インタビュー

精巣内精子回収術(2)―2つの術式はどのようなもの?

精巣内精子回収術(2)―2つの術式はどのようなもの?
湯村  寧 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 部長 田園都市レディースクリニック

湯村 寧 先生

精巣内精子回収術(1)―概要、合併症、料金について」では、精巣内精子回収術全般についてご説明しました。この記事では、これがどのような術式なのかについて詳しくご説明します。引き続き、男性不妊治療のスペシャリストである、横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 部長の湯村寧先生にうかがいました。

精巣内精子回収術(TESE)とは

TESEには大きく2つの術式があります。

精巣内精子回収術

1:Conventional TESE (Simple TESE)

陰嚢を切開し精巣を露出させ、精巣に3〜5mm程度の切開をおきます。そこで精巣を軽く圧迫しますと中の組織(精細管)が出てきます。これを取り出して精子を探します。多くの施設では胚培養士さんがその場で精子を探し、精子の存在を確認できればあらかじめ卵が取っておいてあれば直接顕微授精を行うか、凍結保存しておいて後日顕微授精を行います。

精子が存在する可能性の高い患者さん(閉塞性無精子症や射精障害など)に行われる治療です。

閉塞性無精子症ではまず精路を再建(道を作り直す)することを行うのですが、残念ながら再建が上手くいかなかった、精子が精液中に出てこなかった、という場合もあります。以前はその場合、手術を後日やり直していたのですが、最近では再建術時にこの方法を用いてBackupとして保存しておき再建がうまくいかなかなった場合にこれをもちいて顕微授精を行う事が可能です。
また、閉塞性無精子症と分かっていても精管の欠損などで再建出来ない方にも本方法は有効です。

こちらの場合は精巣の傷は小さいので何回か行うことが可能です。精子は通常100個単位で回収可能です。私たちの施設でもこの方法を用いてお子さんをお二人作られた方もいらっしゃいます。

2:Micro TESE (Microdissection TESE)

陰嚢を切開し精巣を露出させるところまでは1と一緒ですが、こちらは精子が存在するのかしないのか、分からない方を対象に行う治療法です。

対象となる患者さんは、以下のような方です。

  • 非閉塞性無精子症の方
  • 精子死滅症(精子は精液中に存在しますが全く動いていない)の方
  • 重度の乏精子症の方(一般には100万/ml以下とも500万/ml以下とも言われています:ただ射出精子でのICSIの方が成績が良いという報告もあり、結論は出ていません)

Conventional TESEの場合は精子がいるという前提で精巣を切りますのでランダムに切開しても精子は回収できますが、Micro TESEでは積極的に精子のいる精細管を探さなくてはなりません。

精細管

総論のコーナーでもお話ししましたが、精巣内には太さ0.3〜0.5mm程度の細い管が折りたたまれるようにして入っています。この中には精子の元となる精粗細胞やこれらが分化した精母細胞・精子細胞が存在しています。

造精機能(精子を作る機能)が低下している患者さん、とくに非閉塞性の無精子症の患者さんでは精巣内全ての精細管が精子を作っているわけではありません。おそらく精子を作っている精細管はほんのわずかだと思われます。

精子を作っている精細管には精粗細胞・精母細胞・精子細胞が存在しているはずです。外見上は作っていない、細胞成分が中に詰まっていない精細管に比べれば太く、かつ白っぽく見えます。蛇行していることが多い、とも言われています。しかし前述したとおり精細管はとても細いので、肉眼ではその判定は出来ません。判定のためには医療用の拡大鏡(顕微鏡)を用いて、精細管を探索します。精子のいそうな精細管を切除し、胚培養士さんがその場で精子を探し、精子の存在を確認できれば、直接顕微授精を行う(あらかじめ卵が取っておいてある場合)か、凍結保存しておいて後日顕微授精を行います。

Micro TESEでは精巣全体を探索しますので、Conventional TESEと異なり、精巣を大きく切開する必要があります。ただ、精子を作っている精細管はそれほどたくさんあるわけではなく、残念ながら探索しても精子が見つからない場合もあります。また精子も多くて数十個単位での回収であり、そのうえ精巣を大きく切開し精巣全体を探索しますので何回も手術はできません。精子を発見できる可能性は施設によっても異なりますが、30〜40%と言われています。

Micro TESEについては、「手術前に精子がいるのかいないのか分かる検査はないのか?」という質問をよく受けます。血清FSH、精巣容積、年齢など多くの因子が候補に上がり報告もされていますが、現在のところ認められている因子は染色体異常のなかではXX male (男性でありながら染色体が46,XXである)と、遺伝子検査であるY染色体微小欠失のうちAZFa,bの欠失のみです。

AZFcは欠失していても精子が存在する可能性はありますが、AZFa,b欠失については精子は作られていないといわれています。XX maleは初めからY染色体がないので精子を作ることが出来ないといわれています。

 

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