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インタビュー

甲状腺がんの予後

甲状腺がんの予後
宮内 昭 先生

医療法人神甲会 隈病院 名誉院長

宮内 昭 先生

この記事の最終更新は2015年12月18日です。

甲状腺疾患の専門病院として全国でもトップクラスの隈病院で院長を務める宮内昭先生は、世界に先駆けて甲状腺がんの予後因子を明らかにしました。がんの進行を予測する「ダブリングタイム・腫瘍進行予測計算機」とはどんなものなのでしょうか。宮内昭先生にお話をうかがいました。

髄様がんでは血液中にカルシトニンというホルモンとCEA(Carcinoembryonic Antigen:がん胎児抗原)という物質が増えることが知られています。CEAは髄様がんだけでなく他のがんにおいても有効な腫瘍マーカーのひとつです。

私たちは甲状腺髄様癌に対する手術後に血清カルシトニン値が高値であり、どこかにがんが遺残していると考えられる患者さんの血清カルシトニン値が指数関数的に上昇することを見いだし、この変化のカーブから血清中のカルシトニンが倍加するまでの時間(ダブリングタイム)を個々の患者さんについて計算しました。カルシトニン・ダブリングタイムは、個々の患者さんによって大きく異なること、この値が髄様がんの予後―すなわち転移や再発、その後生存率を左右する要因として重要であることを明らかにし、1984年に世界で初めて報告しました。その後、20年以上の年月を経て、2009年のアメリカ甲状腺学会の髄様癌診療ガイドラインでもカルシトニンのダブリングタイム(Ct-DT)が予後因子として採用されました。

また、最近、私たちの研究チームは、乳頭がんにおいてはサイログロブリンのダブリングタイムがもっとも強力な予後因子であることを明らかにしました。サイログロブリンは甲状腺ホルモンの元になる前段階の物質で、甲状腺のさまざまな病気の指標として調べられています。

乳頭がんや濾胞がんで甲状腺を全部摘出した患者さんは、サイログロブリンの値を腫瘍マーカーとすることができます。甲状腺全摘によって低下していた血中のサイログロブリン値が高くなった場合は、頚部のリンパ節での再発や、肺や骨などへの遠隔転移が考えられるのです。

このほか、サイログロブリンのダブリングタイムを診断に利用するための条件としては、抗サイログロブリン抗体があると測定結果が不確かになるため、抗サイログロブリン抗体が陰性でなければなりません。また、TSH(脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン)が一定の条件下(0.1μIU/ml以下)で測定されたデータのみを使うことが妥当です。

隈病院では予後因子としてのダブリングタイムを診療に役立てていただけるよう、ダブリングタイム・腫瘍進行予測計算機(Doubling Time & Progression Calculator)を作成し、ホームページ(http://www.kuma-h.or.jp)で公開しています。Microsoft Excel®がインストールされているパソコンで使用できるエクセルファイルで、以下のような機能を持っています。

  1. 検査値のDT計算:血清腫瘍マーカー値の経時的変動から腫瘍マーカー・ダブリングタイム(DT)を計算する
  2. 体積のDT計算:腫瘍の大きさの経時的変化から腫瘍体積・DTを計算する
  3. 腫瘍進行の時間の予測:DTを用いて、大きさAの腫瘍が、大きさBに増殖するのに要する時間Cを計算する
  4. 未来の腫瘍進行の予測:DTを用いて、大きさDの腫瘍が、E時間後に増殖する大きさFを計算する

 

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