて行います。

検査内容として、まずは問診超音波検査を行います。超音波検査では、卵巣の形状、子宮筋腫や卵巣嚢腫(のうしゅ)の有無などを確認します。また、卵胞がどれくらい育っているかをみて、いつ頃排卵するかの予測も超音波検査で行います。

月経3〜5日目には、排卵を司るホルモンが適切に分泌されているかどうかをみる採血検査を行います。

月経終了後から排卵までの間には、卵管がきちんと開通しているかどうかを調べる子宮卵管造影検査を行います。

また、排卵時期に行う検査としては、排卵時に多く分泌される頸管粘液の量や質などを調べる頸管粘液検査、フーナーテストがあります。

フーナーテスト(性交後試験)では、排卵日近くに夫婦生活を行っていただき、その翌日病院で頸管粘液内にきちんと精子が入っているかどうかを確認します。

排卵後5〜7日目には、着床を助ける黄体ホルモンが十分に分泌されているかどうかをみるために、採血によるホルモン検査を行います。

また、自費診療ではありますが、採血によって抗精子抗体の有無も調べます(横浜市立大学附属市民総合医療センターの場合、およそ7,000円)。2018年11月時点

このように、女性の場合は月経周期に応じた検査を行う必要があるため、すべての検査を行うのに、少なくとも1か月程度はかかります。また、1か月間の中でも、月経周期に応じて「この日に行わないといけない」という検査がいくつかあるため、何度か病院に来ていただく必要があります。

女性の不妊治療のゴールは、妊娠成立ではなく出産です。

そのため、妊娠したあと無事に出産できるかどうかについても、不妊治療開始前に調べておく必要があります。

主な検査としては、まずは甲状腺ホルモン検査を行います。甲状腺機能異常は、早産流産、胎児発育遅延、知能発育遅延と関連するためです。また、糖尿病があると、赤ちゃんに奇形が生じることがあるため、妊娠前に血糖値検査を行います。

そのほか、風疹抗体検査も行います。妊娠中に風疹にかかると、赤ちゃんが風疹ウイルスに感染して先天性風疹症候群を引き起こす危険性があります。すると、心臓疾患、難聴白内障などの疾患を持って生まれてくることがあるため、風疹抗体価が十分でない場合には、妊娠前に風疹ワクチンを打っていただいています。

男性の場合、主に問診、精液検査、超音波検査、採血を行います。精液検査では、精液所見(精子の量、濃度、運動率、形態、感染の有無など)を確認します。

超音波検査では、精索静脈瘤の有無や精巣の大きさを調べます。無精子症(射精された精液の中に精子がいない状態)の方の場合には、陰嚢(いんのう)の中に、きちんと精管が通っているかどうかも超音波検査で確認します。

採血検査では、主に血液中の亜鉛の量を調べます。亜鉛は精子形成や発育にかかわっているため、亜鉛の量が少ない場合には、亜鉛製剤を処方することもあります。

当院では、これらすべての検査を1日で行っています。

引き続き、記事2『夫婦で行う不妊治療−具体的な治療法や費用について』では、不妊症の治療法についてお話を伺います。

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  • 横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員

    湯村 寧 先生

  • 横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター担当部長・准教授

    村瀬 真理子 先生

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