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静脈血栓塞栓症の治療と予防
静脈血栓塞栓症とは、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症と呼ばれる病気の総称です。通称「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります。深部静脈血栓症とは、足の静脈に血栓(血の塊)が生じることによって...
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静脈血栓塞栓症の治療と予防

公開日 2018 年 12 月 10 日 | 更新日 2018 年 12 月 10 日

静脈血栓塞栓症の治療と予防
丹羽 明博 先生

平塚共済病院 院長

丹羽 明博 先生

目次

静脈血栓塞栓症とは、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症と呼ばれる病気の総称です。通称「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります。

深部静脈血栓症とは、足の静脈に血栓(血の塊)が生じることによって静脈の閉塞が起こる病気です。この深部静脈血栓症によって生じた血栓が血流に乗り肺に到達すると、肺動脈を閉塞し、息切れや失神などの症状が現れる肺血栓塞栓症が起こります。

静脈血栓塞栓症では、治療と共に、予防や早期発見が大切だと考えられています。それはなぜなのでしょうか。今回は、平塚共済病院の丹羽 明博先生に、静脈血栓塞栓症の治療と予防についてお話しいただきました。

静脈血栓塞栓症の診断

症状や身体所見の確認

静脈血栓塞栓症の診断では、息切れやふらつきなどの症状や、足を圧迫することで血栓があるかどうかの手がかりを探していきます。また、足首から先の足先を背屈させることによって足のふくらはぎに痛みが生じるようなら、この病気も疑います。

エコノミークラス症候群

血液検査やCTなど検査の実施

診断をつけるためには、血液検査や心電図、レントゲン検査、CTなどの検査を行っていきます。

たとえば、血液検査の結果、血液中のD-dimerの値が上がっていれば、静脈血栓塞栓症が生じている可能性があります。ただし、D-dimerの値の上昇はほかの病気でも起こりえるため、必ずしもこの病気を意味するわけではありません。

また、心電図検査の結果から病気がわかることもありますし、明らかなものであればレントゲン画像に肺門部の陰影が大きく映るケースもあります。

なお、確定診断のためには造影CT検査を行います。

D-dimer:血栓が溶けていく過程で生じる物質

心不全や呼吸不全と見分けるために

静脈血栓塞栓症で現れる症状は、心不全や呼吸不全で現れるものと似ているため、診断ではこれらと区別することが大切になります。

たとえば、「息苦しい」と訴えて受診された方は、最初に心不全か呼吸不全を疑われることが多いでしょう。しかし、診察の結果、心臓や肺の雑音がないようなら、この病気の可能性を考えます。

また、レントゲン検査の結果、心不全や呼吸不全でみられる影がなかったり、血栓によって肺の血管が詰まっているために肺の透過性が進んでいたりすることがわかれば、この病気を疑います。

静脈血栓塞栓症の治療

血液をさらさらにする効果のある薬が治療の基本

薬

静脈血栓塞栓症の治療は、血液を固まりにくくする抗凝固療法が基本になります。抗凝固療法とは、血液をさらさらにする効果のある抗凝固薬を静脈注射あるいは皮下注射で投与したり、飲み薬を服用したりする治療法です。中でも、近年では、効果の高い新たな抗凝固薬が登場しており、特に発症初期の急性期には、その薬の使用が一般的な治療法になっています。

抗凝固薬には複数の種類があり、それぞれの薬の特徴も異なります。当院では、患者さんの状態を確認しながら適した薬の使用を行っています。

また、重症例に対しては、薬を使用して血栓を溶かす血栓溶解療法を行うこともあります。

再発を防ぐために

基本的に、先述したような抗凝固薬によって治療を続けている限り再発は少ないと考えられていますが、患者さんの中には、この病気を繰り返し起こしてしまう方もいます。

何度もこの病気を繰り返しているような患者さんには、再発を防ぐために薬の種類や使用期間などを工夫していきます。

D-dimerを治療の目安のひとつに

関連学会ではいつまで薬を使い続けるかが、大きなテーマになっています。

当院では、診断の項でお話しした「D-dimerの値」を治療のひとつの目安としています。たとえば、薬の量を減らしていった結果、D-dimerが正常範囲内にとどまっていれば、より減量・中止まで進む一方で、途中でD-dimerが上昇するようであれば、薬の量を元に戻すこともあります。このように患者さんの病状を見ながら再発を起こさないように薬剤量を調整しています。

静脈血栓塞栓症の早期発見のために

定期的にふくらはぎを圧迫して痛みや違和感があれば受診を

記事1『エコノミークラス症候群とも呼ばれる静脈血栓塞栓症ってどんな病気?』でお話ししたように、静脈血栓塞栓症が起こると短期間で亡くなるケースもあります。そのため、予防や早期発見が非常に大切です。

早期発見のために私が推奨しているのは、自分で足を圧迫する方法です。定期的にふくらはぎを圧迫し、痛みや違和感があるようなら、この病気の可能性を考えてみてほしいと思います。

また、静脈血栓塞栓症は片方の足に起こることが多いため、右と左で痛みの感じ方が違う場合にも注意が必要です。自分で足を圧迫しながら、片方の足に痛みや違和感が生じた場合には、早期に受診していただきたいと思います。

静脈血栓塞栓症の予防

なるべく動くことを心がけて

静脈血栓塞栓症の予防のためには、じっとしていないことが大切になります。日本では、度々起こる災害によって、一定期間、避難所や車中で生活を行うケースもあるでしょう。車中泊や避難所でも、なるべく動くことを心がけてほしいと思います。さらに、水分が不足すると静脈血栓塞栓症を起こしやすくなってしまうので、なるべく水分をとるよう心がけてください。

また、避難所では床に寝ることが多いと考えられますが、可能であれば高さのあるものに寝ることが予防につながるといわれています。これは、起き上がり時や就寝時に足を動かさざるをえないために静脈の刺激につながるからです。

弾性ストッキングの着用

弾性ストッキングの着用も予防につながるといわれています。弾性ストッキングとは、足に圧力を与える効果のあるストッキングです。弾性ストッキングを着用すると、足の静脈が圧迫され血栓ができにくくなる効果が期待できます。

ストッキング

入院中は早期の離床を

何らかの手術のために入院する場合、術後の早期離床が予防につながります。近年は、昔と比べて、早期離床を推奨する傾向にあり静脈のうっ滞の予防につながっています。病気や手術の種類にもよりますが、手術の当日や翌日には歩いていただいている施設が増えています。

もともと抱える病気によっては、自分で動くことができないケースもあります。そのような場合には、リハビリやフットポンプの使用が予防につながるでしょう。

フットポンプを使用することも

足を動かすことができない入院中の患者さんに対して、静脈のうっ滞を起こさないようフットポンプが用いられることがあります。フットポンプとは、下腿(ひざから足首までの部分)を間欠的に圧迫したり、足裏を叩いたりすることで、筋肉ポンプの代わりに足の静脈を刺激する医療機器です。

患者さんへのメッセージ

患者さんに合わせた治療で再発を防ぐよう努めている

丹羽先生

静脈血栓塞栓症では、予防や早期発見が非常に大切です。特に、入院時や長距離の移動中など発症しやすい状況では、可能であればなるべく動くことを心がけてください。また、繰り返しになりますが、早期発見のためには自分で定期的に足を圧迫し、片方の足に痛みや違和感があれば早期に受診していただきたいと思います。

私は、肺血栓塞栓症の再発をゼロにしたいと考えています。そのために、当院では、患者さんに合わせて薬の種類や薬の服用期間を変え、再発の予防に努めています。患者さんの状態を適切に評価し治療を行いますので、安心して受診していただきたいと思います。

 

エコノミークラス症候群 (丹羽 明博 先生)の連載記事

1972年初期研修医時代から循環器研究室に入り、患者さんの脇にいて変化を如何に早期に把握するかを意識して研修。武蔵野赤十字病院時代に呼吸器の疾患であった急性肺塞栓症は、循環器の疾患と位置づけないと救命できないと感じ学会活動を行う。

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