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インタビュー

甲状腺がんとは

甲状腺がんとは
宮内 昭 先生

医療法人神甲会 隈病院 名誉院長

宮内 昭 先生

この記事の最終更新は2015年12月14日です。

甲状腺がんは比較的ゆっくりと進行するがんで、治療によって完治できることが多いとされています。しかし、甲状腺がんの中にはいくつかの種類があり、中にはきわめて悪性度の高いものもあるといいます。甲状腺疾患の専門病院として全国でもトップクラスの隈病院で院長を務める甲状腺がんの第一人者、宮内昭先生にお話をうかがいました。

甲状腺はのどぼとけのすぐ下にあり、右葉と左葉からなる左右対称の形をした器官です。縦4.5cm、横4cmほどの大きさで、エネルギーの代謝にかかわる甲状腺ホルモンをつくっています。

甲状腺ホルモンの分泌は、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節を受けています。血液中の甲状腺ホルモン濃度に応じてTSHの分泌量が増減し、血液中の甲状腺ホルモン濃度が一定に保たれるしくみになっています。

この甲状腺の組織の中に発生する腫瘍にはいくつかの種類があり、その中でも悪性のものを甲状腺がんといいます。

甲状腺がんの症状として、頸部(のど)のしこりやリンパ節の腫れがみられることがありますが、痛みなどの自覚症状がないため、検査や診察を受けて初めて見つかることも少なくありません。がんが進行すると、声がかすれる・ものが飲み込みにくい・息がしづらいといった症状があらわれることがあります。

甲状腺の裏側には、声帯の動きにかかわる反回(はんかい)神経が通っていて、がんが神経に浸潤(がんが拡がること)すると声帯をうまく動かすことができなくなります。これを反回神経麻痺といいます。

声を出すときには左右の声帯が近づいて左右の声帯の間隙が狭くなります。狭くなったところに息が通ることによって声帯が振動して声になります。また、物を飲み込むときには声帯が気道をふさいで気管に入り込まないようにします。反回神経麻痺によって声帯がうまく動かせなくなると、息が漏れて声がかすれ、一息で話せる長さが短くなります。また、飲み込んだものが誤って気管に入る誤嚥(ごえん)を起こしやすくなりします。左右両方の声帯が麻痺すると気道が狭まって喘鳴(ぜいめい/息がゼーゼーすること)や息苦しさをきたすようになり、ひどい場合には気管切開が必要となることもあります。

同じ甲状腺の病気でもバセドウ病橋本病慢性甲状腺炎)などのように甲状腺全体が腫れて大きくなるのではなく、しこり(結節)ができるのが甲状腺がんの特徴です。

甲状腺にできるしこりがすべてがん(悪性のもの)になるわけではありませんが、次のような特徴があれば甲状腺がんである可能性が高くなります。

  • 中に液体が入っている嚢胞(のうほう)ではなく固体の結節である
  • さわると硬い
  • 気管や喉頭(のどぼとけ)にくっついている
  • 首にリンパ節が腫れている
  • 声がかすれている

甲状腺がんは次のようにいくつかの種類に分かれます。

がん細胞の分化

乳頭がんは甲状腺がんの中でもっとも多いタイプのがんです。乳頭がんと濾胞がんはいずれも甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞からできるがんで、ゆっくりと進行します。乳頭がんは頚部(くび)のリンパ節への転移が多くみられますが、肺や骨など甲状腺から離れたところへの転移(遠隔転移)が少ないがんです。濾胞がんでは一部が骨や肺などに遠隔転移する場合があります。

乳頭がんと濾胞がんは分化がんと呼ばれますが、これに対して、未分化がんは進行が早く悪性度が高いがんです。高分化型の乳頭がんや濾胞がんが変異して未分化がんになると考えられています。また、その中間的な性質を持つものとして、低分化がんという分類もあります。

髄様がんはカルシトニンというホルモンを分泌するC細胞からできるがんで、甲状腺がん全体の約1.5%と比較的まれなタイプですが、そのうちの約3分の1は遺伝性であり、そのような場合には親の一方が髄様がんにかかっていると、その子どもが同じがんになる確率は50%です。

悪性リンパ腫慢性甲状腺炎、いわゆる橋本病から発生します。甲状腺がん全体に占める割合は約2.5%で、60〜70歳代の女性に多くみられます。数ヶ月以内など短期間に甲状腺が急に大きくなって呼吸困難をともなうケースや、1〜2年かけて少しずつ大きくなるケースなど、症状や経過はさまざまです。

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