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甲状腺がんの転移の特徴とは? 〜転移したときの治療方針や5年生存率について解説〜

甲状腺がんの転移の特徴とは? 〜転移したときの治療方針や5年生存率について解説〜
小野田 尚佳 先生

医療法人神甲会 隈病院 外科 診療本部 本部長、治験臨床試験管理科 科長

小野田 尚佳 先生

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甲状腺がんとは、喉ぼとけの下にある“甲状腺”と呼ばれる臓器に発生するがんです。国立がん研究センターから出されている2018年のがん統計によれば、1年のうちに甲状腺がんと診断される方の数は18,636人で、男性よりも女性に多いという特徴があります。

甲状腺がんにはさまざまな組織型分類があり、その分類に応じて転移しやすい場所や予後などが異なります。このページでは、甲状腺がんで転移が起こりやすい部位や転移が生じた後の治療方法、甲状腺がん全体の予後などについてご説明します。

甲状腺がんには、乳頭がん濾胞(ろほう)がん、低分化がん、未分化がん、髄様(ずいよう)がんなどさまざまな種類があり、種類に応じて転移しやすい場所が異なることが特徴です。以下では、転移しやすい場所別に主な甲状腺がんの組織型分類についてご紹介します。

リンパ節転移しやすい甲状腺がんとして、甲状腺がんの90%程度を占めるといわれる“乳頭がん”が挙げられます。リンパ節とは、リンパ液が流れるリンパ管の途中にあり、リンパ液中にウイルスや細菌などがないか確認する関所のようなはたらきをしています。

甲状腺がんの大部分を占める乳頭がんは、進行速度が遅く、予後のよいがんです。ただしリンパ節へ転移しやすく、転移すると首の前面(甲状腺)ではなく首の側面(リンパ節)にしこりが生じることがあります。

また一般的に予後のよい乳頭がんの中にも、再発を繰り返したりしているうちに、悪性度の高いほかのがんに徐々に性質が変わったりするものがあるため、治療後も経過観察を続けることが大切です。

甲状腺から離れた別の臓器や骨などに転移することを“遠隔転移”といいます。遠隔転移しやすい甲状腺がんとしては、濾胞がんや低分化がん、悪性度が極めて高い未分化がんが挙げられます。

甲状腺がんは、全身のさまざまな臓器のうちとりわけ肺や骨に転移しやすいことが知られています。肺に転移した場合、がんが大きくなるまでは無症状であることが一般的ですが、進行すると咳や呼吸困難などの症状が現れることがあります。また骨に転移した場合、痛みが生じたり、骨折しやすくなったりすることがあります。

濾胞がんとは甲状腺がんのおよそ5%を占めるがんで、乳頭がんに次いで多いがんです。乳頭がんと濾胞がんを併せて“高分化がん”と呼びます。

濾胞がんは乳頭がんと比較するとリンパ節転移が生じにくい一方、血流に乗って遠隔転移しやすいことが特徴です。

低分化がんは甲状腺がんの1%未満というまれながんで、高分化がん(乳頭がん・濾胞がん)と悪性度の高い未分化がんの中間のような特徴があります。高分化がんと比較すると、遠隔転移しやすいです。

未分化がんは甲状腺がんの1〜2%を占めるとてもまれながんで、進行速度がとても速く悪性度が極めて高いです。甲状腺周辺の反回神経や気管、食道などに広がりやすいほか、全身のあらゆる臓器に遠隔転移を起こしやすいです。

リンパ節転移・遠隔転移の両方が生じやすい甲状腺がんとしては“髄様がん”が挙げられます。髄様がんは甲状腺がんの1〜2%程度を占めるがんで、高分化がんよりも進行が速いです。また遺伝性を示すこともあるため、治療前に遺伝子異常の検査が推奨されており、家族にも甲状腺の検査をおすすめする場合があります。

甲状腺がんでは、がんの組織型分類、大きさ、転移の状態などに応じて、手術治療・放射線治療・薬物療法が検討されます。リンパ節に転移がある場合には、手術の際に甲状腺の摘出・切除とともにリンパ節を取り除く“リンパ節郭清”が行われるほか、術後に放射線治療・薬物療法が検討されることがあります。

また肺や骨などに遠隔転移があった場合も、放射線治療や薬物療法が検討されることが一般的です。

甲状腺がんは比較的予後のよいがんで、国立がん研究センターが出しているがん統計によれば、2009~2011年の甲状腺がん全体の5年生存率は94.7%と推計されています。しかし、臨床進行度別 5年相対生存率のデータでは、遠隔転移がある場合の5年生存率は47%まで低下してしまいます。

甲状腺がんは、組織型分類に応じて転移しやすい場所や予後が異なります。そのため、治療方針を決める際には医師の説明をよく聞き、自身の病気の状態や治療方針についてよく理解するようにしましょう。分からないことや不安なことがあれば医師に相談することが大切です。

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