はしょうふう

破傷風

神経

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概要

破傷風とは、傷口に感染した破傷風菌がつくる毒素によって、開口障害(口が開けにくくなること)や排尿障害、けいれんなどをきたす病気です。

1968年に破傷風に対する予防接種が導入されて以降、日本における症例は激減していますが、2017年現在もなお感染症法に基づき毎年100例近くの報告例があります。発症した方の多くは予防接種を受けていない45歳以上の成人であり、小児は非常にまれです。新生児破傷風は1995 年の報告を最後に、それ以降報告されていません。

2011年3月に起きた東日本大震災時でも、10例ほどの破傷風症例が報告されており、保健衛生的なインパクトは今もなお重大です。

原因

破傷風菌は、芽胞の形で土壌や動物の糞便中に常在する細菌です。土いじりのときにできる目立たないほどの傷、釘を踏むことによる軽いけが、交通事故などをきっかけとして破傷風菌(芽胞)に感染します。

破傷風の症状は細菌そのものが引き起こすのではなく、破傷風菌がつくる毒素が原因となります。破傷風菌がつくる毒素には、神経毒(破傷風毒素、別名テタノスパスミン)と溶血毒(テタノリジン)の2種類があります。破傷風の主症状である強直性痙攣(けいれん)の原因は、主に神経毒である破傷風毒素によるものと考えられています。

外傷部位に侵入した芽胞は感染部位で発芽・増殖し、毒素をつくりだします。つくられた毒素は、外傷部位付近に存在する末梢神経に吸収され、脳や脊髄まで到達します。毒素は同部位で毒性を発揮し、筋肉がけいれんします。

症状

破傷風の症状は、全身の筋肉にけいれんが生じる「全身性破傷風」が典型的です。感染してから、通常3週間までの潜伏期間を経て、徐々に全身の筋肉に影響が現れます。症状が現れる筋肉・時期に応じて第1期から第4期に分類することができます。

第1期

口が開けにくいことが破傷風の初発症状であることが多く、「開口障害」と呼びます。首筋の張り、寝汗、歯ぎしりなどの症状も現れます。

第2期

開口障害は徐々に強くなり、顔の筋肉がいつもけいれんし、皮肉笑いをしているような顔になります。この症状を痙笑(けいしょう)と呼びます。また、このような顔貌は破傷風顔貌と呼ばれます。

第3期

顔面の筋肉のみならず、首から背中、全身の筋肉に毒素の影響がみられるようになります。その結果、弓を置いたように後頭部と(かかと)しか地面についていないような体勢となります。この姿勢のことを「後弓反張(こうきゅうはんちょう)」と呼びます。

さらに、発作的にけいれんをきたす時期でもあります。突然、手足が強く固まり、全身の筋肉が固くなって身動きがとれなくなる発作を繰り返します。数秒から数分で元に戻りますが、病状の進行とともに時間が長くなっていきます。この発作は光や音、振動といった刺激で誘発されます。

第4期

これまでにみられた症状が、徐々に回復をする時期です。第1期から第3期までの時間経過が短い(48時間以内)ほど経過は悪いといわれています。

検査・診断

破傷風の診断は、典型的な臨床経過(開口障害から始まる症状など)から診断されることが多いです。

また、外傷で汚染された部位を中心として、破傷風菌が存在しないかどうかを確認するための培養検査を行うこともあります。菌を検出できるかどうかに加えて、検出された場合に、その菌が毒素をつくるかどうかを検討します。毒素の証明が行われた場合は、診断がより確実になります。

しかし、実際の臨床現場では、患者さんにはすでに抗生物質が投与されていることも多く、その影響から破傷風菌が死滅していることもあります。この場合には、菌の存在を証明することは容易ではありません。

血液検査から、破傷風菌毒素に対する抗体検査を行うこともあります。

治療

破傷風の治療では、毒素に対する抗体(抗破傷風ヒト免疫グロブリン)を投与します。しかし、病状が進行した状態では治療効果は限定的であり、できる限り速やかに投与することが必要です。

その他、発症時にはさまざまな合併症が出現するため、症状をやわらげる対症療法を行うことも求められます。刺激で発作を起こさないように、暗く、静かな部屋で安静にさせます。呼吸を助けるために、人工呼吸器を使うこともあります。けいれんが起きた場合、けいれん止めの薬を使います。

予防

破傷風を発症すると、治療による救命が叶わないこともあるため、予防が大切です。

予防接種

予防方法には、予防接種があります。日本では、破傷風菌に対する予防接種は、「定期接種(国や自治体が乳幼児に接種を強くすすめている予防接種)」の対象となっています。破傷風以外にもジフテリア、百日咳、ポリオと合わせた4種混合ワクチン(DPT-IPV)が、生後3か月以降に計4回接種されます。

接種してから10年経つと次第に効果が低下してくるため、最後の接種から10年以上経って大きな怪我をした場合、病院を受診し、追加で接種する必要があるか相談をしてください。

日常的な予防方法

日常的な予防方法としては、破傷風菌が体内に入らないようにし、傷ができたときはすぐに流水で十分に洗います。自宅で対応できないような大きな傷や、汚い場所で怪我をしたときは、病院を受診することが大切です。特に破傷風菌に感染するリスクの高い傷には、やけど、泥のついた傷、唾液に汚染された傷などがあります。

病院では必要に応じて傷口を広げて奥の汚れを洗い出します。破傷風の予防接種をしっかり受けていなかったり、最後の予防接種から10年以上経った方の場合には、追加接種という形で破傷風毒素に対する薬を注射することもあります。

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