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インタビュー

甲状腺がんの手術

甲状腺がんの手術
宮内 昭 先生

医療法人神甲会 隈病院 名誉院長

宮内 昭 先生

この記事の最終更新は2015年12月19日です。

甲状腺がんの手術では、手術をするのかしないのか、いつ行なうかという判断が非常に重要になります。甲状腺疾患の専門病院として全国でもトップクラスの隈病院で院長を務める宮内昭先生に、甲状腺がんの手術とその合併症についてお話をうかがいました。

大きさが1cm以下の小さながんを微小がんといいますが、甲状腺がんの大多数を占める乳頭がんの場合、ほとんどの微小がんは進行することがなく、たとえ進行してもその速度がきわめて遅いことが明らかになっています。隈病院では危険性が低い微小がん(低リスク微小癌)であると診断された方には、半年〜1年に1回の経過観察でしばらく様子を見て、進行すれば手術をすることをご提案しています。ただし、以下に当てはまる場合は高リスク微小癌と考えられるので、すぐに手術をお勧めします。

  1. リンパ節や肺などへの転移があるもの
  2. 周囲の組織に浸潤があるもの
  3. 細胞診で悪性度が高いもの
  4. 経過観察中に増大進行するもの

です。安全のため、反回神経の近くにあるもの、気管にくっついているものも高リスクとしました。

濾胞(ろほう)がんの場合、ひとつひとつの細胞の形は良性の濾胞腺腫とよく似ているため、細胞診だけは判断が困難です。最終的には手術で腫瘍全体を摘出した後、病理組織検査で診断します。次のいずれかに当てはまる場合は濾胞がんと診断されます。

  1. 腫瘍組織の外側をおおうカプセル(皮膜)を腫瘍細胞が破っている
  2. 腫瘍組織内の血管の壁を腫瘍細胞が破っている
  3. 明らかな転移(リンパ節転移または骨、肺などへの遠隔転移)があるもの

また、以下のような場合には濾胞がんを疑って総合的判断で手術を勧めます。

  • 触診でしこりが硬く、表面がデコボコした不整な形状
  • 細胞診でクラス3以上
  • 超音波検査で腫瘍の内部が液体ではなく充実しており、境界の輪郭がデコボコしていてスムースではない
  • 経過観察中に腫瘍が大きくなってきている
  • 腫瘍の大きさが4cm以上
  • 血液中のサイログロブリン値が1000ng/ml以上

甲状腺がんの治療では、基本的に甲状腺の切除と頚部リンパ節の郭清(かくせい・がん根治のため転移の有無にかかわらずリンパ節すべてを取り除くこと)を行います。甲状腺の切除範囲とリンパ節郭清の範囲は病気の進行程度に応じて決められます。肺や骨などに遠隔転移が見つかった場合は、甲状腺をすべて切除した上で放射性ヨードによるアイソトープ治療を実施することがあります。

遺伝性の髄様(ずいよう)がんは甲状腺の両側にがんができるので、必ず甲状腺をすべて摘出してリンパ節の郭清を行います。また褐色細胞腫を合併している場合には、その手術を先に行ないます。ただしRET遺伝子診断などでごく早期に診断された場合、甲状腺はすべて摘出しますが、リンパ節郭清は気管周囲のみの限定された範囲でよいとされています。一方、散発性髄様がんに対しては、欧米では甲状腺全摘を推奨していますが、我が国の内分泌外科医は病気の進行度に合わせた甲状腺切除範囲で良い、甲状腺一側葉に腫瘤が留まっておれば、必ずしも甲状腺全摘は必要ないと考えています。

手術後は、甲状腺ホルモン剤の服用が必要な場合があります。甲状腺を全部摘出した場合には、甲状腺ホルモンが作れなくなるため、薬によって補うことが必要です。甲状腺全摘手術後には副甲状腺機能低下症となることがあります。このような場合にはビタミンD剤やカルシウム剤の服用が必要となることがあります。内分泌外科医はこのような事態を避けるため手術時に色々と努力しています。

未分化がんは進行が早く悪性度が高いため、がんを取り残すことなく手術を行なうだけでなく、さらに放射線や抗がん剤による化学療法が必要になります。隈病院ではパクリタキセルによる抗癌剤療法を先に施行し、その後で手術を行う試みをしており、最近国内の甲状腺未分化癌研究グループでこの手法が認識、採用されるようになりました。

手術の合併症として、嗄声(させい・声のかすれ)・副甲状腺機能低下症低カルシウム血症による指のしびれ・リンパ漏(りんぱろう・リンパ液が漏れること)・大声や高い声の出にくさ・出血などが起こる可能性があります。

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