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インタビュー

甲状腺がんの検査

甲状腺がんの検査
宮内 昭 先生

医療法人神甲会 隈病院 名誉院長

宮内 昭 先生

この記事の最終更新は2015年12月16日です。

甲状腺がんの発見・診断には超音波検査(甲状腺エコー)が有効であることが知られていますが、すべてがそれだけで分かるわけではありません。甲状腺疾患の専門病院として全国でもトップクラスの隈病院で院長を務める甲状腺がんの第一人者、宮内昭先生に甲状腺がんの検査についてお話をうかがいました。

甲状腺がんの検査では通常、下記の検査を行います。

  • 問診・触診
  • 血液検査
  • 超音波検査(エコー)
  • 細胞診(穿刺吸引細胞診)

血液中の甲状腺ホルモンや、がんの場合に数値が上がる腫瘍マーカーを調べます。乳頭がんや濾胞がんではサイログロブリンという物質が増加し、髄様がんでは、甲状腺ホルモンのひとつであるカルシトニンと、CEAという腫瘍マーカーが増加します。また、未分化がんでは白血球などの炎症物質が増加します。

ただし、サイログロブリンは甲状腺がん以外の理由でも上昇するため、それ自体が乳頭がんや濾胞がんの診断に直結するものではありません。

また、髄様がんでカルシトニン値が上昇することから、ヨーロッパでは甲状腺に結節のある人に対してカルシトニン値を測定し、髄様がんを見逃さないようにしています。しかし、アメリカや日本では、髄様がん自体の頻度が低いため効率的ではないとして否定的な立場をとっています。むしろ、他の消化器がんなどで検査をした結果、CEAが高いことから髄様がんが見つかるケースがあります。

甲状腺の画像診断ではもっともよく行われる検査で、プローブ(探触子)と呼ばれる器具をからだの外から当て、そこから発する超音波の反射を解析することで体内のようすを画像化します。痛みもなく負担の少ない検査ですが、短時間で甲状腺にあるしこりの形状や性質、血流のようすを調べることができます。

がんが進行して食道や気管に浸潤している(拡がっている)場合にはCTやMRIの検査を行うこともありますが、エコーの方が解像度に勝るため、通常は最初の検査としては、CTやMRIは使いません。

静脈から放射性ヨウ素を体内に入れ、甲状腺に集まったヨウ素から出ている微量の放射線をガンマカメラという特殊な装置で撮影すると、がん細胞の部分が白く抜けて写ります。しかし、がんがある程度大きくなければ写らないため、必ずしも必要な検査ではありません。

アメリカではこのシンチグラフィーに比較的こだわって検査が行われますが、日本ではTSH(脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン)が抑制されている場合のみ行います。TSHが抑制されているということは、T3, T4などの甲状腺ホルモンの値が高いということを意味します。このような場合には甲状腺の中のどこかでホルモンをたくさん作っていたり、バセドウ病甲状腺機能亢進症)と腫瘍が合併していることが考えられるので、これらを鑑別する(区別をつける)ために行います。

のどに針を刺して甲状腺にあるしこりから細胞を吸引し、顕微鏡で観察します。これを穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)といいます。多少の痛みをともないますが麻酔は必要なく、外来で検査が可能です。しこりが小さい場合は超音波で位置を確認しながら細胞を採取します(エコーガイド下穿刺吸引細胞診検査)。

がん細胞の有無を直接見て調べることができるので、がんであることの確定診断を行なう上で重要な検査です。乳頭がんであれば98%程度はこの検査で確定診断が可能です。がんの性質を詳しく調べて治療方針を決定するためには、再度細胞を採取したり、まれには腫瘍の組織を切除して病理組織診断をすることもあります。

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