概要
クラインフェルター症候群とは、性染色体の数の異常による生まれつきの病気です。
性染色体は、通常男性では“XY型”とXとYの染色体が1つずつであるところ、X染色体が1つ以上過剰となり“XXY型”や“XXXY型”になることで、さまざまな臨床的な問題を生じる状態を指します。
原因
性染色体は私たちの性別を決めるうえで重要な役割を果たし、“XY型”となれば性別は男性となり、“XX型”となれば性別は女性となります。クラインフェルター症候群では、X染色体が1つ以上過剰であることが原因です。また、X染色体の数は多いですが、Y染色体の有無が男性となることを決定するため、患者の性別は男性です。
なぜ過剰なX染色体をもつのか、その原因ははっきりしませんが、受精卵のもととなる精子や卵子を形成する際に問題が生じると考えられています。両親が高齢になることでリスクが増えるという論文がありますが、それに対し否定的なものもあります。
また、受精卵が形成される過程で問題が生じるので、いわゆる“遺伝”はしません。クラインフェルター症候群に罹患した子どもをもつ両親が次の子どもを考えたときに、この病気の子どもが再び生まれる確率は極めて低いと考えられます。
同様に、クラインフェルター症候群に罹患した人が子どもをもった際に、この病気の子どもが生まれる確率も極めて低いと考えられます。
一方、男性の染色体異常による病気としては最多であり、500~700出生に1人と考えられています。ただし、実際に診断がついている人の割合は2,500人に1人ほどとされています。したがって、診断がついているのは全体の1/4ほどで、残りの3/4の患者は診断がついていないと考えられています。
症状
性染色体の数の異常により、精巣(男性の性腺)が充分に機能しないことが多いです。本来くるはずの思春期(二次性徴)の発来の遅れ、無精子症などが生じます。
男性ホルモン産生の低下は、乳房の発達(女性化乳房)や細い手足など、女性らしい体形をもたらします。さらに、知的障害、悪性疾患(がん)、骨粗鬆症、自己免疫性疾患などを伴うことが一般の人よりも多いとされています。
過剰なX染色体の数が多いほど、外見的な変化や知的障害の程度が大きくなるとされています。
ただ、これらの症状は日常生活で気付かれないことも多く、クラインフェルター症候群の多くは、不妊の検査や性腺機能低下症の治療中に気付かれることが多いです。このため、前述したとおり診断されている人の割合が少ないとされています。
検査・診断
クラインフェルター症候群の診断は、染色体数の異常を調べる検査で可能です。これは血液検査で調べることができます。
一方、胎生期(母体妊娠中)に、ほかの病気を疑って行った羊水検査で偶然診断がつくこともあります。
治療
クラインフェルター症候群は、染色体異常による病気であるため、病気を根本的に治す方法はありません。生じている症状に対応して行う対症療法が中心です。
男性ホルモンの不足に対しては、テストステロンという男性ホルモンを投与します。通常月1回の注射で、男性らしい体つきや骨密度の上昇が期待できます。
一方、無精子症や乏精子症に対して、現在の医療では精子をつくる、あるいは増やす治療法はありません。しかし近年では、生殖医療の発展とともに、精巣から直接残存した精子を採取する技術などが発展し、以前に比べ生殖補助医療のもと妊娠できる患者が増えています。
また、軽度な知的障害や言語発達遅延に対しては、小児期から言語訓練などを行うことがあります。
予防
先天性の染色体異常に起因する病気であり、予防法はありません。
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