造精(ぞうせい)機能障害とは、文字通り精巣内で「精子を造る」機能に障害がある状態で、男性不妊の原因の約83%と大部分を占めます。その結果、精液中の精子の濃度が低下する「乏精子症」や精液中に精子が存在しない「無精子症」、精子の運動率が低下する「精子無力症」などの症状が見られます。
造精機能障害は、その半分以上が原因不明です(表1)。原因が分かっているものの中で最も頻度が高い(35.9%)ものが精索静脈瘤です。この詳細は別の記事で詳しく解説をしますが、精巣から心臓に戻る静脈の血流がさまざまな原因により逆流し、精巣の周りに静脈の瘤(こぶ)ができるものです。この瘤の影響として、精巣の温度上昇が起きるために精子が造られにくくなっている、拡張した血管より精子にダメージを与える物質が放出される、精巣が低酸素環境になるなどの説があります。
その他の造精機能障害の原因としては、精巣が陰嚢内に下降しない停留精巣や、多くの場合無精子症を引き起こす染色体異常(「クラインフェルター症候群」など)、抗がん剤投与や放射線治療を行った影響で起こる精子の形成障害、脳から分泌されるホルモンの異常による精子の形成障害などが挙げられます。
おもな治療として、薬物療法と手術療法に分けられます。
薬物療法としては、おもに特発性(原因不明)の造精機能障害に対してビタミン剤や漢方製剤、抗酸化剤などが用いられることがあります。いずれも経験的な治療(絶対に効く確証はないが可能性がある薬物を投与し、効果があるかどうかを見る方法)であり有効性が明らかになっているものは少ないのですが、安価で副作用の発生頻度が低いため、期間を設けて内服することがしばしばあります。
一方、脳の下垂体という部分の機能が低下することにより起こるホルモン分泌異常に対しては、ホルモン剤の注射の有効性が認められています。他の方法としては、抗女性ホルモン剤であるクエン酸クロミフェンなどの内服もしばしば行われますが、保険非適応であり、有効性についても確立はされていません。
手術療法について、現在有効性が認められているのは精索静脈瘤に対する手術です。別記事に詳しく述べた通り、手術により57%の精索静脈瘤患者さんの精液所見が改善したという報告1)があります。また、精子形成障害による無精子症の患者さんに対し、手術用の顕微鏡を用いて精巣内から精子を採取する精巣内精子採取術(MD-TESEやMicro-TESEと呼ばれます)を行い、採取された精子を顕微授精(体外受精の方法のひとつ)使用することがあります。
造精機能障害はその半数以上が原因不明であることから、有効性が確立された予防法は多くありません。しかし、喫煙や慢性的なアルコール摂取、サウナなどの高温環境が造精機能に悪影響を及ぼすとの報告もあります。何事も「ほどほど」に越したことはないのではないかと考えられます。
1) Spermatic vein ligation as treatment for male infertility: justification by post-operative semen improvement and pregnancy rates, J Reprod Med, (1990)
横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター
横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員
竹島 徹平 先生の所属医療機関
横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員
日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・泌尿器科指導医日本生殖医学会 生殖医療専門医日本癌治療学会 会員日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医(泌尿器科)の一人であり、男性不妊治療の専門家。横浜市の不妊相談などを担当し、男性不妊の啓発活動に努めている。また、横浜市立大学附属市民総合医療センターの生殖医療センター部長を務める。同センターは泌尿器科、婦人科に日本生殖医学会認定 生殖医療専門医(泌尿器科)が在籍しており、パートナーと一緒に治療を受けられる神奈川県内の施設である。
湯村 寧 先生の所属医療機関
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