不妊治療での妊娠率は、排卵日のタイミングを計るタイミング法では1周期あたり約5%といわれています。また、体外受精などの高度生殖医療(生殖補助医療)であれば、一般的にこれを大きく上回る妊娠率となっています。しかし、高度生殖医療(生殖補助医療)においても年齢が低い方のほうが妊娠の可能性が高くなるため、特に高年齢(30歳代後半以降)になってきている方は早めの治療が望まれます。
今回は、田園都市レディースクリニック理事長の河村 寿宏先生に、不妊治療で妊娠する確率についてお話しいただきました。
不妊治療の種類により、妊娠する確率は異なります。たとえば、1年以上自然妊娠しなかったカップルがタイミング法により妊娠する確率は、1周期あたり約5%といわれています。また、人工授精の場合は、数%~10%とされています。
一方、日本産科婦人科学会から報告された2019年の全国統計によると、胚移植あたりの妊娠率は新鮮胚移植の場合、体外受精で23.1%、顕微授精(射出精子)で18.7%、凍結胚の場合、35.4%となっています。採卵したその周期に新鮮胚ですぐ移植するより、凍結胚を採卵の翌周期以降に移植するほうが、妊娠率は高くなります。
体外受精に代表される高度生殖医療(生殖補助医療)は、不妊治療の中でも比較的妊娠成立の確率が高い方法です。しかし、高度生殖医療(生殖補助医療)の妊娠率を年齢別に見てみると、34歳以下と40歳以上では成功率に大きな差があります。実際に34歳以下で体外受精を行った場合の妊娠率は、日本産科婦人科学会の全国統計では胚移植あたり40%以上であるのに対し、40~44歳では10%台~20%台、45歳以上では数%にとどまります。
体外受精で採卵を行う方のピーク年齢は40歳ですが、そのうち胚移植の段階まで行える方のピーク年齢は39歳です。さらに出産のピーク年齢は35〜39歳となっています。卵子を採取できても子宮に胚移植できない方は多くいらっしゃいますし、胚移植することができても妊娠が成立し出産するケースは、どうしても年齢が若いカップルに傾いてしまうというのが現状です。
不妊治療の1つに卵子提供があります。卵子提供とは、第三者であるドナーから卵子の提供を受けるというものです。ドナーの卵子とカップルの男性の精子を体外受精で受精させ、胚をパートナーの女性の子宮に移植します。日本では卵子提供は原則的には行われていません。例外として最近、ターナー症候群や、病気で卵子がなくなった方に対して卵子提供が始まったようです。この場合も高年齢が不妊原因となっている方への卵子提供は認められていません。
一方で、アメリカなどでは近年すでに卵子提供による不妊治療が行われています。
とはいえ、体外受精を行っているカップルのうち、年齢が若いカップルはあえてドナー卵子を使うことはありません。通常、ドナー卵子を使うことが増えるのは、年齢が30歳代後半以降のカップルです。
卵子提供では文字どおり他者の卵子を使って体外受精を行いますが、ご本人が高齢で、若い方から卵子を提供された場合の妊娠率は次のグラフのとおりです。
このように、提供卵の場合は高齢の方でも妊娠率がほとんど低下しません。裏を返せば、加齢に伴う妊娠率の低下の原因は、ほとんどが卵子の質の低下、特に染色体異常卵の割合の増加によるといえます。
卵子提供と同様に、第三者であるドナーから精子を提供してもらう精子提供も存在します。
日本では提供精子を用いた人工授精(AID)が50年以上前から一部の施設で行われています。この治療の実施には条件があり、原則的に無精子症の場合に限られます。また、現在では、精巣内精子を用いた顕微授精により妊娠可能となってきたため、最近はAIDの実施条件をさらに厳しくし、無精子症の中でも精巣内精子が存在しない場合、すなわちAID以外で子どもを持つことが本当に不可能な方に限定されるようになってきています。
精液所見は、年齢が上昇するとともに低下していきます。そのため、男性の年齢が上がることにより、女性が妊娠に至るまでにも時間を要するようになります。20歳代の男性の場合、妊娠を望んでから、妊娠までの平均期間は半年程度です。しかし、30歳代になると10か月程度となり、40歳代半ばになると1年半以上、50歳代の男性になると2年半以上になります。
上のグラフから、男性の年齢が上昇すると、女性が妊娠するまでの期間が長くなるということが分かります。
男性の年齢の上昇と流産率は、女性と同様に関係しています。以下のグラフに示されているように、男性の加齢に伴い、流産率は上昇していくということが分かります。
不妊治療は同じ治療法であっても、内容や施設により金額の差が生じます。当院における費用の目安は以下のとおりです。
<体外受精>
(いずれも自由診療、税別)
上記の体外受精の費用には採卵、精子処理、媒精、培養、胚移植などに必要な材料費が含まれます。なお、体外受精の費用は、3回目の採卵からは40,000円減額、5回目からはさらに40,000円減額となります(完全自然周期では、3回目から20,000円減額、5回目からはさらに20,000円減額)。
採卵に至るまでに、通常、検査費用(超音波検査、ホルモン検査)として、30,000〜50,000円程度、注射の排卵誘発剤使用の場合の薬剤費用として50,000~100,000円程度が上記費用に加算となります。
なお、体外受精などの高度生殖医療(生殖補助医療)には公的な助成制度である「特定不妊治療費助成制度」があります。金額などは各自治体によって異なりますので、ご自身が居住されている自治体に確認しましょう。
また、体外受精には以下のようなリスク・問題点があります。
田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長
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