概要
褐色細胞腫とは、交感神経を活性化するカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)というホルモンを産生する副腎髄質由来の腫瘍です。主に腎臓の上部にある副腎に発生しますが、副腎以外に発生することもあり、これはパラガングリオーマと呼ばれます。
褐色細胞腫が発生するとカテコールアミンが過剰に作られ、交感神経が興奮することで高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘など多彩な症状が現れます。
褐色細胞腫の患者に男女差はなく、さまざまな年齢でみられます。厚生労働省の研究班が行った2009年の全国疫学調査では、日本における褐色細胞腫の患者は約3,000人で、そのうちの11%は悪性、副腎外(パラガングリオーマ)は17%ほどでした(2009年時点)。
原因
褐色細胞腫が発生する原因はまだはっきりと分かっていません。しかし、近年では30~40%の症例で遺伝子異常を認め、原因となる遺伝子にはSDHB、SDHD、VHL、RET、NF1をはじめ15種類以上が確認されています。
症状
褐色細胞腫の典型例では、高血圧や頭痛、動悸、発汗、悪心、発汗過多、顔面蒼白、不安感、便秘、体重減少、胸痛など多彩な症状を示します。このような症状は、交感神経ホルモンであるカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の作用によるものです。カテコールアミンは副腎髄質や交感神経終末で作られ、交感神経を活性化して、血圧を高くしたり脈拍を早くしたりする作用を持っています。生理的にも血圧や脈拍を調整する重要なホルモンですが、褐色細胞腫はこのホルモンを過剰に作り出してしまうため、高血圧など多彩な症状が引き起こされるのです。
症状の程度はカテコールアミンの分泌量にある程度相関します。無症状の場合もありますが、さまざまな刺激(食事・運動・ある種の薬剤・侵襲的な検査など)によってカテコールアミンが大量に分泌されることもあります。これを褐色細胞腫クリーゼと呼び、血圧の著しい上昇をきたして臓器障害を起こし致命的になる場合もあります。
また、耐糖能異常による糖尿病や、脂質異常症を伴うことが多く、分泌過剰が著明な場合には腸閉塞や心不全、たこつぼ型心筋症、重篤な感染症などを合併することがあります。
検査・診断
褐色細胞腫はカテコールアミンを過剰に産生するため、血液検査や尿検査を行い、血中、尿中のカテコールアミンやその代謝物であるメタネフリン、ノルメタネフリンなどを測定します。また、腫瘍の位置や広がりを評価する目的で、副腎CT検査、副腎MRI検査、副腎髄質シンチグラム(MIBGシンチグラム)、FDG-PET検査などの画像検査が行われます。
褐色細胞腫の多くは良性ですが、11%が悪性であり、肝臓や骨、リンパ節などの副腎、交感神経外への転移を認めた場合に悪性褐色細胞腫と診断されます。
治療
褐色細胞腫に対する治療の原則は、α遮断薬を中心とした薬物療法によって血圧および体液量をコントロールしたうえで、手術で腫瘍を摘出することです。
褐色細胞腫では無症状で経過する例もありますが、ささいな刺激をきっかけとして褐色細胞腫クリーゼをきたすことがあるため、原則として手術を行うことがすすめられます。
薬物療法としては、術前の血圧コントロールと体液量減少の回復を目的にα遮断薬が用いられるのが一般的です。動悸が強い場合にはβ遮断薬が併用されます。症状が重篤な場合にはチロシン水酸化酵素阻害薬であるメチロシンを用いることもあります。
手術においては開腹手術と内視鏡手術の2つの方法がありますが、最近では体への負担がより少ない内視鏡手術が主流になってきます。
良性腫瘍の場合には手術によって根治が期待できます。しかし、悪性の場合にはカテコールアミンの産生能を持つ腫瘍の転移病変のため、根治は望めません。そのため、手術でできる限り腫瘍を摘出した後、抗がん剤を用いた化学療法、分子標的薬や、放射線を出すヨウ素を内服して体内から病変に放射線を照射するアイソトープ療法などが行われます。
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