概要
不育症とは、流産あるいは死産の経験が2回以上ある状態です。具体的には、流産が2回、または流産1回と死産(妊娠12週以降に死亡した胎児の出産)が1回あれば不育症と診断されます。また、3回以上連続して流産に至る場合を“習慣流産”といいます。
不育症は約半数が検査をしてもはっきりとした原因が分からないとされています。しかし、母親や父親に胎児が育ちにくくなる要因があるケースでは、適切な治療を受けることで正常な出産を迎えることができる場合も少なくありません。
流産や死産自体は決して珍しいことではなく、妊娠が成立したとしても約15%は流産になるとされています。また、母親の年齢が高いほど確率も高くなることが分かっており、2回連続で流産になることも珍しくありません。不育症は5%の頻度で発生するとされており、2回連続で流産をした人や、原因不明の妊娠10週以降の子宮内胎児死亡を経験した人は、検査を受けることがすすめられています。
原因
具体的な原因には、抗リン脂質抗体症候群、カップルの染色体異常、先天性の子宮の形態異常などが挙げられます。また流産したときに胎児組織である絨毛を調べると、約80%に染色体の数の異常が見つかります。かつては、検査をしてもらえないことが多いために、不育症の半数以上が原因不明とされてきましたが、実は胎児染色体異常を繰り返している症例が多いことも分かってきました。
2021年4月から、2回目以降の流産では胎児の染色体検査が保険適用となりました。原因がはっきりする可能性があるので、検査の検討がすすめられます。
症状
不育症は、妊娠は成立するものの赤ちゃんが順調に育たずに、流産や死産に至る状態のことを指します。具体的には流産が2回、または流産1回と死産(妊娠12週以降に死亡した胎児の出産)を1回以上経験した場合が当てはまります。
流産は全妊娠の約15%の頻度で起こるとされていますが、2回連続で流産になることを“反復流産”、3回以上連続で流産を繰り返すことを“習慣流産”と呼びます。反復流産になると不育症の可能性が考えられ、詳しい検査がすすめられます。
また、妊娠10週以降に原因不明の子宮内胎児死亡を経験した人も、回数によらず不育症の可能性が否定できないとされています。
検査・診断
不育症が疑われるときは、母親と父親に何らかの原因がないか詳しい検査が必要です。
具体的には次のような検査が行われます。
血液検査
抗リン脂質抗体を調べるために数種類の血液検査が必要です。
画像検査
不育症は、子宮の先天的な形態異常によって引き起こされることがあります。そのため、経腟超音波による画像検査を行います。異常が疑われれば、子宮鏡検査やMRI検査を行うこともあります。
染色体検査
不育症は女性だけでなく、男性の染色体異常によって引き起こされることがあります。そのため、血液検査によってカップル双方の染色体検査を行って、染色体の数や状態に流産を引き起こしやすい異常がないかを調べます。
治療
数ある原因の中でも、抗リン脂質抗体症候群に対しては、妊娠中にアスピリンやヘパリンなどによる薬物療法を行います。
なお、不育症の原因の1つであるカップルの染色体異常は、治療によって改善することはできません。そのため、現在では着床前遺伝学的検査を行って、流産を避ける方法が選択されることがあります。しかし、着床前遺伝学的検査を行っても出産率がよくなることは証明されていません。
中隔子宮に対しては、子宮鏡を用いた中隔切除術が行われてきました。しかし、手術を行っても行わなくても出産率に差はないという研究成果が発表されたことから、手術は慎重に判断されています。
胎児の染色体異常を繰り返す症例に対しても、着床前遺伝学的検査が行われています。しかし、これも出産率の改善についてははっきりしていません(2023年5月時点)。
予防
不育症は原因不明のことも多く、確実な予防法はないのが現状です。喫煙が影響すると考えられるため、カップルで禁煙をすることが推奨されます。女性のカフェイン摂取も影響すると考えられるため、コーヒー、紅茶、緑茶を多く取っている人は、控えるとよいとされています。
薬剤投与をしなくても平均的年齢の方であれば、2回流産した方は80%、3回で70%、4回で60%、5回で50%の方が次回妊娠で出産可能と考えられています。累積的には85%の方が出産されているとされます。流産を繰り返す人や原因不明の死産を経験した人は、医師に相談して適切な検査を受けるとよいでしょう。
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