インタビュー

閉塞性無精子症(OA)とはどんな病気?その原因と治療方法

閉塞性無精子症(OA)とはどんな病気?その原因と治療方法
山中 弘行 先生

大船中央病院 泌尿器科 医員、横浜市立大学 医学部 泌尿器科学 客員研究員

山中 弘行 先生

湯村  寧 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディ...

湯村 寧 先生

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この記事の最終更新は2015年04月15日です。

閉塞性無精子症は、精巣内で精子が作られているにもかかわらず、精液中に精子が出てこない状態です。これは、精路(精子の通り道)が閉塞(詰まっていること)しているために起こります。一般的に男性不妊患者の15%程度は無精子症とされますが、閉塞性無精子症は無精子症患者のさらに15%程度で、全男性不妊患者の2%程度の頻度と言われています。

閉塞性無精子症の原因
閉塞性無精子症の原因

閉塞する場所は、上の図のように主に3つ挙げられます。

作られた精子が送られるための精管に問題があるケースです。例として以下が挙げられます。

  • パイプカット(男性の避妊のため精管を切る手術)術後
  • 幼少時の鼠径ヘルニア脱腸)手術後の炎症や、手術の影響によって精管が狭くなってしまった場合
  • 先天性の精管形成不全(生まれつき精管が無かったり、細くなっている)

精巣上体部と呼ばれる部分(図参照)での閉塞を起こしているケースです。例として以下が挙げられます。

  • 精巣上体炎などの炎症後の瘢痕(傷跡)によるもの
  • Young症候群(ヤングしょうこうぐん)の場合。これは慢性の気管支炎副鼻腔炎と同時に閉塞性無精子症が起こる病気ですが、詳しい原因はわかっていません。

尿道につながる部分である射精管で閉塞しているケースです。例として以下が挙げられます。

  • 嚢胞(のうほう)によるもの。射精管部分に、嚢胞と呼ばれる液体の塊ができていることがあります。これによって内側から、または外側から射精管が圧迫され、精液が出てこられません。多くは先天性のものです。
  • 炎症・外傷によるもの。何らかの尿道感染による炎症や傷が治癒していくとき、その過程で射精管が癒着してしまい、精液が出てこられないケースがあります。

閉塞性無精子症の原因は様々ですが、精子を作る工場である精巣の機能には問題はありません。問題があるのは、あくまで精子を輸送する機能です。したがって、

  1. 精巣の容積はほぼ正常
  2. 精子を作る命令ホルモンであるFSHは正常

この2点が、閉塞性無精子症と診断された場合のポイントとなります。

閉塞性無精子症の治療方針
閉塞性無精子症の治療方針

上の図は、閉塞性無精子症の一般的な治療方針のフローチャートです。
閉塞性無精子症は「精液(精子)の通り道が詰まっている」状態ですから、詰まっている箇所の開通に成功した場合は、精液中に精子が出てくることが期待できます。そのため、まずは精路の再建術・開通術が可能かどうかを検討します。

再建術・開通術としては

  1. 精管同士をつなぎ直す(精管精管吻合術)
  2. 精管と精巣上体をつなぐ(精管精巣上体吻合術)
  3. 射精管の閉塞部位を切除スコープ(膀胱腫瘍や前立腺を切除するための器具)で切開し、詰まったところを開通させる。

等があります。

これらの手術後に精液の中に精子が現れれば、自然妊娠も期待できます。しかしいずれの手術にも、100%開通し精子が現れるという保証はありません。例えば、精管精管吻合術の場合、精子の出現がみられるのは70%程度です。そのうえ、70%のうちには、自然妊娠が期待できる精子数に満たないケースも多くみられます。そのため、パートナーの方の年齢によっては精巣内精子回収手術(TESE)を行い、精子の確保を優先することもあります。

しかし、精液中に精子が出現した場合は、パートナーの女性から採卵をしなければならない顕微授精(ICSI)を回避し、タイミング法や人工授精(AIH)などの不妊治療を選択することも可能となります。これによって、女性の身体的負担、加えて経済的負担が軽減されます。この点から、再建術を行うメリットは大きいと考えられます。

記事1:閉塞性無精子症(OA)とはどんな病気?その原因と治療方法
記事2:無精子症について―精子回収の可能性は?

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