せいさくじょうみゃくりゅう

精索静脈瘤

最終更新日:
2023年02月27日
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2023/02/27
更新しました
2017/04/25
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概要

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)とは、精巣から心臓へ血液を戻す精索静脈の流れが途中で滞ることで、精索静脈がこぶのように拡張する状態を指します。

精索静脈瘤ができると血液の逆流によって陰嚢内の精索静脈が腫れて太くなるほか、精巣内の温度上昇や血流の悪化などによって精巣が影響を受け、男性不妊を引き起こします。

精索静脈瘤は一般男性の15%に認められ、男性不妊の原因としてはもっとも頻度が高く、原因の40%前後を占めるとされています。

精索静脈瘤そのものは健康に影響しないため、治療をしないという選択肢もありますが、適切な治療によって自然妊娠率が上昇し、さらに人工授精、体外受精、顕微授精に対しても成績が向上すると報告されています。

治療は手術が中心で、外科的に逆流している精索静脈を縛って切断したり塞いだりして、血液が逆流しないようにします。手術後は精液所見が改善することが多く、約60~70%の患者さんで自然妊娠が得られるようになるといわれています。

原因

精索は精巣から上方につながる管で、その中に精索静脈と精索動脈が流れていて、このうち精索静脈は心臓へ血液を戻しています。精巣は心臓よりも位置が低いため、精索静脈には弁があり、血液が流れるときに開き、それ以外では閉じて血液の逆流を防いでいます。

しかし、何らかの原因によって弁が正常に機能しなくなると逆流してしまい、その結果として精索静脈が蛇行・拡張してこぶが生じます。また、左腎静脈がほかの血管に挟まれて静脈の圧力が高まることも静脈瘤が起こる原因です。

精索静脈瘤ができると、精巣内の温度が上昇して精子の形成に支障をきたすほか、血流障害によって精液所見が悪化したり精巣が萎縮したりします。このように精巣にさまざまな悪影響が及ぶことから、精索静脈瘤は男性不妊の原因になります。

また、精索静脈瘤は精巣で精子を作る能力の低下、精子のDNA損傷、さらには男性ホルモンの低下を引き起こすため、2人目不妊(1人目の子ども授かった後に2人目をなかなか授かれない状態)の大きな原因にもなります。

症状

精巣から心臓へ戻るべき精索静脈の血液の流れが途中で滞ることで、陰嚢内の精索静脈がこぶ状に腫れて触知できるようになります。特に立位(立った姿勢)でお腹に力を入れると確認しやすく、重度の場合には見た目に拡張した静脈が分かります。痛みや違和感を伴うこともあります。

ほとんどの場合、精索静脈瘤は解剖学的な特徴から左側に起こります。これは左精索静脈が右よりも長く、さらに右精索静脈が下大静脈に直接合流するのに対して、左精索静脈は左腎静脈に直角に合流するためです。

検査・診断

精索静脈瘤の診断は視診・触診および表在プローブを用いた超音波検査によって行われます。お腹に力を入れると静脈が拡張して確認しやすくなるため、一般的にはお腹に力を入れた状態で診察し、重症度を評価します。

重症度はグレード1(軽度:立位でお腹に力を入れたときに初めて触ることができる)、グレード2(中等度:立位での視診・触診で容易に分かる)、グレード3(重度:目で見て明らかに静脈瘤が分かる)に分類されます。なお、手術適応はグレード2やグレード3とされることが多いです。

表在プローブを用いた超音波検査では精索静脈の膨らみや逆流所見など、精索静脈瘤に特徴的な所見が確認できます。

治療

精索静脈瘤の治療では、コエンザイムQ10・亜鉛・Lカルニチン・漢方などの内服薬も補助的に使われますが、基本的には手術が中心です。

精索静脈瘤のある不妊男性は、以下の4つの項目すべてを満たす場合に手術適応とされます。

  1. 夫婦が不妊症を認識している
  2. 妻の妊娠機能が正常、または妻の不妊原因が治療可能な場合
  3. 精索静脈瘤が触知される、または触知が疑われ超音波検査で確認できた場合
  4. 精液所見が悪い場合

また、精液所見が悪く精索静脈瘤のある成人男性でいずれ子供が欲しいと考えている場合や精索静脈瘤があり陰嚢の痛みや違和感がある場合も手術が考慮されます。思春期男性では、片側の精巣サイズが小さくなっている場合に手術が行われます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査(精神的・身体的に成熟している場合)を行います。

東邦大学医療センター 大森病院リプロダクションセンター(泌尿器科)HPより引用】

手術方法としては、腹腔鏡を用いてお腹から精索静脈を縛って精巣への血液の逆流を防ぐ“腹腔鏡下手術”もありますが、この手術ではリンパ管温存ができないため精巣水瘤を合併する可能性があります。一方で、手術用顕微鏡を用いて精索静脈を縛る“顕微鏡下結紮術”は、動脈・リンパ管・神経を確認して温存でき、逆流静脈を結紮できることから主流な手術法となっています。

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