インタビュー

エコノミークラス症候群の症状

エコノミークラス症候群の症状
大郷 剛 先生

国立循環器病研究センター 肺高血圧先端医学研究部 特任部長/肺循環科 医長

大郷 剛 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年03月11日です。

 

エコノミークラス症候群とは、長時間にわたる飛行機の搭乗などによって足の血流が悪くなり、足の静脈のなかに血栓(血の塊)ができることによって、さまざまな症状が現れる病気を指します。

エコノミークラス症候群を発症すると、足の腫れや息苦しさ、胸の痛みなどの症状が現れるといわれています。

今回は、国立循環器病研究センターの大郷 剛先生に、エコノミークラス症候群の症状についてお伺いしました。

エコノミークラス症候群とは、長時間にわたる飛行機の搭乗などによって足の血流が悪くなり、足の静脈のなかに血栓(血の塊)ができることで発症する病気です。エコノミークラス症候群になると、足の腫れや胸の痛みなど、さまざまな症状が現れます。

飛行機に座る乗客

エコノミークラス症候群を発症するしくみについて簡単にご説明します。飛行機のエコノミークラスに搭乗すると、長時間にわたり狭い場所で座ったままの状態になります。長時間にわたり足を動かすことがないために足の血液の流れが悪くなると、足の静脈のなかに血栓(血の塊)ができることがあります。

足にできた血栓は歩行などをきっかけにして、血液の流れに乗り、肺まで到達することがあります。肺に到達した血栓が肺の血管を塞いでしまうと、胸の痛みや息切れなどの症状が現れるようになります。

エコノミークラス症候群は、飛行機のエコノミークラスへの搭乗によってのみ起こるわけではありません。狭いところで座ったまま長時間過ごし、足を動かすことが少なければ、どこでも発生する可能性があるといえるでしょう。このため、長時間にわたる車の運転や車中泊、さらに災害時の避難所への滞在やデスクワークでも発生することがあります。

エコノミークラス症候群とは、正式な病気の名称ではありません。深部静脈血栓症と急性肺血栓塞栓症は一連の病気として静脈血栓症と総称されており、特に飛行機での旅行時に起こる静脈血栓症をエコノミークラス症候群と呼んでいます。

ただ一般的にエコノミークラス症候群を静脈血栓症の通称として用いられている場合も多く、イメージがわきやすいので今回、静脈血栓症の通称としてエコノミークラス症候群と呼んでいます。

お話ししたように、足の静脈に血栓(血の塊)ができる病気を(下肢)深部静脈血栓症と呼びます。また、急に血栓が肺の血管を塞いでしまう病気を急性肺血栓塞栓症と呼びます。

一般的にこれら2つの病気を合わせて(飛行機以外の状況で発症したものを含めて)「エコノミークラス症候群」と呼ばれることが多いでしょう。

エコノミークラス症候群は、長時間にわたり座ったまま足を動かすことがない状態が続くと、発症しやすくなります。

たとえば、長時間にわたる飛行機の搭乗や車の運転、車中泊、さらに災害時の避難所への滞在やデスクワークなどで、発症する可能性があるでしょう。

さらに、水分の不足により脱水の状態になると、発症しやすくなるといわれています。

エコノミークラス症候群は、高齢の方や、血管自体に障害を持つ方、さらにがんの患者さんが発症しやすいと考えられています。

高齢男性

また、妊娠中や出産後の女性、経口ピルなどのホルモン剤を服用している女性は、血栓(血の塊)ができやすいため注意が必要です。

エコノミークラス症候群になり足に血栓(血の塊)ができると、片足が腫れたり、部分的に赤くなるなどの症状が現れるでしょう。また、足に痛みを伴うこともあります。

両足に症状がでることは少なく、片足のみに現れることが多いでしょう。

また、足の血栓が肺に到達し、肺の血管を塞ぐようになると、呼吸困難による息切れや胸の痛みなどの症状が現れます。重症化すると、冷や汗がでたり、意識を失ったりするケースもあるでしょう。

肺

エコノミークラス症候群の症状が現れる場所や重症度は、患者さんによってさまざまです。

足と肺、両方に症状が現れる方もいますが、血栓が肺に到達せず足にとどまっている場合には、足の腫れなど足だけに症状が現れる方もいます。一方、足の症状はほとんどなく、肺の症状のみの方もいるのです。この場合、足の腫れはみられず、胸の痛みなどが現れるでしょう。

両方の症状が現れる場合には、足と肺の症状のいずれも重症なこともありますが、どちらか一方だけ重症というケースもあります。また、いずれも軽症という場合もあり、重症度は患者さんによって異なるでしょう。

エコノミークラス症状群は、狭いところで座ったまま足を動かさない状況が6時間以上継続すると、発症しやすくなるといわれています。さらに、10時間以上継続すると、重症化しやすくなると考えられています[注1]

お話ししたように足を動かさない状況が6時間以上続いた後、すぐに発症する人もいますが、その翌日や数日後に発症するケースもあります[注1]

個人差はありますが、基本的には数日以内に発症することが多いといわれています。

注1:Air Travel and Venous Thromboembolism: A Systematic Review J Gen Intern Med. 2007 Jan; 22(1): 107–114.

エコノミークラス症候群の患者さんのうち、1割程度は亡くなる可能性があるといわれています[注2]。しかし、これは重症度によっても異なります。

たとえば、心臓の機能が低下している方や血圧が低下している方は、命にかかわる可能性がより高くなると考えられます。

注2:Nakamura M, Fujioka H, Yamada N, et al. Clinical characteristics of acute pulmonary thromboembolism in Japan: results of a multicenter registry in the Japanese Society of Pulmonary Embolism Research. Clin Cardiol 2001; 24: 132-138 

記事2『エコノミークラス症候群の治療と予防』では、エコノミークラス症候群の治療と予防についてお話しします。

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