“PET(ペット)”とは、“ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(陽電子放出断層撮影)”の略で、主にがんを見つける検査で使用されています。現在では、ほとんどがPET装置とCT装置を一体化させたPET/CT装置で検査が行われ、PET/CT検査と呼ばれます。

がん細胞は正常細胞の何倍もブドウ糖を消費します。検査では、ブドウ糖に似た微弱な放射線を出す検査薬“FDG(エフディージー)”を注射し、その集積具合が画像化されます。また同時に、CTによる形態情報(臓器の輪郭)も得られ、両者の融合画像でがんの有無と部位が可視化されます。

PET/CT検査では、体の広い範囲を一度に調べ、がんの有無と部位を同時に調べます。通常は、頭部から骨盤までが範囲となります。そしてFDGが多く集まっている部位は、画像で濃く写ります。

心臓・血管、脳、がんの検査で保険適用になっています。心臓・血管では心筋壊死(しんきんえし)の範囲、心サルコイドーシス、大型血管炎、脳では難治性てんかんの手術前検査として行われます。

PET/CT検査の代表的な用途はがんで、早期胃がんを除く悪性腫瘍(あくせいしゅよう)で広く対象になっています。具体的に行われる場面としては、治療前にがんの広がりを調べる場合(病期診断)、ほかの検査でがんが疑わしいが確定診断が難しい場合、あるいはほかの検査で転移・再発の所見がある場合などが挙げられます。がんであっても、検査の目的によっては保険適用になりません。その場合、自由診療として検査施設で自費検査を受けることができます。

検査室には、放射線管理区域であることを示す黄色い表示がみられます。FDGは静脈注射されますが、放射線の量はごくわずかです。注射後は1時間ほど安静にしますが、これは注射した薬剤が体内に広がり安定するのを待つためです。

撮影台に乗る直前には、排尿して膀胱を空っぽにします。これは尿中に排泄されたFDGで、周辺の画像にゆがみ(アーティファクト)が生じるのを防ぐためです。

撮影時間は15~20分です。体を動かすと画像にぶれが生じることがあるので、力を抜いて楽にしています。

撮影後のおよそ20分間は、安静室で待機します。体内に残存する薬剤からの放射線が低下するのを待つためです。

検査前4~6時間程度は食事を控えます。検査時に高血糖だと、画像に影響が生じるためです。糖分を含まない飲み物はまったく差支えありません。スポーツドリンクは糖分(炭水化物の表示がある)を含んでいることが多いので避けましょう。

また、当日の激しい筋肉運動は、その部位にFDGが高集積するため避けましょう。ガムを噛んでいると筋肉運動で咬筋が濃く写ったり、声をよく使うと喉頭部(こうとうぶ)の筋肉が濃く写ったりする場合もあります。

放射線検査のため、妊娠中は検査を受けられません。また、閉所恐怖症や注射で失神を起こす方は、事前に相談するとよいでしょう。胃、大腸のバリウム検査後は、腸内のバリウムで画像が不良になる場合もあるので、1週間程度は間隔を開けるのがよいでしょう。

ペースメーカー、ICD(植込み型除細動器)を装着している場合、一部の機種によっては本体にX線が照射され、設定に影響が生じる恐れがあるため事前に申告し、当日はペースメーカー手帳、ICD手帳を持参します。

糖尿病で治療中の場合は、禁食に合わせ検査直前の治療薬を休薬するのが一般的ですが、主治医と検査施設に確認しておきましょう。糖尿病のコントロールが不良で血糖値が高いと(200mg/dL以上)、検査ができない場合もあります。

授乳中は乳腺全体が濃く写るため、乳がんは検出できません。また検査直後は乳腺にFDGが残っているので、授乳は避けるのがよいでしょう。なお乳汁中にFDGは分泌されないため母乳を絞って胸から離して飲ませることは可能で、数歩離れるだけで問題ありません。注射後半日で放射能はなくなるので、乳児を胸に抱くことは問題ありません。

一人で移動ができない方は、付き添いが必要かどうかをあらかじめ確認するのがよいでしょう。

検査着に着替える場合があるので、脱ぎ着しやすい服装がよいでしょう。

検査の当日中には、画像が院内画像通信システムで読影医のもとに送られます。読影医は当日、または翌日には読影できますが、検査施設によっては読影医が非常勤だったり、2人の読影医が別々に読影(ダブルチェック)したりする場合もあり、そのような場合には検査結果(読影レポート)が出るまでに1週間程度かかることがあります。

検査をオーダーした診療科の医師は読影レポートに沿って所見の確認をし、患者さんに説明します。異常が写っている部位があれば、目で確認できます。

PET/CT検査で異常が写っていても、その結果だけでがんとは断定できません。炎症の場合や良性腫瘍でもFDGが集積して濃く写る場合があるためです。読影医は経験をもとに、可能性の高い診断をレポートに記載しています。そして診療科の医師は、そのレポートをもとに、ほかの検査で確認を進めます。PET/CT検査の結果は、治療方針の決定に役立つでしょう。

異常がなくても、その時点で検出できる病変がなかったということです。PET/CT検査で検出できるがんの大きさは1cm3程度(小指の頭くらい)が目安です。顕微鏡的なサイズのがんは検出感度以下なので、検査後も主治医の意見にしたがって経過を見るのがよいでしょう。

本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。