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不妊症の原因と検査——もしかして不妊症?と思ったときに受診すべきタイミング

不妊症の原因と検査——もしかして不妊症?と思ったときに受診すべきタイミング
大石 元 先生

国立国際医療研究センター病院 産婦人科 診療科長

大石 元 先生

目次
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子どもを持つことを望んでもなかなか妊娠にいたらず、悩む方もいらっしゃるでしょう。不妊症とは、避妊することなく性交渉を続けても一定期間妊娠しない状態をいいます。不妊症の原因はさまざまといわれていますが、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。また、もしも「不妊症かもしれない」と思ったときに受診すべきタイミングはあるのでしょうか。

今回は、不妊症の治療に携わっていらっしゃる国立国際医療研究センター病院 産婦人科 診療科長の大石(おおいし) ( はじめ)先生に、不妊症の定義、原因や検査から受診すべきタイミングまでお話を伺いました。

不妊症とは、男女が避妊をすることなく通常の性交渉を続けたとしても、一定期間妊娠しない状態を指します。この一定期間の目安は、1年とされています(2021年2月時点)。

ただし、妊娠しない期間が1年に満たない場合であっても不妊症と考えるという意見もあります。特に女性の年齢が35歳以上の場合には、半年などを1つの目安に、早めに受診してもよいと考えられています。

不妊症には、さまざまな原因があります。ここでは主に4つに分けて解説します。

排卵がきちんと行われていないことが原因で不妊症となることがあります。このような状態を“排卵因子”による不妊症と呼びます。排卵とは、卵子が卵巣から腹腔内(ふくくうない)に排出されることですが、何らかの原因で排卵が通常どおり行われていないケースがあります。排卵しなければ受精することができず妊娠にいたることがないため、このような排卵の不具合は不妊症の原因の1つになります。

排卵が通常どおり行われない理由はさまざまです。たとえば、月経が通常どおり行われていなかったり、女性ホルモンの分泌に影響を与えるような病気があったりするために、通常どおり排卵が行われていない場合があるでしょう。

男性側に不妊症の原因がある状態を“男性因子”による不妊症と呼びます。たとえば、何らかの原因で精子の数が少なかったり、もともと精子がなかったりするケースがあります。また、精子の数は十分にあったとしても、精子の運動性が良好ではないために受精することができない場合も不妊症につながるでしょう。

卵管とは、女性の体の中にある精子が卵子と出合うための通り道です。また、受精した際には子宮に戻るための通り道にもなります。しかし、この卵管が何らかの原因によって詰まっていると卵管が閉鎖され、精子が通ることができないため卵子と出合えなくなります。このような状態を“卵管因子”による不妊症と呼びます。

卵管は2つあり、片方の卵管が閉鎖されているだけであれば、もう片方の卵管から精子が通ることができるため、両方通っている場合と比べると確率は下がりますが妊娠の可能性があります。ただし、両方閉鎖されている場合には、自然妊娠が難しい状態といえるでしょう。

卵管が詰まる主な原因には、卵管炎などの炎症があります。これらの炎症はクラミジア感染症など何らかの病気によって引き起こされることがあります。また、子宮筋腫卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)の手術後に卵管が詰まることもあるでしょう。これらによって卵管が閉鎖すると、不妊症につながることがあります。

素材提供:PIXTA/加工:メディカルノート
素材提供:PIXTA/加工:メディカルノート

不妊症の中には、上記3つのような明らかな原因が見つからない場合もあります。このような場合は原因不明の不妊症に分類されます。明らかな原因がなくても、女性が高年齢であるために妊娠しづらいケースもあります。また、子宮筋腫や子宮内膜症など、何らかの病変が原因で妊娠しづらくなっている場合もあるでしょう。

女性の年齢による影響も

晩婚化が進んだことが影響しているのか、近年は特に女性の高年齢化による不妊症が増えているように思います。

不妊症には、女性の年齢が大きく関わります。高齢になればなるほど卵子の数は減少していきます。そのため、女性の年齢が高くなるとともに妊娠しづらくなるといえるでしょう。残念ながら約50歳で閉経することを考えると、女性が出産できるタイムリミットは決まっています。ですので、子どもが欲しいという強い希望があれば、特に女性が35歳以上の場合には機会を逃してほしくないので「急いだほうがよい」と伝えています。

不妊症で受診された方には、原因を特定するために検査を行います。主な検査には以下のようなものがあります。これらの検査を組み合わせながら、原因を調べていきます。

  • クラミジア抗原検査……卵管閉塞(らんかんへいそく)など不妊症につながるクラミジア感染症の有無を確認する検査。子宮頸管(しきゅうけいかん)の分泌物を採取し、クラミジア菌の有無を調べる。
  • 子宮卵管造影検査……子宮内の状態や卵管が通っているかなどを確認するために、子宮から卵管に造影剤を注入したうえで撮影する画像検査。
  • 排卵前の頸管粘液検査……頸管粘液の量や性質を調べ、排卵を予測する検査。
  • フーナー検査(性交後検査)……性交渉の後に、女性の頸管粘液の中の精子の量や運動性などを確認する検査。
  • 精液検査……精液から精子の量や状態を調べる検査。

女性の年齢が35歳以上で避妊せずに性交渉を続けたとしても半年妊娠しないようであれば、早めの治療をおすすめします。さらに、もしも女性が30歳代後半や40歳以上で妊娠を希望するようであれば、半年を待つことなく、可能な限り早く受診していただいたほうがよいでしょう。

画像:pixta
画像:pixta

検査によって不妊症の原因が分かるケースもあります。原因によっては、自然妊娠が望めないために人工授精*や体外受精**を検討しなければならない場合もあります。人工授精や体外受精であっても妊娠率には女性の年齢が影響するため、なるべく早く治療をスタートすることが大切です。

*人工授精:男性から提供された精液から取り出した精子を子宮内に注入する方法。

**体外受精:体外で卵子と精子を受精させた後に子宮内に受精卵を戻す方法。

不妊症で受診を考えたとき、不妊治療を専門とするクリニックなど、たくさんの選択肢があると思います。どのような医療機関を選ぶべきか迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。基本的には、通いやすさなどご自身のライフスタイルに適したところがよいと考えています。さらに可能であれば、その医療機関における治療成績が分かると選択時の参考になるでしょう。

ただし、治療成績だけではなく医師との相性も重要であると考えています。担当の医師がきちんと説明してくれたり、分からないことを聞きやすかったりする医療機関がおすすめです。不妊治療は金銭的負担が大きいケースもありますし、治療の過程では身体的、精神的な負担がかかることもあります。そのようなときでも可能な限り安心して治療を受けられるよう、相談しやすく信頼できる医師を選んでいただきたいと思います。

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