ていりゅうせいそう

停留精巣

監修:

概要

停留精巣とは、胎児期の発達の異常により精巣が正常な位置である陰嚢*内ではなく、鼠径部(足の付け根)やお腹の中などに位置している病気のことです。

精巣の元となる器官はお腹の中で発生し、発達に伴って鼠径管と呼ばれる管を通過して陰嚢まで下降していきますが、この発達過程に異常が生じることで精巣が陰嚢まで下降せず、停留精巣を発症します。この症状は新生児の約5%にみられ、生後6か月までは自然に陰嚢内に下降する可能性がありますが、自然下降がみられない場合は手術による治療が必要となります。また、停留精巣は将来的な生殖能力の低下や、がん化のリスクを伴うため、1歳前後から2歳頃までに手術を実施することが推奨されています。

*陰嚢:精巣(睾丸)を包む袋状の構造。

原因

精巣は本来、胎児期にお腹の中で発生し、その後鼠径管を通過して陰嚢内まで下降するのが正常な発達過程です。しかし、胎生期の発達異常によってこの下降過程が途中で妨げられると、停留精巣が発生します。現在のところ、停留精巣の発症メカニズムは解明されていませんが、早産児や低出生体重児において発症リスクが高いことが知られています。また、男性ホルモンであるテストステロンの分泌異常も、重要な発症要因の1つとして指摘されています。

症状

停留精巣は通常、痛みなどの自覚症状を伴わず、生後6か月以内であれば自然に陰嚢内に下降する可能性があります。停留精巣の約80%のケースでは精巣を足の付け根あたりで触れることができますが、残りの20%ではお腹の中などの手で触れることができない部位に存在します。精巣は本来左右に1つずつ存在しており、停留精巣は片側性または両側性のいずれの形でも発症します。

出生時には男児の約5%にみられる停留精巣ですが、1歳時には1.0~1.7%まで減少するというデータが報告されています。また、停留精巣の場合、精子形成機能の低下による将来的な不妊症のリスクや、精巣がん発症のリスクが高まることが知られています。さらに、停留精巣は精索(精巣につながる血管などが通る管)が捻じれる精索捻転(せいさくねんてん)という合併症を引き起こしやすいのも特徴の1つです。

検査・診断

停留精巣の診断では、まず陰嚢の触診を行い、正常な位置に陰嚢があるかどうかを確認します。停留精巣の可能性がある場合には、精巣の正確な位置や大きさ、血流の状態を詳しく調べるためには、超音波検査による評価が必要となります。また、精巣がお腹の中など手で触れることができない位置にあることが疑われる場合には、MRI検査などの画像診断や、お腹の中に内視鏡を挿入して精巣の位置や状態を直接観察する腹腔鏡(ふくくうきょう)検査が実施されることもあります。さらに、停留精巣では男性ホルモンの分泌異常を伴うことがあるため、精巣機能を適切に評価する目的で、血液中のホルモン値を測定する検査が行われることもあります。

治療

停留精巣は生後6か月頃までは自然に精巣が陰嚢内に下降する可能性があるため、生後間もない時期の治療介入は行わず、1歳前後から2歳頃までの間に治療を実施するのが一般的です。

治療は、異常な位置にある精巣を陰嚢内に移動させて固定する手術が行われます。この病気は治療を行わないと将来的に精巣機能の低下による不妊症や精巣がんの発見の遅れにつながるため、適切な時期での手術実施が推奨されています。ただし、精巣が鼠径部(足の付け根)より上にある場合、精巣組織への影響が高度なケースもみられます。精巣組織障害が強く、陰嚢内への下降が難しいと判断された場合では、精巣の摘出が選択されることがあります。

最終更新日:
2025年07月24日
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2025/07/24
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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