しんぶじょうみゃくけっせんしょう

深部静脈血栓症

目次

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概要

深部静脈血栓症とは、身体の深くに存在する静脈に血栓が生じる病気です。多くの場合は、下肢の静脈に生じることが多く、エコノミークラス症候群として肺塞栓症を引き起こすこともある病気です。深部静脈血栓症は命にかかわる続発症を引き起こしえるため、深部静脈血栓症が指摘された場合には、抗凝固療法や血栓溶解療法、フィルターの留置、カテーテル治療などの治療を行います。

深部静脈血栓症は、長時間のフライトや車中泊をきっかけとして発症するリスクが高まります。下肢を動かすことで発症リスクを下げることができるため、同じ体勢を避けるためにも足を動かすなど適度な運動を心がけることが重要です。

原因

深部静脈血栓症は、下肢を代表として身体の奥深くに存在する静脈にて血栓が生じる病気です。下肢には重力の関係から多くの血液が滞りやすいです。本来は下肢を動かすと、下肢の筋肉がポンプの役割を果たして血液が重力に逆らうかたちで心臓へと戻るように促されます。しかし、下肢の運動が制限されるような状況においては、血液の還流が阻害されることになります。血液は一カ所に滞ると固まる性質を有しているため、結果として深部静脈血栓症が発症します。

深部静脈血栓症を発症する状況の例としては、以下が挙げられます。

  • 長距離移動(長時間の飛行機搭乗、長距離バス移動など)
  • パソコンを使用したデスクワーク
  • 病院でのベッド状安静
  • 骨折でのギブス固定
  • 脳梗塞で足の麻痺などの長時間動かないこと
  • 悪性腫瘍の治療中

それ以外にも、妊娠期間中、先天的に血液が固まりやすい病気、悪性腫瘍などに関連して深部静脈血栓を発症することもあります。

症状

障害を受けた部位の腫れ

深部静脈血栓症を発症すると、血液の流れが滞るため、障害を受けた部位に一致して腫れがみられます。深部静脈血栓症は下肢に生じることが多いです。下肢に生じた場合は、下肢に腫れがみられます。また、同時に痛みや熱感、発赤などを伴うこともあります。上肢に生じた場合には、上肢に同じような症状が生じます。

続発症として肺塞栓症を生じることがある

深部静脈血栓症では、続発症として肺塞栓症を発症することがあります。静脈に形成された血栓がなんかの拍子ではがれると、血液循環に乗って全身に流されます。血液の流れに乗った血栓は、心臓を介して肺動脈に入り込み、同部位で詰まります。こうして発症するのが「肺塞栓症」です。

肺塞栓症を発症すると、呼吸困難、呼吸時の胸の痛み、心筋梗塞を発症したときのような前胸部の不快感や圧迫感を覚えます。肺塞栓症の症状は重篤であり、命にかかわることもあります。

検査・診断

血液検査

深部静脈血栓症は、血液検査によるD-ダイマー測定、超音波検査や造影CT検査といった画像検査をもとに診断されます。D-ダイマーは血栓が形成・溶解されることに関連して生成される物質であり、身体のどこかで血栓が存在していることを間接的に評価するマーカーとなります。

超音波検査や造影CT

より直接的に深部静脈血栓症を診断するためには、超音波検査や造影CTが有効です。こうした検査によって、どの部位にどの程度の血栓が存在しているのかを評価できます。造影CTでは、肺塞栓症を発症している場合、肺動脈の閉塞も同時に評価することが可能です。

なお、肺塞栓症の診断に際しては、肺換気血流シンチ、心電図、心臓エコーなども行われます。急性期の症状を認めない場合でも、下肢の血栓形成リスクが高い患者さんに対して、手術前などに超音波検査を行い、血栓の有無を評価することもあります。

治療

深部静脈血栓症及び肺塞栓症の治療には、以下が挙げられます。

  • 抗凝固療法
  • 血栓溶解療法
  • カテーテル治療
  • 外科療法
  • 下大静脈フィルター

できて間もない血栓なのか、肺塞栓症を発症しているかなどの状況を見極めつつ治療方針を決定します。抗凝固療法においては、ワーファリンやヘパリンと呼ばれる薬が使用されます。近年では新しい抗凝固療法として、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンといった経口薬を使用することがあります。これらは従来の治療方法に伴う食事制限や用量調整の煩わしさといったデメリットを克服する治療方法として、使用され始めています。

なお、緊急的に血栓を取り除く必要がある場合には、血栓溶解療法やカテーテル療法、手術的な摘出などが適宜選択されます。下大静脈フィルターでは、下大静脈にフィルターを留置し下肢からの深部静脈血栓をあらかじめキャッチし、肺へ飛ばないようにする予防方法です。