基準値・基準範囲(出典元:エスアールエル詳細)
目次
卵胞刺激ホルモンとは、脳の下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンの一種です。それぞれの性腺(卵巣・精巣)を刺激して性ホルモンの分泌を促進することで、女性の場合は卵巣を刺激して卵子の成熟を促し、男性の場合は精巣を刺激して精子の形成を促します。検査では血中濃度が調べられ、一般的にはFSHと表記されます。
卵胞刺激ホルモンの量を調べることで、卵巣や精巣から分泌される性ホルモンの分泌異常によって引き起こされる症状の原因がどこにあるのか推測することができます。具体的には、無月経、不妊症、多嚢胞性卵巣症候群、下垂体腺腫などの病気が疑われる際に調べられる検査項目です。
卵胞刺激ホルモンは性腺を刺激して性ホルモンの分泌を促しますが、卵胞刺激ホルモン自体の分泌は視床下部から分泌される卵胞刺激ホルモン放出ホルモンによって促されます。視床下部には性ホルモンの血中濃度を感知するはたらきがあるため、性ホルモンの分泌が増加すると卵胞刺激ホルモン放出ホルモンの分泌量が低下し、卵胞刺激ホルモンと性ホルモンの分泌が抑えられます。逆に、性ホルモンの分泌が低下すると卵胞刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が増加して性ホルモンの分泌が増加します。このため、卵胞刺激ホルモン値を調べることで、性ホルモン分泌が異常をきたしている原因が性腺と脳のどちらにあるのかを推測することが可能です。
また、女性の場合は、排卵期の値の変化を調べることで正常な排卵が生じているかを調べることもできます。
卵胞刺激ホルモンは、上で述べたような症状がある場合や病気が疑われる際に行われる検査です。初診時に性ホルモンの分泌状態を調べるために行われることが多く、病気のスクリーニングや鑑別診断を目的として行われます。この検査結果のみで病気を特定することはできません。
また、病気が確定して治療や経過観察を行うなかで、治療効果や病状を判定する目的として検査が行われることもあります。
卵胞刺激ホルモンは血液検査によって測定されます。検査結果は検査前の食事や運動などの影響を受けないため、注意すべきことは特にありません。
ただし、女性の場合は卵胞刺激ホルモンの値は月経周期によって異なり、排卵期前に急激に増加します。このため、基礎値を調べるには月経3~7日目が最適とされていますので、月経がある方は開始後3日ほどで検査するとよいでしょう。
女性の場合は普段から基礎体温の記録をとり、初診時に1~2周期ほどの記録を持参すると診療がスムーズに進むこともあります。
また、検査では採血が必要となりますので検査当日は前腕部が露出しやすく、腕の締め付けが少ない服装を心がけるようにしましょう。
卵胞刺激ホルモンは通常の採血によって採取された血液を用いて測定します。このため、検査自体は採血さえ滞りなく終了すれば、短時間で終えることができます。
また、採血時には若干の痛みはともないますが、一瞬の痛みであることがほとんどです。
卵胞刺激ホルモンは、性別や性周期、年齢によって基準値が異なり、それぞれ以下の通りです。
ただし、基準値の範囲は検査を実施した医療機関や医師の見解によって異なることもあります。検査結果については自己判断せず、担当医の判断に委ね、その後の精密検査や治療の必要性などについてよく話し合うようにしましょう。
卵胞刺激ホルモンの異常は、卵巣や下垂体の機能に異常があることを示唆します。具体的には、異常高値の場合は卵巣機能が低下していること、異常低値の場合は下垂体や視床下部の機能が低下していることが推測されます。
しかし、卵胞刺激ホルモン値のみで病気を確定させることはできないため、検査で異常値がみられる場合には病気を確定させるための精密検査が行われます。
精密検査の内容は疑われる病気によって異なりますが、ホルモン刺激テストなどの血液検査や、卵巣や子宮の状態、脳の状態を調べるための超音波検査、CTやMRI検査といった画像検査などが主に行われます。
また、病気が確定した後、治療や経過観察を行う際に定期的な検査として行うケースでは、前回の検査と比べて明らかに異常な数値が検出された場合、治療方法の変更や治療の開始・再開などを検討することがあります。
卵胞刺激ホルモン値の異常は性ホルモン分泌に異常をきたしていることを意味するため、目立った自覚症状がない場合でも医師の指示通り検査・治療を受けるようにしましょう。また、治療や経過観察を開始した後も日頃から基礎体温の記録をつけて正常な排卵が生じているかをチェックし、ストレスや過労などホルモン分泌に異常を来たすような要因をできる限り排除することも大切です。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。