インタビュー

急性の静脈血栓症を治療する どのような場合、特殊な器具が必要になるのか―そしてそうでない場合は

急性の静脈血栓症を治療する  どのような場合、特殊な器具が必要になるのか―そしてそうでない場合は
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...

徳田 安春 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2015年10月30日です。

下肢や骨盤内に形成される深部血栓は、危険なものになり得ます。血栓が肺へ飛び、血流を妨げると、命に関わる場合があるのです。

このような血栓形成は深部静脈血栓症(DVT:Deep vein thrombosis)と呼ばれ、血栓が肺に至った病態は肺塞栓症(PE:Pulmonary embolism)と呼ばれます。

深部血栓が見つかったり、そのリスクが高まれば、下大静脈(IVC:inferior vena cava)フィルターの設置を医師から勧められるかもしれません。フィルターは、腹部の最も大きい静脈に置かれます。小さな傘のような形をしており、下半身から肺へと血栓が移動するのを妨ぐことができます。

しかし、多くの患者にとってこのフィルターは必要ありません。その理由は以下のとおりです。

複数の研究結果によると、IVCフィルターは、血液をサラサラにする薬物療法単独での成績よりも効果があるわけではないということが示されています。こういった薬は「抗凝固薬」とも言われています。

本来、肺塞栓症の危険がなくなれば、フィルターを一刻でも早く取り除くべきです。しかし、患者や医師が必ずしもフィルター設置後のフォローアップを例外なく行うわけではないことから、そのままにされることもあります。

フィルターが静脈に置かれたままだと、血流が妨げられかねないうえ、下肢に血栓が形成されることにもつながってしまいます。

稀なケースではありますが、フィルターやその一部分が、身体の他の場所に移動してしまうこともあり、この場合、合併症を引き起こしたり、手術が必要になることもあります。

フィルターを置くのには、3000ドル(日本円で約36万円)以上の出費が必要になります。抗凝固薬にも同程度の費用かかり、フィルター除去にはさらに2000ドル(日本円で約24万円)以上もの費用がかかってしまいます。合併症が起こった場合は、さらなる金銭的負担がかかります。加えて、薬代や医師の診察代、入院費の必要も考えられるほか、治療期間中は仕事を休む必要もあるかもしれません。

深部血栓ができてしまったものの抗凝固薬を安全に服用できない場合は、IVCフィルターが必要になるかもしれません。たとえば、出血障害があったり、治療中に命に関わるような出血が起こった場合です。

肺塞栓症や出血の心配がなくなれば、一刻も早くフィルターを除去すべきで、その後は抗凝固薬を服用するのが良いでしょう。

深部静脈と肺に血栓があることは深刻な問題ですが、見逃されやすく、また、どの年齢層でも生じうるのです。特に、肺の血栓は、重篤な病態や障害を引き起こしたり、命に関わることもあります。

血栓があるとわかったら、可能な限りはやく治療を受けましょう。そのためにも症状を知っておくのはとても大切なことです。

  • 下肢の腫れ、疼痛(とうつう)、圧痛、発赤や変色
  • 腕に血栓ができることもあり、同様の症状が現れます

これらの症状があれば、すぐに医学的処置を受けてください。

肺塞栓症(PE)では、血栓は肺に飛び、血流を妨げます。

  • 呼吸困難、頻脈、不整脈、胸痛、深呼吸時の痛み、喀血、失神

これらの症状があれば、直ちに911(日本の場合は119)にコールするか救命救急センターに行く必要があります。

  • 運動習慣をつけ、太りすぎないように注意すること。
  • 長時間に及ぶフライトの場合は、水分を摂り、塩分の多い菓子類を控え、ゆったりした衣服を身につけること。一時間ごとに立ち上がって足をのばすこと。立ち上がれない場合は、姿勢を変えたり、下肢を頻繁に動かすこと。
  • 入院中や手術後等で動けない場合、血栓のリスクが高まるため、血栓予防の方法を医師に尋ねること。

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能

監修:小林裕貴、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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