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女性の不妊――卵子の質低下と年齢との関係とは?

女性の不妊――卵子の質低下と年齢との関係とは?
河村 寿宏 先生

田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長

河村 寿宏 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年12月28日です。

女性の加齢と不妊には大きな関係があります。30歳代半ばを境に妊娠の確率は低下し、特に40歳以降は一気に低下することが分かっています。今回は、年齢・加齢と不妊との関係について、田園都市レディースクリニック理事長の河村寿宏先生にお話しいただきました。

近年、不妊に対する認知度が高まっているとはいえ、日本では「閉経するまでは妊娠可能」と誤解されている方が依然として多く、30代半ば以降の生涯不妊率を知らない方のほうが圧倒的に多くなっています。

その理由は、日本では加齢と妊娠の関係について、一切教育をしてこなかったからです。

少々古いデータにはなりますが、1986年に『Science』に掲載された論文によると、30歳代半ばまでに結婚された方の生涯不妊率は1割台ですが、30歳代後半で結婚した女性の生涯不妊率は3割、40歳代では6割にまでのぼります。

女性不妊の推移

また、国際調査で30歳代後半以降の女性の生涯不妊に関する質問を行ったところ、日本人女性で30歳代半ば以降に妊娠しづらくなると知っている方はわずか30%弱でした。これは、カナダやイギリスなどの他の先進国よりも圧倒的に低い数字です。

実は、卵子は出生時にすでにでき上がっており、その後、新しく作られることはありません。そして、女性は排卵ごとにその卵子を排出します。出生前をピークとし、出生後、卵子の数は減少しますが、それと並行して卵子の質も低下します。そして、卵子の質が低下すると、妊娠成立が難しくなっていきます。

卵子の老化のメカニズムの詳細はまだ完全には解明されていませんが、卵子のミトコンドリアの機能が低下し、減数分裂において染色体不分離が生じ、染色体異常が起こることが大きな原因の1つと考えられています。

下のグラフは、体外受精を行い、受精しなかった卵子染色体の異数性の頻度を調べたものです。卵子の染色体異常は、30歳代半ばから上昇を始め、特に40歳以降急上昇することが分かります。

卵子染色体異数性率
女性の年齢と卵子染色体異数性率

卵子の染色体異常と同様に、受精卵の染色体異常も加齢に伴って上昇していきます。

下のグラフは、胚盤胞(はいばんほう)の外側の部分の細胞を一部採取して、染色体の異数性頻度をみたものです。この結果から、胚の染色体異常は、30歳以上、特に30歳代半ばから上昇し、40歳を超えるとさらに急上昇するということが分かりました。

 

卵子の老化によって生じる胚の染色体異常については、現段階では治療法がありません。しかし、全ての卵子が染色体異常を起こすということではないため、高年齢の方々は、さらに加齢が進んで妊娠・分娩できる確率がいっそう低下してしまう前に、卵巣内の残り少ない正常な染色体の卵子を確保することが重要となります。

先にご説明したとおり、女性が持つ卵子の総数は出生前が最大であり、出生後徐々に減少していきます。通常毎月1つの卵子が卵巣から排卵されることは一般的にも知られています。

しかし、卵子は単純に年間12個減っていくのではありません。排卵に至らないまま死んでしまう卵子も、月に数百~千個程度存在します。男性の精子は思春期以降次々と作られていきますが、卵子は女性が生まれて以降新たに造られることはありません。胎児期、母体にいたころが卵子の数のピークということです。

卵巣内にある卵子の数には非常に個人差があります。なかには、年齢に対して平均的な卵子の数を下回る方もいらっしゃいます。卵子の数が減少する原因は、多くの場合不明です。しかし、確実に分かっている原因として、喫煙、卵巣の手術があります。

喫煙が与える影響について詳しくはこちら

 

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