概要
外傷とはいわゆる“けが”のことで、外部からの機械的、物理的、化学的な刺激により、体が損傷を受けることをいいます。
よく見られる外傷としては、擦り傷、切り傷など皮膚や軟部組織(筋肉や脂肪、血管など)のけがが挙げられますが、そのほか骨折や指などの切断、脳、臓器、生殖器の損傷などもあります。体の複数の部分に重度の損傷が生じている場合を“多発外傷”と呼ぶこともあります。
外傷はさまざまな部位に生じ、小さなけがのように数日で自然と治っていく場合も多くありますが、重症で速やかな治療が必要となる場合もあります。時に命に関わることもあることから、救急科、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科などさまざまな診療科が協力して診療することも少なくありません。ここでは主に皮膚や軟部組織などに生じる日常的に遭遇しやすい外傷について解説します。
原因
外傷は外部からの刺激によって生じます。よくある外傷の原因としては、鋭利なもので皮膚を傷つけた場合や転んで地面に体を擦ったり打ったりした場合、動物に咬まれた場合などが挙げられます。
また、重症の外傷の原因としては、交通事故や転落などの不慮の事故、虐待などが考えられます。
症状
外傷の症状は、部位やどのようなけがをしたかによって異なります。すり傷、切り傷、刺し傷、咬み傷、皮膚が裂けた傷といった皮膚や軟部組織の外傷であれば、痛みや出血などの症状が想定されます。神経や腱にまで損傷が及んでいる場合は、筋力低下や麻痺、しびれなどの症状が現れることもあります。
また傷口から細菌に感染し、患部が赤く腫れたり、膿が出たり、発熱が生じたりすることがあります。特に動物に咬まれた場合は細菌が皮下の深い部分まで入るため、感染を起こしやすくなります。
検査・診断
外傷の程度が重症の場合、まず命に関わる重篤な外傷ではないかを確かめます。目立つ傷がある場合でもほかにも外傷がないか確認するほか、呼吸や脈拍、血圧などに異常はないか、神経に異常はないかなど全身状態を把握することが大切です。
また、外傷の原因や症状などに応じて脳や内蔵の損傷がないかCT検査などの画像検査も検討し、目に見えない異常が生じていないかも確認します。
治療
外傷が生じたときは可能な範囲で応急処置をしてから、必要に応じて医療機関の受診を検討しましょう。医療機関では、外傷の内容に応じてさまざまな治療を検討します。
応急処置
傷の部位や程度によって応急処置の方法が異なります。患者以外の人が止血を行う場合、血液にウイルスが含まれている可能性があるため、血液を直接触らないようにしましょう。
すり傷
傷についた汚れを落とすために、流水で傷口をしっかり洗い流しましょう。消毒液を使用することもありますが、汚れや異物がなくなれば、消毒をしなくても化膿せずに治る場合がほとんどです。出血が長引く場合にはガーゼなどで傷を圧迫し、止血を試みましょう。また衣服などと擦れることがないよう、医療用のシールなどで傷を保護するとよいでしょう。深い傷やよく洗っても汚れが取れない傷などが生じていれば、医療機関を受診しましょう。
切り傷
まずは切り傷を流水で洗い流します。傷口をきれいにした後にガーゼなどを当てて止血し、圧迫するように絆創膏などを貼ります。傷口が大きい場合、血がなかなか止まらない場合などには病院を受診しましょう。
刺し傷
浅い刺し傷であれば基本的には通院が不要で、刺さったものを抜いて傷口を水道水で洗浄する応急処置を行います。ただし、感染が起こる場合もあるため、数日して刺した箇所が赤くなってきた場合などには受診が必要です。深い刺し傷の場合には、刺さったものを自分で抜かずに早急な受診が必要です。
咬み傷
咬まれた傷をしっかりと洗浄することが重要です。水道水で傷口をよく洗い流します。動物に咬まれた傷は感染リスクが高く、抗菌薬が必要なことも多いため、速やかに医療機関を受診したほうがよいでしょう。
打撲や捻挫
RICE処置と呼ばれる応急処置がよく知られています。RICE処置とは、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、拳上(Elevation)の4つの頭文字を取ったものです。
外傷を負った直後から患部はもちろん、全身を安静に保ち、患部を40〜60分間隔で1回15〜20分ほど氷や保冷剤で冷やします。またテーピングや弾性の包帯などで圧迫し、心臓より高い位置に患部を持ち上げることも大切です。
医療機関での治療
傷の状態により、抗菌薬などを用いた外用療法や、傷などを覆うための創傷被覆材を用いた被覆療法によるケア、手術療法などが検討されます。
ほとんどの場合、破傷風の予防のために破傷風トキソイドの追加接種が必要になります。前回の接種が5年以上前の際には適応になります。
すり傷
傷が大きかったり深かったりして受診した場合、まずは傷口を洗い、異物をしっかりと取り除きます。時には麻酔をして異物の除去を行うこともあります。傷口をきれいにした後、出血があれば創傷被覆材で傷口を覆い、保護します。膿む可能性や小さな子どもで被覆材を貼っておくことが難しい場合には、塗り薬を使用することもあります。また、傷あとが残った場合は、レーザー治療を検討することもあります。
切り傷
浅い切り傷であれば、よく洗ってから抗菌薬入りの軟膏を使用したり、医療用テープで固定したりすることがあります。深い切り傷の場合は縫合が検討され、汚染の可能性がある場合には抗菌薬の内服なども行われます。
刺し傷
刺し傷の場合は細菌感染を起こしやすいため、基本的に縫合はせず軟膏などで治療します。浅い刺し傷の場合であれば、抗菌薬の内服や軟膏の外用などを行います。膿があるときには切開することもあります。深い刺し傷の場合は、破傷風を起こす可能性を考慮して、破傷風ワクチンの注射を行うことがあります。また、体の中に残った異物の除去、止血、組織の修復、抗菌薬の内服や点滴などが行われます。
咬み傷
咬み傷の治療では、まずはしっかりと傷口を洗浄します。動物の咬み傷や引っかき傷に対しては、感染を防ぐために抗菌薬の処方のほか、破傷風ワクチンの注射などが検討されることがあります。傷の状態により縫合が行われることもあります。また、膿があれば切開して膿を出す治療を行い、手や顔などを咬まれて大きな欠損などを伴う場合は、感染が落ち着いた後に欠損を治す治療が検討されます。
打撲や捻挫
骨折や靱帯の損傷、脱臼がある場合には、それぞれに応じた治療が行われます。
打撲により傷がある場合には傷口を洗浄し異物を除いた後、塗り薬や創傷被覆材を用いた治療が行われます。打撲の箇所が頭や胸、お腹、腰などで、脳や内臓、脊髄などに重大な影響がある場合には、緊急の治療が必要になることもあります。
重症の場合
重症の外傷では、損傷した部位や程度に応じてさまざまな治療が検討されます。指の切断など欠損が生じた際には、状況に応じて再接着術やほかの部位から皮膚を移植する再建術などが検討されます。神経が損傷している場合は神経移植なども検討されます。
実績のある医師
周辺で外傷の実績がある医師
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