こうじょうせんきのうていかしょう

甲状腺機能低下症

最終更新日
2021年09月17日
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2021/09/17
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

甲状腺機能低下症とは、甲状腺のはたらきが低下して甲状腺ホルモンの分泌量が通常よりも少なくなる病気のことです。

甲状腺ホルモンは、甲状腺で生成・分泌されるホルモンであり、全身の新陳代謝を活発にする作用があります。そのため、甲状腺ホルモンの分泌量が減少するこの病気では、疲労感、むくみ、寒がり、便秘、体重増加、脱毛といった症状が引き起こされるようになります。

放置して重症化すると、心不全や意識障害を引き起こすケースもあるため注意が必要です。また、甲状腺ホルモンは卵子の成熟や子どもの成長にも必要なホルモンであるため、甲状腺機能低下症を発症すると生理不順や不妊、小児期の成長・発達障害がみられることがあります。

甲状腺の機能が低下する主な原因は、慢性的な炎症が生じることで徐々に甲状腺が破壊されていく“慢性甲状腺炎橋本病)”です。また、そのほかにも“亜急性甲状腺炎”や“無痛性甲状腺炎”など、甲状腺に炎症が生じる病気によって一時的に甲状腺の機能が低下することもあります。

そのほか、甲状腺への放射線治療や、慢性的なヨウ素不足なども発症の要因になるとされています。さらに、甲状腺ホルモンは脳の下垂体と呼ばれる部位から放出される“甲状腺刺激ホルモン(TSH)”のはたらきによって分泌が促されます。そのため、下垂体の機能に異常が生じて甲状腺ホルモンが正常に分泌されない場合も甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。

原因

甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能が低下することで正常に甲状腺ホルモンが分泌されなくなることによって引き起こされます。

甲状腺の機能が低下する原因は、以下の2つに大きく分類されます。

原発性

甲状腺自体に何らかの異常が生じることで機能が低下するものを指します。

もっとも多いのは、免疫反応の異常によって自分自身の甲状腺を攻撃してしまうため甲状腺に慢性的な炎症を引き起こす、“慢性甲状腺炎橋本病)”と呼ばれる病気です。慢性甲状腺炎(橋本病)の明確な発症メカニズムは不明ですが、中年以降の女性に多くみられ、ほかの自己免疫疾患を伴いやすいことが特徴とされています。

また、ウイルス感染による“亜急性甲状腺炎”、分娩後の自己免疫異常による“無痛性甲状腺炎”なども一時的な甲状腺の機能低下を引き起こします。

そのほか、慢性的なヨード不足、放射線療法、甲状腺がんの手術、甲状腺ホルモンが正常に産生されない遺伝的な病気なども甲状腺機能低下症の原因となります。

続発性

甲状腺ホルモンは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンの作用によって甲状腺が刺激されることで分泌が促されます。そのため、下垂体炎や下垂体卒中などによって脳の下垂体に異常が生じ、甲状腺刺激ホルモンの産生量が減少することも甲状腺機能低下症の原因となります。

このように甲状腺自体に異常がなくても、脳にある下垂体機能の異常によって発症するものを“続発性甲状腺機能低下症”と呼びます。

 

症状

甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を活性化するはたらきがあります。そのため、甲状腺機能低下症では全身の器官や精神的な活動性が低下し、身体的・精神的なさまざまな症状を引き起こします。身体的症状としてよくみられるのは、むくみ、寒がり、体重増加、脱毛、便秘、皮膚の乾燥、生理不順などが挙げられます。一方、精神的症状としては、抑うつ気分、もの忘れ、倦怠感(けんたいかん)、無気力感などがみられることが特徴です。また、甲状腺機能低下症は軽度な場合、ほとんど自覚症状はありません。しかし、重症化すると意識障害を引き起こす“粘液水腫性昏睡(ねんえきすいしゅせいこんすい)”と呼ばれる状態に進行したり、心不全など重篤な合併症を引き起こしたりすることもあるため注意が必要です。

検査・診断

甲状腺機能低下症が疑われるときは、次のような検査が行われます。

血液検査

甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの量を調べるために血液検査が行われます。

また、慢性甲状腺炎橋本病)による甲状腺機能低下が疑われる場合は、抗サイログロブリン抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体など、本症を発症すると産生されるようになるタンパク質の有無を調べる検査が行われることもあります。

画像検査

甲状腺の状態を調べるため、超音波やCTなどによる画像検査が行われます。

また、続発性甲状腺機能低下症が疑われる場合は、下垂体の器質的な異常の有無を調べるために頭部CT、MRI検査などを行うことがあります。

 

治療

甲状腺機能低下症の治療は、不足している甲状腺ホルモンを補充するための薬物療法が主体となります。上述したように甲状腺機能低下症は、一時的な甲状腺の炎症による一過性のものもあり、そのような場合は特別な治療をすることなく自然と機能が改善していくのを待つこともあります。一方で、慢性甲状腺炎橋本病)や放射線療法・甲状腺がんの手術など甲状腺のダメージによるもの、下垂体機能低下によるものなどでは自然な改善は見込めないため、甲状腺ホルモン薬の内服治療を継続的に行っていくことが必要です。

予防

甲状腺機能低下症のはっきりした予防方法は現在のところ確立していません。

日本では、健康な人でも1割程度は潜在的に甲状腺機能が低下した状態であることが分かっています。特に、妊娠や出産を契機に機能低下が顕著化することがあるため、気になる症状がある場合はできるだけ早めに病院を受診するようにしましょう。

解説動画

甲状腺のはたらき


甲状腺機能低下症の解説

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