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インタビュー

公開日 : 2015 年 04 月 07 日
更新日 : 2017 年 05 月 07 日

遺伝子検査とは

遺伝子とは、大雑把に表現すると、DNAにコード(記録)されている生命体の遺伝情報のことです。細胞が分裂する際、遺伝子が集まって染色体を形成します(私たちヒトの場合46本)。「染色体検査」や「遺伝子検査」という言葉がありますが、これらは広い意味では同じく遺伝子を調べる検査です。

では、染色体と遺伝子はどのように違うのでしょうか。染色体とは箱であり、その中に折りたたまれて入っている中身が遺伝子である、と考えるとイメージしやすいでしょう。つまり、染色体検査とは、その箱(染色体)の数が多かったり少なかったり、あるいは途中でこわれたりしていないかどうかなどを調べるものです。これに対し、遺伝子検査とは箱の中身(遺伝子)をミクロのレベルで調べる検査です。そのため、染色体検査で異常がなくても、遺伝子検査で異常がある場合があります。

無精子症の原因となる遺伝子―Azoospermic-factor(AZF)領域について

近年、様々な分野で遺伝子の研究や臨床応用が試みられています。男性不妊の分野では、「Azoospermic-factor(AZF)領域」という遺伝子が無精子症と関係していることが近年明らかになりました。このAZFは、男性の性染色体であるY染色体上に存在し、この領域が欠失(一部が失われること)していると、非閉塞性無精子症(精子の通り道が詰まっているわけではないのに、射出精液の中に精子がいない状態)となります。

無精子症の患者さんの中で、このAZF欠失は5~10%程度存在すると言われています。染色体検査ではこのごく小さな欠失は見つけられないので、染色体の形は正常と判断されますが、遺伝子検査を行うと欠失していることが分かります。

AZF領域は、さらにAZFa, AZFb, AZFcと3つの領域に分かれており、このうちどれが欠失しても無精子症となります。AZFaまたはAZFbが欠失している場合は、たとえ精巣内をくまなく探したとしても精子がいないことが現在分かっています。そのためAZFbが欠失している場合、残念ながら顕微鏡下精巣内精子回収術(Micro-dissection Testicular Sperm Extraction: Micro-TESE)を用いたとしても、回収すべき精子自体がおらず、子供を授かることはできません。

一方で、AZFcの欠失の場合は精巣内には精子がいる可能性があり、Micro-TESEのを用いる対象となります。ただしその後に顕微授精を行って男児が生まれた場合、ほぼ確実にAZFc欠失が伝播(子に受け継がれる)します。つまり、生まれてきた子も無精子症となる可能性が高くなります。そのため、治療を行う場合は十分に説明を受け、熟慮して判断する必要があります。

AZFは、現在唯一有効な精子回収予測因子(精子が回収できるかどうかを判断するための明確な根拠)であり、非閉塞性無精子症でTESEを行う場合、精子回収の見込みのない患者さんに手術を行う(無駄な手術となってしまう)ことを回避するためにも重要な検査です。

採血で調べることができる遺伝子検査キットもありますが、まだ日本国内では十分には普及しているとは言えません。しかし、一部の施設で保険外診療により検査は可能となっています(横浜市立大学附属市民総合医療センターの例では35,000円程度)。今後、遺伝子検査が一層普及することが期待されています。

 

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