こうりんししつこうたいしょうこうぐん

抗リン脂質抗体症候群

別名:APS

目次

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概要

抗リン脂質抗体症候群(APS)とは、抗リン脂質抗体という自己抗体が血液中に存在し、血液中にできた血栓(血の塊)がつまる血栓症や、習慣流産などの妊娠合併症を引き起こす自己免疫疾患(免疫システムが、誤って自分自身の正常な細胞を攻撃してしまう病気)です。

抗リン脂質抗体症候群は、約半数が他の基礎疾患をもたない原発性であり、残り半数が全身性エリテマトーデス (SLE) など他の自己免疫疾患に伴う続発性に分類されます。平均発症年齢は30~40歳であり、若い女性に多いといわれています。

原因

原因は不明

2017年現在、抗リン脂質抗体症候群のはっきりとした原因はわかっていません。基本的には、遺伝的要因や環境要因など、複合的な要因が重なりあった結果生じるのではないかと考えられています。

これまでの研究から、抗リン脂質抗体症候群のリスクとなり得る遺伝子がみつかってきていますが、リスク遺伝子をもつ方が必ずしも発症するわけではなく、詳細なメカニズムは今後のさらなる研究で明らかにされることが期待されています。

不育症を引き起こす理由

不育症(妊娠をしても流産や死産を繰り返してしまう状態)を引き起こすメカニズムとしては、妊娠中に胎盤に血栓ができることで引き起こされると考えられていました。しかし、近年の研究の結果、流産してしまった抗リン脂質抗体症候群の患者さんの胎盤には、必ずしも血栓ができるわけではないことがわかってきました。

2017年11月現在では、抗リン脂質抗体症候群の患者さんが妊娠すると、胎盤を作るトロホプラストという毛細細胞に障害が起こり、胎盤が本来持つ働きを失ってしまうために不育症になるのではないかと考えられています。

症状

抗リン脂質症候群の主な症状としては、

  • 血栓症
  • 不育症

の2つが挙げられます。

血栓症

血栓傾向に伴っておこるエコノミークラス症候群などの血栓症は、静脈に起こることが一般的です。しかし、抗リン脂質症候群による血栓症では、静脈のみならず動脈にも血栓が引き起こされることが特徴です。

静脈血栓症は、下肢(足)の深部静脈に発生しやすく、肺塞栓症を合併することもあります。動脈血栓症は脳梗塞や心筋梗塞が代表的ですが、抗リン脂質抗体症候群の場合、圧倒的に脳梗塞を発症する方が多いことがわかっています。

不育症

不育症とは、妊娠はするけれど、流産(妊娠22週未満での妊娠の中断)や死産(妊娠12週以降の胎児の死亡)を繰り返してしまい、結果的に生児が得られない状態のことをいいます。

抗リン脂質抗体症候群による不育症の特徴は、初期流産(妊娠12週未満の流産)よりも、子宮内胎児死亡(妊娠12週以降の死産)で生児を得られない場合が多いことです。他にも、血小板減少症や弁膜症、神経症状などが現れることがあり、このような症状は抗リン脂質抗体関連症状と呼ばれています。

検査・診断

抗リン脂質抗体症候群の診断には、抗リン脂質抗体の証明が必要となります。抗リン脂質抗体を検出する検査項目のひとつに、ループスアンチコアグラントの測定が挙げられます。検査で「陽性」と判定された場合でも、その時点では抗リン脂質抗体症候群とは診断されず、12週間以上経過したのち再度陽性であることが確認された場合に、抗リン脂質抗体症候群と診断されます。

この他、ELISA法により抗カルジオリピン抗体または抗β2-グリコプロテインI抗体の測定が実施される場合もあります。また、血栓症の有無を確認するために、脳のMRIやCT検査、静脈エコーなどが実施される場合もあります。

治療

急性期血栓症の治療

抗リン脂質抗体症候群による急性期の血栓症に対しては、通常の血栓症の治療と同様に抗血栓療法が行われます。治療薬には、低用量アスピリンや他の抗血小板薬などがあります。

不育症の治療

不育症の治療では、複数の薬の併用療法が行われます。たとえば、ヘパリンやアスピリンなどの薬を併用することが多いでしょう。

血栓症の再発予防

また、抗リン脂質抗体症候群による血栓症は再発の頻度が非常に高いため、「二次予防」が重要となります。一度血栓症を発症した場合には、抗リン脂質抗体が陽性である限り、生涯にわたって抗血栓療法を継続する必要があります。
具体的には、薬の服用に加え、喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満など、血栓症のリスクとなり得る因子を減らすことも大切です。女性の場合は、静脈血栓のリスクとなる避妊用の低容量ピルの内服は禁止されています。

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