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不妊治療を支える胚培養士とは? ――体外受精や顕微授精で重要な役割を担う

不妊治療を支える胚培養士とは? ――体外受精や顕微授精で重要な役割を担う
林 博 先生

恵愛生殖医療医院 院長

林 博 先生

目次
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胚培養士は、精子と卵子を受精させ、胚(受精卵)を培養する過程でさまざまな役割を担う、不妊治療に欠かせない存在です。ミスは決して許されないため、高い専門性と素養が求められる職種だといえます。

今回は、恵愛生殖医療医院 院長の(はやし)ひろし)(先生に、胚培養士の業務内容や不妊治療の安全性確保に向けた同院の取り組みについて、お話を伺いました。

胚培養士の仕事場は不妊治療を行う医療施設の培養室で、卵子や精子を管理し、胚(受精卵)の培養(育てること)を行う、不妊治療の要ともいえる場所です。胚培養士は、体外受精では卵子や精子の状態をチェックして媒精(卵子と精子を接触させること)させ、顕微授精では卵子に針を刺して精子を1つ注入し、受精させる手技を行います。また、体外授精で複数の胚が得られた場合でも、子宮内に移植できるのは原則として1つであり、余剰胚が生じます。また排卵誘発高刺激法などで卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が予測される場合には得られた全ての胚をいったん凍結することも多いです。これらを凍結保管しておけば、次回以降の周期に融解して移植できます。胚培養士は、この凍結から融解までのプロセスにも携わっています。

患者さんから採取した卵子、精子や培養中の胚には、万が一にも取り違いなどの事故があってはならず、厳格な管理が求められます。そのため、胚培養士は常に緊張感と高い倫理観を持って業務に集中する必要があります。正確な技術を身に付けていることはもちろん、こうした資質も重要でしょう。

当院では、早朝7時頃から採卵(腟を通して卵子を取り出す手術)を開始するため、胚培養士もそれ以前に準備を整えています。また、胚は24時間体制で管理、観察しなければならず、胚培養士が交代でその役割を担っています。そのため、自身の健康管理がしっかりできる人でなければ務まりません。

当院でも、胚培養士は不妊治療において重要な役割を担っており、さまざまな職種のスタッフと連携しながら業務に取り組んでいます。特に、医師とは定期的にカンファレンスを開き、各症例の治療方針について意見を交わしたり、新たな技術の導入を検討したり、解決すべき課題があればそれについて議論したりしています。そのほか、看護師や医療事務スタッフとも緊密に連携し、患者さんに安心して受診いただけるよう努めています。

PIXTA
写真:PIXTA

当院では、週1回、顧問の先生から技術面のアドバイスを受ける機会を設けたり、関連学会に参加したりして、胚培養士の技術向上に努めています。また、2023年8月現在、胚培養士は認定資格ですが、将来的には国家資格になると予想されます。現時点では、さらなる技術向上を目指し、認定資格取得に向けたトレーニングに力を注いでいます。

胚培養士は顕微鏡を使って作業する時間が長く集中力を要するため、働く環境によってはストレスがかかり、パフォーマンスの低下につながりかねません。当院では、胚培養士がリラックスして業務に集中できるよう、広々とした明るい培養室を設けています。床には動物のイラストを、壁には森のイラストを配置するなどして、心が落ち着く環境を整えています。また、移植に適した胚の判別にAIの画像判定技術を導入するなど、胚培養士の負担軽減を目指して自動化の推進にも取り組んでいます。

先方提供
恵愛生殖医療医院の培養室

取り違い防止システムを導入し、卵子や精子を移動させたり受精させたりする際には必ずバーコードで管理して、間違いがないことを確認しています。加えて、人の目によるダブルチェックも行い、ミスを起こさない体制を維持しています。また、院内のデータベースを整備し、1か所に入力した情報がシステム全体に正確に反映される仕組みを構築しています。

さらに、胚培養士が培養の業務に集中できるよう、事務的な仕事はアシスタントがフォローしているほか、ダブルチェックにもアシスタントが立ち会い、より多くの目で確認するようにしています。

当院では患者さんと接する機会が少ないものの、胚培養士は不妊治療においてなくてはならない重要な役割を担っています。患者さんの卵子や精子をお預かりし、胚を大切に育てるという胚培養士たちの仕事のうえに不妊治療が成り立っていることを、多くの方に知っていただければうれしく思います。

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    林 博 先生

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