概要
精巣上体炎とは、精巣の上のほうに位置する“精巣上体”と呼ばれるコイル状の管に炎症が生じる病気です。発症すると陰嚢に痛みや腫れが生じ、発熱などの症状が現れます。数日単位で症状が急速に進行し、治療に反応しやすい“急性精巣上体炎”と、症状は軽微なものの徐々に進行し、治りにくく遷延化する“慢性精巣上体炎”があります。
主に尿道や前立腺から侵入した細菌などが精管を通って精巣上体まで波及することが原因で発症します。小児の場合は明らかな感染がないケースもあり、アレルギー性紫斑病などの病気が原因で発症することがあります。
治療は基本的に抗菌薬などを用いた薬物療法を行いますが、重症化して膿瘍(膿の塊)が形成されているようなケースでは切開して膿を排出する治療が必要になります。
原因
精巣上体炎は、尿道から体内に侵入した細菌などが精管を通って精巣上体まで波及することで発症します。主な原因は、淋菌やクラミジアなどによる性感染症および大腸菌などによる尿路感染症です。
また、精管の近くにある前立腺の炎症や、肺などに感染した結核菌が精巣上体に広がることが原因で発症することもあります。
中には感染がないにもかかわらず発症するケースもあります。重い荷物を持ち上げた際などに強くいきむことで尿が逆流し、精巣上体に炎症が起こることが原因と考えられています。
小児が発症するケースは感染がなく原因がはっきり分からないことが多いとされていますが、アレルギー性紫斑病などが原因で引き起こされることがあります。
症状
精巣上体炎のうち、尿道から侵入した細菌などが原因で急激に症状が現れるタイプが“急性精巣上体炎”です。このようなタイプの精巣上体炎では、陰嚢の突然の痛み、腫れ、発赤などの症状がみられ、発熱を伴うことがあります。
また、原因菌の種類によっては尿道から膿のような分泌物が排出され、重症化すると陰嚢の内部に膿がたまることもあります。
結核菌が原因の場合は、痛みを伴わず陰嚢にしこりを触れるようになります。
検査・診断
精巣上体炎が疑われるときには以下のような検査が行われます。
画像検査
精巣上体炎の診断にはドップラー超音波検査が有用とされており、精巣への血流が増加していること・精巣上体が腫れていることが確認できた場合は精巣上体炎が強く疑われます。一方、精巣への血流が途絶えていれば精巣捻転を疑い、緊急手術が必要です。精巣に内部不正なエコー像を認めれば精巣腫瘍(がん)を疑って精巣腫瘍を専門とする医師の治療が必要になります。
必要に応じてCTやMRIなどで詳しい検査を行うこともあります。
尿検査
尿を採取して尿中の白血球の有無から尿路感染を診断します。
また、培養検査を行い、どのような細菌が含まれているかを調べます。精巣上体炎の原因菌を特定すると同時に培養された細菌に有効な抗菌薬の種類を調べる薬剤感受性検査を行います。性感染症を疑う場合は尿検査でクラミジアや淋菌の有無を調べます。
尿道から分泌物がある場合にはそれらを採取して培養する検査を行うこともあります。
血液検査
炎症の程度など全身の状態を評価するために血液検査が行われることもあります。
治療
精巣上体炎の治療は原因によって異なりますが、細菌感染などが原因の場合はそれぞれの原因に適した抗菌薬の投与が行われます。痛みや腫れが強い場合には鎮痛薬を用いたり、冷却したりといった対症療法が必要です。
また、重症化すると膿瘍を形成することがあり、このような場合は陰嚢の一部を切開して内部にたまった膿を排出する治療が必要になることがあります。
予防
精巣上体炎は尿路感染症や性感染症などが原因で発症することが多く、特に性感染症は性交時のコンドーム着用や不特定多数との性行為を控えることなどで予防が可能です。
また、前立腺肥大症などによる排尿障害は、尿の停滞により尿路感染症の要因となり、精巣上体炎にもつながるため、適切な治療を受けることで予防になります。
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