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不育症とはどのような病気? ――主な原因や検査方法についても解説

不育症とはどのような病気? ――主な原因や検査方法についても解説
林 博 先生

恵愛生殖医療医院 院長

林 博 先生

目次
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妊娠はするものの、流産や死産を2回以上繰り返し、出産に至らない状態を不育症といいます。日本国内の患者数は30~50万人程度と推定されており、不育症は珍しい病気ではなくなってきています。

今回は、不育症の定義や受診の目安、主な原因や検査方法について、恵愛生殖医療医院 院長の(はやし)ひろし)(先生にお話を伺いました。

日本産科婦人科学会の『産科婦人科用語集・用語解説集』では、生殖年齢にある男女の間で、妊娠は成立するものの流産や死産を繰り返し、出産に至らない状態を不育症としています。また、『不育症管理に関する提言2021』(厚生労働科学研究費補助金事業)では、流産や死産を2回以上経験したケースを不育症と定義しています。1回目の妊娠で流産、2回目の妊娠では出産に至り、3回目の妊娠で再び流産といったように、流産や死産が連続していない場合も含みます。

日本では、流産を2回以上経験した方が4.2%、3回以上経験した方は0.88%との報告があり、国内に30~50万人程度の不育症の患者さんがいると推定されています。以前は流産が3回以上連続する習慣流産を不育症としていましたが、近年、“連続、不連続を問わず2回の流産や死産”と病気の定義が拡大されたこともあり、よくみられる病気の1つになってきています。

不育症の原因として、以下のようなことが挙げられます。

子宮の形態異常

子宮の形態が通常と異なると、着床障害のほか、胎児や胎盤が圧迫されることなどにより、流産や死産を引き起こす場合があります。

ホルモン異常

黄体ホルモン(妊娠を維持するはたらきがあるホルモン)などが不足していると、流産や死産を引き起こす場合があります。

内科的異常

甲状腺機能亢進症(甲状腺機能が過度に高まる病気)や甲状腺機能低下症は流産や死産を引き起こす可能性があります。また、糖尿病も流産や死産のリスクを高めると考えられます。

感染症

クラミジア感染症梅毒といった感染症があると、流産や死産を引き起こす場合があります。

両親の染色体異常(均衡型転座など)

均衡型転座とは、染色体の配置が2か所、過不足なく入れ替わっている状態をいいます。均衡型転座がある本人(親)に異常はみられませんが、両親のどちらかに均衡型転座があると胚(受精卵)に異常が生じやすくなり、流産や死産を繰り返すことがあります。

血液凝固異常

もともと血液が固まりやすくなる血液凝固異常がある方の場合、血栓(血の塊)が生じやすくなり、胎盤の細い血管やへその緒が詰まることなどによって胎児への栄養供給が阻害され、流産や死産を引き起こすことがあります。

免疫異常

免疫とは、体外から侵入する異物と結合し、その異物を除去する抗体のはたらきによって体を守るしくみです。たとえばワクチン接種は、特定のウイルスに対する抗体を体内につくり、病気から身を守るためのものです。

抗リン脂質抗体症候群という自己免疫疾患*では、抗リン脂質抗体という自己抗体**が血液中に血栓をつくって血流を悪化させ、胎児への栄養供給を妨げます。また、胎児を異物として排除しようとするケースもあり、いずれも流産や死産の原因となっています。

*自己免疫疾患:免疫機能に異常が生じ、自分の組織や細胞を異物と認識して攻撃してしまう病気。

**自己抗体:自分の組織や細胞に対する抗体のこと。

早期流産の原因の多くが胎児側にあり、母体側に原因があるケースはそれほど多くありません。胎児側の原因は卵子の質によるとも考えられるため、卵子の質を低下させる因子があると流産や死産のリスクが高まるといえます。女性の年齢も関係してくるでしょう。また、喫煙や過度の飲酒、カフェインの過剰摂取も原因になり得るとされています。さらに、糖尿病や肥満も流産や死産を引き起こす可能性があるため、該当する方は食事の内容を見直す必要があるでしょう。

PIXTA
写真:PIXTA

不育症の状態にある方には、原因を突き止めるため以下のような検査を行います。

超音波検査で子宮の形態や筋腫の有無を調べたり、子宮卵管造影検査*で子宮や卵管に形態異常がないかどうか調べたりします。

なお、子宮卵管造影検査は自費診療で、当院での費用は1回あたり9,600円(税込)です(2023年8月時点)。

*子宮卵管造影検査:子宮口から管を入れて造影剤を注入し、子宮の状態や卵管の通りなどを調べる検査。副作用や欠点としては痛み、感染、出血など。

血液検査により、黄体ホルモンなどの数値に異常がないか、また甲状腺機能異常や糖尿病がないかを調べます。

クラミジア感染症梅毒といった感染症の有無を調べます。

クラミジア感染症は子宮頸管(しきゅうけいかん)や尿道からの分泌物を採取する検査や、血液検査(抗体検査)で調べます。また、梅毒は一般的に診察と血液検査により判断します。

なお、クラミジア抗体検査は自費診療で、当院での費用は1回あたり3,300円(税込)です(2023年8月時点)。

血液検査により、カップルのいずれかに染色体異常(均衡型転座など)があるかどうかを調べます。なお、異常が分かったとしても、染色体異常自体は生まれつきのものなので治療方法はありません。後述するPGT-A検査を行えば流産の確率を減らすことができる可能性があります。検査を受けるか否か、事前にカップルでよく話し合われるとよいでしょう。

血液検査により、血液を固まらせる機能の異常がないかを調べます。

なお、血液凝固・線溶検査は一部自費診療です(プロテインC・S活性検査、第XII・XIII因子)。当院での費用は、1回あたり各2,200円(税込)です(2023年8月時点)。

血液検査により、血液を固まりやすくさせる抗リン脂質抗体などの自己抗体について調べます。基本的な検査としては、抗カルジオリピンIgG抗体検査、抗カルジオリピンβ2GPI-IgG抗体検査、ループスアンチコアグラント(LAC)検査があります。

体外受精を選択する場合、PGT-Aにより、染色体の異数性(数の異常)の有無を調べることができます。体外受精によって得られた胚(受精卵)の細胞の一部を採取して検査し、異数性のない胚を選んで子宮内に移植すれば、流産率の低下が期待できます。

胚にダメージを与えるといった懸念もあるため、事前に説明を受け、よく理解したうえで検査を受けるかどうかを判断する必要があるでしょう。

なお、当院では2023年8月現在、この検査を実施していません。

流産となった場合に、その原因を確かめるため、流産児の染色体を調べる検査です。

先に述べた不育症の定義(流産や死産を連続、あるいは不連続に2回以上経験)に当てはまる方は、早めに検査を受け、適切な治療を開始されるようおすすめします。

また、流産のほとんどが妊娠10週未満の場合に起こっており、流産のリスクは胎児の成長につれて低下します。そのため、1回目の流産でも妊娠10週以降で原因がはっきり分からない場合などは、不育症の可能性がやや高いと考えられます。このような場合も、早めに医師に相談されたほうがよいでしょう。

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