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こうじょうせんがん

甲状腺がん

別名
甲状腺癌
最終更新日
2021年11月17日
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2021/11/17
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

甲状腺がんとは、喉仏の前を(おお)っている楯のような形の長さ約4cm・幅約4cmの臓器“甲状腺”に悪性の腫瘍(しゅよう)ができる病気です。

甲状腺は基礎代謝を上げるはたらきがあるほか、脳や骨の成長や脂質や糖の代謝を促す“甲状腺ホルモン” を分泌しています。少数のC細胞がカルシトニンを分泌します。

甲状腺は柔らかいので、通常は触ってもどこにあるのか分かりません。しかし、甲状腺がんになって甲状腺が大きくなる、硬くなる、あるいはしこりができた場合は、触ると分かるようになります。また初期の甲状腺がんは症状が現れないことが一般的で、検診や別の病気で診察を受けた際に偶然見つかることも少なくありません。

治療は手術が行われることが一般的ですが、甲状腺がんの種類や患者の年齢、がんの状態などによって選択される治療法は異なります。

 

種類

甲状腺がんは主に以下の5種類に分けられます。

乳頭がん

甲状腺濾胞細胞(こうじょうせんろほうさいぼう)(甲状腺の99%を占める細胞)由来のがんで、甲状腺がんの90%近くを占めます。10歳代から高齢者まで幅広い年代で発症しますが、比較的若い女性によくみられます。

進行は緩やかで、10年生存率は約98%です。予後は一般に良好ですが、55歳以上では再発を繰り返したり、肺などに転移したりして死に至ることもあるほか、まれに悪性度の高い未分化がんに転化することもあります。

濾胞がん

甲状腺濾胞細胞由来のがんです。甲状腺がんの中では2番目に多く、30歳代から高齢者にまで発症します。

進行は穏やかですが、10年生存率は乳頭がんよりもやや低い傾向にあります。予後は乳頭がんと同様に、高齢者のほうが若年者よりやや不良です。なお、乳頭がんと濾胞がんは、比較的悪性度の低い“高分化がん”に分類されます。

低分化がん

甲状腺がんの約1%を占め、高分化がんと未分化がん(後述)の間のような特徴を示すがんです。

高分化がんと比較すると進行はやや早く、周囲の組織に浸潤したり、肺や骨などのほかの臓器へ遠隔転移したりしやすい特徴もあります。低分化がんは高分化がんと共存することもあれば、低分化がんであったものが未分化がんに進行することもあります。

未分化がん

甲状腺濾胞細胞由来のがんで、非常に悪性度が高いことが特徴です。甲状腺がんの約1~2%を占め、60歳以上に多く、乳頭がんや濾胞がんと比較して明らかな男女差がないことが特徴です。

進行は極めて急速で、診断されてから1年以上生存する確率は20%以下とされています。

髄様がん

髄様がんは、血中のカルシウム濃度を低下させるホルモンである“カルシトニン”を作るC細胞由来のがんであり、甲状腺がんの約1~2%を占めます。30歳代以降の人が発症しやすく、高分化がんと比較すると進行がやや速いことが特徴です。

髄様がんには遺伝性のものとそうでないもの(散発性)があり、約30%が遺伝性です。遺伝性髄様がん患者では褐色細胞腫などの異常を伴うことがあります。また、遺伝性髄様がん患者ではRETという遺伝子に変異があり、このような患者の子どもには50%の確率でこの変異が受け継がれ、高率かつ若年齢で発症します。そのため、早期に “発症前甲状腺全摘”が行われています。

原因

現段階で特に甲状腺がんの発症のリスクが高まる要因としては、放射線の被曝(ひばく)、体重増加、遺伝子異常などが挙げられます。

放射線の被曝では、特に若年期に被曝することによって甲状腺がんが発症しやすくなることが分かっています。また体重増加に関しては、正常な体重の人と比べて体重が増加している人や肥満の人のほうが、甲状腺がんを発症しやすいとの報告があります。遺伝子異常については上に述べた髄様がんにおけるRET遺伝子変異のほか、いろいろな遺伝子の異常が甲状腺がんの発症に関連していると考えられ、研究により徐々に解明されているところです。

症状

甲状腺がんは首の周辺にしこりを感じることがありますが、それ以外には症状がみられない自覚症状の乏しいがんです。しかし、がんが周囲の臓器に浸潤(しんじゅん)(周囲に広がる)すると、その部位によってさまざまな症状がみられることもあります。たとえば、がんが反回神経(声帯の動きに関係する神経)に浸潤した場合は嗄声(させい)(声のかすれ)がみられることがあるほか、気管に浸潤した場合には血痰(けったん)や呼吸困難などの症状がみられることがあります。

また、血管に浸潤した場合は顔面のむくみ、食道に浸潤した場合には嚥下障害(えんげしょうがい)(食事の際に喉につかえる)などの症状が現れることもあります。そのほか、未分化がんではしこりが急激に大きくなるほかに、痛みや炎症反応に伴う発熱を生じることがあります。

検査・診断

診察では、まず症状や病歴、放射線被曝歴、家族歴について確認した後、甲状腺周辺を観察したうえで直接触り、甲状腺の大きさや腫瘍の有無、硬さ、リンパ節腫大の有無などについて確認します。

次に、甲状腺の大きさやしこりの状態、リンパ節への転移などを調べる超音波検査、その結果に応じてしこりが悪性であるかなどを調べる穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)を行います。 穿刺吸引細胞診は、超音波でしこりの場所を確認しながら針を刺し、しこりの細胞を吸い取って顕微鏡で調べる検査です。このとき、腫瘍の種類によっては必要に応じてサイログロブリンやカルシトニンなどの数値を調べることもあります。

そのほかの補助的検査としては、血液検査による甲状腺機能検査があります。また、髄様がんに対しては、腫瘍マーカーである血中カルシトニン、CEA値の測定や、遺伝性髄様がんの確認や否定のためにRET遺伝子の検査が行われることもあります。

さらに必要に応じてがんの広がりや転移を確認するためのCT検査やMRI検査、PET-CTなどの画像検査、バセドウ病など別の病気にかかっているか確認するために放射性ヨウ素を用いた甲状腺シンチグラフィが行われることもあります。

治療

甲状腺がんの主な治療方法として手術、放射性ヨウ素内用療法、放射線外照射療法、甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法などさまざまな薬物療法が挙げられます。

手術

乳頭がん・濾胞がん・低分化がんでは手術が標準治療であり、甲状腺の切除やリンパ節郭清(かくせい)(がんの周りにあるリンパ節を切除すること)が検討されます。甲状腺の切除範囲は病気の状態によっても異なり、甲状腺の半分を切除する“甲状腺片葉切除”、甲状腺を全て取ってしまう“甲状腺全摘”などがあります。

リンパ節郭清では、甲状腺がんの種類や検査結果を踏まえて、必要に応じたリンパ節を切除します。がんの性質と進行度に応じて術式が決定されます。

放射性ヨウ素内用療法

乳頭がんと濾胞がんで甲状腺を全摘した場合の術後補助療法として、または遠隔転移の治療として、放射性ヨウ素内用療法が検討されることがあります。

放射性ヨウ素内用療法とは、甲状腺がんがヨウ素を取り込む性質を利用した治療法です。放射性ヨウ素が含まれたカプセルを内服して甲状腺分化がんに取り込まれると、そこから放出される放射線によってがんの病巣が破壊されます。甲状腺分化がんにヨウ素を取り込む性質がどれだけあるかによって治療効果は異なります。

薬物療法

化学療法

ほかの治療では効果が期待できないと推測される未分化がんの治療の1つとして、化学療法が行われることがあります。化学療法では抗がん剤を体内に直接注入して、がんの増殖を抑えます。ただし、乳頭がん、濾胞がん、髄様がんに対しては有効な化学療法はありません。

甲状腺ホルモンによるTSH抑制療法

乳頭がんや濾胞がんの術後などでは、甲状腺ホルモンによるTSH抑制療法が行われることがあります。甲状腺刺激ホルモン(TSH)は甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの産生を促すホルモンですが、甲状腺分化がん細胞も刺激し、その増殖を早めることが知られています。そのため、TSHの分泌を抑えて再発を予防するために甲状腺ホルモン薬を服用し、がんの再発進行のリスクに応じて血清TSH値を正常範囲の下半、軽度抑制、あるいは完全抑制とする場合があります。

分子標的薬

甲状腺がんが再発・転移して手術が難しく、放射線外照射や放射性ヨウ素内用療法では効果が期待できない場合には分子標的薬の使用が検討されます。

分子標的薬とは、がん細胞の増殖に関与している物質の産生、あるいはその機能を選択的に阻害する、いわばピンポイントで攻撃する薬です。がんの種類によって用いられる薬は異なりますが、甲状腺がんに対しては現在、レンバチニブ、ソラフェニブ、およびバンデタニブが用いられます。

低リスク甲状腺微小乳頭がんに対する積極的経過観察

超音波検査などの画像検査の普及によって非常に多くの微小乳頭がんが発見されるようになりました。これは世界的な現象であり、過剰診断・過剰治療ではないかと指摘されています。

このような微小がんの大部分は転移・浸潤がなく、また増大進行しないものが大部分であることが分かってきました。そこで、低リスクの甲状腺微小がんに対しては定期的に超音波検査をして、進行がなければ経過観察を続ける積極的経過観察が治療の選択肢となってきました。日本内分泌外科学会、日本甲状腺学会、アメリカ甲状腺学会でもこのような取り扱いが承認、あるいは推奨されています。

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