インタビュー

クラインフェルター症候群の原因、治療、合併症など

クラインフェルター症候群の原因、治療、合併症など
黒田 晋之介 先生

横浜市立大学市民総合医療センター 生殖医療センター/泌尿器科

黒田 晋之介 先生

湯村  寧 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディ...

湯村 寧 先生

この記事の最終更新は2015年08月28日です。

クラインフェルター症候群とは。性染色体異常が原因の男性不妊症」では、これがどのような病気なのかについて詳しくご説明しました。この記事では、クラインフェルター症候群に関するよくある質問にお答えします。横浜市立大学附属市民総合医療センター生殖医療センター部長の湯村寧先生ご監修のもと、みなと赤十字病院泌尿器科の黒田晋之介先生にお話をうかがいました。

クラインフェルター症候群は染色体の数に異常がある病気です。原因は両親から染色体を半分ずつもらうときに、何らか原因でX染色体が2本以上となり、全体で47,XXY(もしくは48,XXXY、49,XXXXYなど)という染色体になります。無精子症となることが多いため、自然妊娠は難しく不妊治療が必要となりますが、体外受精などで挙児を得る(子どもを得る)場合、一般的にはクラインフェルター症候群が遺伝する確率は低いと言われています。

染色体異常に対する根本的治療はできませんが、男性ホルモン欠乏による諸症状は男性ホルモンを定期的に投与することである程度改善させることが可能です。男性ホルモンは2-4週間に1度、病院へ通院して筋肉注射をします。男性ホルモン投与によりホルモン欠乏によるだるさある場合はそれが取れて元気になったり、筋肉量の維持がしやすくなったり、健全に生活を送るための補助を行うことが出来ます。また男性ホルモンを適切な時期から投与開始することで外性器の成長や発達遅延をある程度助けてあげることができると言われています(但し不妊症が改善するわけではありません)。

副作用は重篤なものは殆どありませんが、ナトリウムや体液が貯留する可能性があり心臓や腎臓が悪い場合は慎重投与となっています。また血球増加作用で赤血球増多症となることがあります。前立腺癌がある場合は投与できない(前立腺癌は男性ホルモンによって刺激され増殖します)ため、成人男性の場合は必ず定期的な前立腺癌のチェックが必要となります。

男性ホルモンの補充は泌尿器科で行う場合もありますし、ホルモンなど内分泌の専門である内分泌内科でも受けることが出来ると思います。不妊症に対する治療(精子回収術)は泌尿器科で行います。

クラインフェルター症候群の合併症はおもに男性ホルモン欠乏によるものと、悪性腫瘍など先天的なリスクによるものがありますが、生活で注意して合併症を起こさないようにするのはなかなか難しいと思います。男性ホルモンが少ないため筋肉がつきにくいので、筋力トレーニングである程度予防することができるかもしれませんが、基本的には病院で男性ホルモンの投与が必要です。

悪性腫瘍の頻度が高い(男性乳癌は一般成人の20-50倍)ことに対しても、生活上注意して起こらなくなるようなことではないため、やはりこちらも定期的な通院・チェックが大事だと思います。以上から、クラインフェルター症候群の早期の診断と専門医への通院が、一番いい方法ではないかと思います。

小児期から知的障害や言語発達遅延を認める場合がありますが、一般的には染色体検査を受けない限り、思春期以前にクラインフェルター症候群を特異的に疑う症状はなく、診断することは難しいとされています。典型的には思春期以降に声変わりがない、すね毛や恥毛など体毛が生えてこない、外生殖器が発達しない(とくに精巣が小さい)、などの症状が見られます。

長身でなで肩、四肢が長いという身体的特徴があり、女性化乳房を認めることもあります。生殖活動は多くは正常に行うことができますが、無精子症となることが多いため男性不妊症になります。しかし典型的な症状がなく、不妊症となって初めて診断されるケースも多い病気です。

海外の報告によると、クラインフェルター症候群では言語IQが5-10程度低下すると言われ、47,XXYよりも48,XXXYや49,XXXXYの方が一般的にはより重度の障害を認めると言われています。また社会的な適応能力が低かったり、広汎性発達障害の頻度が高いという報告もあります。しかし多くの場合は染色体正常の人と同様の学歴を送っています。ご両親は定期的に通院している主治医の指示に従い、お子様の定期的な全身フォローアップをお勧めします。

クラインフェルター症候群ではステロイドホルモンである男性ホルモンが低値であることが多いですが、ステロイドの投与で症状が悪化することは通常ありません。ただしクラインフェルター症候群の人に限らず一般的に、ステロイドホルモンの多量投与で全身のホルモンバランスが一時的に崩れる可能性はあります。

クラインフェルター症候群では二次性徴が遅れたりあまり無かったりするため、いわゆる身体の男性らしさが少ないことがありますが、そのことが性同一性障害を引き起こすということはありません。クラインフェルター症候群は染色体の数異常で起こる疾患ですが、性同一性障害は身体が男性でも心は女性、といった脳あるいは心の疾患であり、原因が異なります。一般的にはクラインフェルター症候群では染色体数が正常な人と比べて発達障害を来たすことが多いことが分かっていますが、性同一性障害を起こす頻度はあまり変わらないと言われています。

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  • 横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員

    湯村 寧 先生

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