田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長
河村 寿宏 先生
横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディ...
湯村 寧 先生
数年前から、不妊に関してマスメディアが取り上げる機会が増え、不妊についての理解や知識が広がり始めました。そして、近年では、カップルの不妊の原因の半数は男性であるという知識が普及し始め、田園都市レディースクリニックにも不妊原因が自分にあるかもしれないと思って訪れる男性が増えているそうです。
また、女性の負担を少しでも軽減させたいということから、カップルで協力して不妊治療に臨むというケースが増加しています。
今回は、田園都市レディースクリニック理事長の河村寿宏先生と、田園都市レディースクリニックで男性不妊外来を担当する湯村寧先生に、男性不妊の種類と原因、検査方法や治療法についてお話しいただきます。
近年、日本人カップルの6組に1組は不妊症ともいわれています。不妊の原因が女性、男性どちらにあるのかを調べた結果が下のグラフです。
WHOの調査によると、不妊の原因が女性のみの場合が41%、男性のみは24%、男女双方が24%、原因不明が11%となっており、不妊カップルの2組に1組は男性側にも原因があることが分かります。このような事実は、比較的最近まで、ご存じない方のほうが多かったと思います。しかし、潜在的に男性不妊の方は多数おり、男性の十数人に1人は不妊症ともいえます。男性不妊は決して特殊で珍しいことではないのです。
2016年に湯村先生が班長を務めた男性不妊に関する厚生労働省の調査の結果では、男性不妊の種類は、
の3つに大きく分けられることが分かりました。
造精機能障害は、男性不妊の中でもっとも多い原因であり、男性不妊全体の85%以上を占めています。精巣の調子が悪く精子を造ることができない、造りにくい、あるいは造れたとしても状態のよい精子(運動率が高いなど)ではないといったもののことをいいます。
病気としては
などがあります。
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性機能障害とは、ED(勃起不全)や腟の中で射精ができないなどの射精障害のことをいいます。割合としては造精機能障害の次に多く、男性不妊の13.5%ほどとなっています。
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男性不妊の残りの3%ほどが、精路閉塞障害です。
精路閉塞障害とは、精巣内で精子は造られているのに、何らかの原因により、精子の通り道が塞がってしまっている病気です。精子の通り道が塞がってしまっているため、射精した精液に精子がない状態(閉塞性無精子症)です。
精路閉塞障害の主な原因としては、
などがあります。
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*先天性両側精管欠損症…先天的に精管が欠損している病気。
**精巣上体炎…精巣の後側の管である精巣上体が炎症を起こす病気。発症する原因は細菌などの感染。
男性の不妊原因は不明の場合も多いですが、
などが診察、検査によって見つかることがあります。
また、思春期以降でおたふく風邪の既往歴がある方(過去に発症したことのある方)も精液所見が不良になる場合があります。
日常生活においては、
などが影響するともいわれています。
造精機能障害を起こす原因として分かっているものは、精索静脈瘤です。精索静脈瘤とは、精巣から心臓に戻る静脈内の血液が逆流することによって、精巣のまわりに静脈の瘤(こぶ)ができる病気です。
男性不妊症患者さんの約40%が精索静脈瘤と診断されています。精索静脈瘤がある場合、血液が本来流れる方向とは逆の方向に流れるため、血液が停滞し精巣の温度が上がります。そして、造精機能が低下し、不妊へとつながってしまいます。
そのほかに、思春期以降におたふく風邪を患った経験がある方や、遺伝性の病気、薬剤の影響、特殊なホルモンの異常、喫煙、肥満なども男性不妊のリスク要因となっていると考えられています。
最近では、がんの治療として、抗がん剤を使用することで、精子を造る能力が低下するということが分かっています。
歳を重ねるにつれて女性の卵子が老化していくように、男性の精液所見も低下していきます。精液所見である精液の量、運動率、総運動精子数を年齢別に調べたものがあります。
その結果、これらの項目では、年齢が上がるにつれて所見は低下しており、20歳代の方と50歳以上の方を比較すると、約半分ほどになっていることが分かりました。妊娠するためには男性の加齢も無視できないことを示しています。
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男性不妊の検査には、以下のようなものがあります。どの検査も身体的な痛みを感じることはほとんどありません。しかし、まれに、精巣診察をする際に緊張から気分の悪さを訴える方がいらっしゃいます。
一般的には、2~7日の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取していただきます。そして、精液量、精子の濃度、運動率、正常形態率など精液の所見を調べます。
血液を採取し、ホルモン(LH、FSH、PRL、男性ホルモン)、クラミジア抗体などを検査します。
精液検査で異常があった場合は、精巣やその周囲の診察、超音波検査を実施します。
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当院では開院してから18年目を迎えます。開院当初から男性不妊の治療の重要性を認識していました。そのため、受診してくださっている女性側からパートナーへの協力を呼びかけてもらい、精液検査は、不妊検査の中でも、最初に行っていただく検査としていました。
それでも、2人でクリニックを訪れる方や男性が積極的に不妊治療に取り組まれるというケースは今ほど多くはありませんでした。
しかし2017年現在は、多くの患者さんの仕事がお休みである土曜日の外来時には、カップル2人で治療に来られる方が多数いらっしゃいます。また、受付のスタッフからの話ですと、初診の予約をする電話の時点で、男性からかけてこられるというケースも増加傾向にあるようです。
このように、男性の不妊治療に対する意識が変化しつつあり、ご自分の体としっかり向き合い、女性と協力しながら不妊治療を受けようという考えが少しずつ浸透してきているといえます。ですが、いまだに不妊の原因が男性側の場合も多いという事実を知らない方もいらっしゃいますので、今以上に啓発していく必要があると感じています。
また、もし精液所見に問題が見られなかった場合でも、女性側の不妊治療をステップアップさせていくためには(人工授精から体外受精へなど)、男性の血液検査も必ず必要になります。そういったことまでを含めると、当院では、まったく病院に足を踏み入れない男性のほうが最終的には少なくなっています。
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射精ができるかできないかなどの男性特有の機能は、女性側からするとなかなか理解できないことでもあります。また逆に、女性特有の機能の問題は、男性には分かりづらい点も多くあります。そのため、男性不妊を取り扱う泌尿器科単独、女性不妊の婦人科単独で行っていると、どちらか一方の専門性だけに偏ってしまい、男女の体の差によって起こるカップルの問題に、施設側がスムーズに介入できないという問題点が発生します。
そこで当院では、男性不妊専門の男性不妊外来を設けることで、女性不妊治療の専門医と男性不妊治療の専門医が意見を交換しながら患者さんの診療にあたっています。そうすることで、女性・男性どちらの立場も考慮しながら、患者さんと一緒に治療方針を決めることができると考えています。
実際に男性不妊外来に来られる患者さんを診ていると、「男性不妊がよくなることはなく、ご自身の精子でお子さんをつくることはできない」というイメージを持っている方も少なくありません。しかし、そのようなことは決してありません。私たちのような男性不妊治療専門医が不妊治療全体に介入することで、精液所見が向上し、妊娠までの速度を速めることが可能です。初めは精液所見が不良だった患者さんが、薬物療法や生活習慣を見直すことで、ご自身の精子により妊娠に至るというケースを幾度となく診てきました。
男性の不妊治療というと、どんな検査や治療をされるのか分からず、不安な面もあると思います。ですが、身体的に痛みを伴う検査などもほとんどありません。また、食生活の改善や運動をするなど、少しの生活習慣の改善でも精液所見はよくなっていきます。特別な治療ではなく、普段の生活の中から変えていく方法を聞きに来られるだけでも大歓迎です。現在不妊症に悩まれている、または、不妊症ではないかと心配されている男性は早めの相談をおすすめします。
なお、受診を決めている方は以下の予約専用ダイヤルにてお問い合わせいただけます。
受付時間:月〜金:9:00〜18:00 、土:9:00〜17:00 、日:休診
田園都市レディースクリニック
田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長
横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員
河村 寿宏 先生の所属医療機関
横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員
日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・泌尿器科指導医日本生殖医学会 生殖医療専門医日本癌治療学会 会員日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医(泌尿器科)の一人であり、男性不妊治療の専門家。横浜市の不妊相談などを担当し、男性不妊の啓発活動に努めている。また、横浜市立大学附属市民総合医療センターの生殖医療センター部長を務める。同センターは泌尿器科、婦人科に日本生殖医学会認定 生殖医療専門医(泌尿器科)が在籍しており、パートナーと一緒に治療を受けられる神奈川県内の施設である。
湯村 寧 先生の所属医療機関
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